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オーロラから宇宙の環境を知る

以下は、小中学生に配布する『南極・北極から学ぶ地球の未来 基礎編 2024』(日本極地振興会)に寄稿した文章を、少し修正したものです。

みなさん「オーロラ」を知っていますか。緑や赤、ピンクなどのあざやかな光が夜空にうかぶ自然現象のことです。日本ではなかなか見ることはできませんが、南極や北極の「極地」ではオーロラがよく観測できます。一生に一度は見てみたいオーロラ。そのひみつを探っていきましょう!

オーロラは宇宙の現象

 オーロラは、地上にいながら宇宙空間を見ることができる自然現象です。いったい何が光っているの?色がちがうのはなぜだろう?…オーロラは不思議なところがたくさんありますね。オーロラは私たちが生活している地上付近の現象ではなく、地上100 kmよりも高い宇宙空間で起こっています。真空だと思われていた宇宙空間ですが、実はわずかに酸素や窒素が残っています。宇宙から刺激を受けた酸素や窒素のつぶ(原子)1つ1つが光っているのがオーロラです。

オーロラが教えてくれたこと

 真空だと思われていた宇宙空間に酸素や窒素があること、これらを刺激する 「何か」があることをオーロラは教えてくれました。ではその“何か”とは何でしょう。答えは、宇宙から降ってくる電気を持ったつぶです(電子といいます)。オーロラの光る宇宙空間には100万アンペアという大きな電流が流れていたのです。宇宙にも大きな発電所があるのですね。では、この大きな電流はどうやって作られているのでしょうか。

宇宙の発電所の仕組みとは

 オーロラを発生させる大きな電流を作り出すのに必要なものは「地球」と「太陽」です。地球は大きな磁石の性質(地磁気)があり、太陽からは、プラズマというとても熱いガス(太陽風)が流れ出していています。この太陽風と地磁気が関わることで、なんと100万アンペアもの電流を発生させることができるのです。

もっと大きなエネルギーも

 オーロラを発生させるこのエネルギーよりも、もっと大きなエネルギーを地球はいつも受け止めています。それはお日さまの光、「太陽光」です。先ほどの説明にもあった太陽風は、たえず変化をしており予測が難しいのですが、不思議なことに太陽光は安定していてほとんど変化しません。もし地球の受け止める太陽光の量が2倍になったり半分になったりと気まぐれだったら、地球は灼熱の世界と氷の世界をくり返す地獄のような星になっていたことでしょう。ふだんは安定している太陽ですが、ときには、太陽のほんの一部が爆発して光ることがあります。これを「太陽フレア」といいます。

オーロラの色と高さ

 オーロラの色は、赤・青・緑・ピンク色と様々です。最も多く見られるのは、高度100~200kmの緑色のオーロラです。オーロラの活動が激しくなると、高度200~300kmの赤色のオーロラも明るくなります(いずれも、酸素のつぶから発しています)。高度100km以下の場所では、青や紫、ピンク色のオーロラが光ります(窒素のつぶから発しています)。

オーロラ帯とは

 オーロラがよく見られる場所は「オーロラ帯」とよばれます。北半球ではアラスカ、カナダ、アイスランドが有名で、南半球では南極の昭和基地がオーロラ帯の真下に位置しています。昭和基地では、開設当初からオーロラ観測を行っています。オーロラの出現率の高いこれらの場所は、「宇宙に開かれた窓」ともよばれています。
 先ほど説明したように、オーロラを観測することで太陽活動における重要なデータを得ることができます。また満天の星空を色鮮やかに彩るオーロラはとても神秘的です。このようなオーロラを見ることができるのも、南極観測隊の醍醐味(だいごみ)の一つですね。

太陽活動と地球の関係

 地球は宇宙空間にうかぶ惑星の一つなので、宇宙の影響も受けています。宇宙環境を知ることは、地球のためにもなるのです。近年、地球の温暖化が大きな問題となっていますが、地球の気温はどうやって決まっているのかを知っていますか。地球を温めている99.7%は太陽からのエネルギーなのです。もし太陽活動に変化があれば、地球環境にも変化を受けることになるでしょう。温暖化の影響を予測するためには、二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の増加だけではなく、太陽活動の変化の影響を考えることも大切なのです。

宇宙天気予報

 最も明るいオーロラは太陽の表面の大爆発によっておこる磁気嵐(じきあらし)の時に発生します。磁気嵐は、人工衛星や、電気を作り出す(地上の)発電所に障害を発生させることがあります。そのため「宇宙天気予報」が出されます。オーロラの発生予報もこの予報の項目の一つに挙げられています。

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