見出し画像

初めての国際ヨットレース

2024アリランレースに参加してきた。
このレースは2年に一回開催される
韓国釜山〜日本福岡間の約100マイルの距離で競われるレースであるらしい。
今回はコロナの影響もあり5年ぶりの開催になった。

「国際ヨットレースに参加して来ました」
と言うと何か凄い感じがする気がする。

何が凄いと言うわけでもないけど、
もちろん僕たちの乗っている船は全員が初めての国際レースだった。

周りを見れば気合いの入った船ばかり。
マストもセールもカーボンで作ってある様な高価な装備に身を包んでいる。
クルーも全員統一したチームユニホームを着ている。

僕たちはと言うと、
まず元々のオーナー兼船長が突然の検査入院によりまさかの無念の欠場。
寄せ集めのメンバーで休みの都合もあり元々地元の草レースに出ているクルーは誰も乗っていないとうい始末。
田舎の野球部の試合に出るのに人数が足りないから助っ人で他部から集まりました。
みたいな感じである。そしてたった5人。
優勝を狙う様なチームはどこも10人くらいのクルーを乗せていた。

まあいわば記念参加の様な物で無事に福岡に到着する事が第一目標である。勿論やるからにはベストを尽くして頑張りますが。

だから国際なんちゃらと言っても別に何もすごくない。(勿論本気の人達はすごいけど)というのが本音。

レースは無風予想で実際に風がなくスタート時刻が延期された。
フライングでスタートが2回やり直しになり3回目でやっとスタートした。
スタートは圧巻で横一列にたくさんの船が並んでいる景色は人生でなかなか見ることがない。

30艇の艇が一斉にスタートする姿はまさに圧巻!

我々もなかなか良いスタートが切れた。
速い船はあっという間に水平線の彼方に消えて行き見えなくなった。

レースが始まればみんなヨットマン。
セールの角度をこまめに調整して船を走らせる。
ラットを握らせてもらうがこれがなかなか難しい。
微風のコンディションだと少しでも角度が変わると船が一気に止まってしまうのだ。
微妙な風の変化を感じながら走らせる。
海も穏やかで欲を言えば風が欲しいけどレースの雰囲気も相まって気分が良かった。

風が落ちなかなか難しいと思ったらいきなり風が吹いて船が走り出す。
そんな事を繰り返してジワジワと船を進めていた。
周りに見える船も少なくなっていきペースが同じ船だけが常に見える形になった。

綺麗な夕焼け水平線に小さくセールが見える

夕方になり夜がきた同じ状況であまり距離が稼げていない。
さらに夜が深まった頃に無線が入った。
同じクラブから出ていたもう一艇はエンジンをかけたらしい。
エンジンを使うという事はリタイアを意味する。
タイムリミッドは翌日の18時に設定されている。
入国の手続きもあるのでそこを基準に入港する必要がある。
風がないので到着できないと判断すれば仕方ない選択になる。

自分達はもっと先に進んでいたので朝まで粘って様子を見ることに決めた。

夜中から風が強くなってきた。
さらにいい風を狙える沖のコースを狙う選択もあったが対馬に寄って行くことに‥
結果的に言えばこの選択が運命の分かれ道だった。

島沿いは海流が強く風が弱くなると韓国に押し戻されるという事を繰り返し大きく時間を失ってしまった。

海流を抜けた時には朝になっていた。

朝になると強風の向かい風

朝には強風で依然向かい風。
距離は走るがなかなかゴールに近づかない。
ここの辺りから完走は難しいと思い始めた。

昼まで粘るも福岡は遠く。
残念だけどリタイアすることになった。
エンジンをかけて福岡を目指す。
博多港に近づくと風は無風に変わった。

18時半に無事に博多港に到着し無事入国が終わった。

表書式では30艇のうちゴールできたのは11艇だったという事だった。
やはり沖のコースを選択した艇がゴールした様だ。

帰りもオートパイロットの調子が悪く途中で港に入って境港に帰った。

帰り道の朝日

10日間で約550マイル約1000kmの旅になった。
去年から変わった様な相変わらず厳しかった様な。
しかし長距離は面白い。
地球の知らない姿に少し触れた様な気もする。

ただ海の上を旅する。
怖い事や、少し辛い事、綺麗な景色、風を読んだり、シビアなレースの一面を覗いた。

辛かった事はなぜか記憶に残らないもので、
そんな記憶が薄れて少し忘れた頃にまた人は旅に出るのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?