仕事と鬱とワーカホリック

初めましての方は初めまして、そうでない方はお昼近くに食べるモーニングみたいな気楽さの十五夜 龍雅です。コメダ珈琲店さんのモーニング、パンがついてくるのは嬉しい限りです。

前回掲載した初めてのNoteである「記事を書く」という事を仕事にすることにつきまして色々な所から反響を頂きました!誠にありがたい限りです。

今回は前回の記事に関連する形で、具体的に自分が関わってきた勤務環境と仕事へのモチベーションや体調がどう関わるのかという事について詳しく書いていきます。

良い環境の場合その1:新聞社務めのケース

まずは「会社にて当日の深夜までもしくは徹夜勤務」「スマートフォンの使用制限はない」という環境で仕事に打ち込めた事例から挙げましょう。

私が居た新聞社ではインタビュー動画の撮影を社内で行う事が多々あり、1時間程ルームセッティングと機材の調整に時間を取ります。その後2時間程撮影に時間を割いて、編集長が動画内に字幕を入れるタイミングと字幕文を調整してデータで送り、編集担当である私が動画作成からエンコード、アップロードまで一気通貫という仕事体制でした。

その日は昼過ぎあたりから撮影をし、夕方には字幕の指定ファイルも出て2時間程編集すれば終わり…という状況だったのですが。

撮影中に録音機材が不調を起こしており、音声にかなりのノイズが入ってしまっていたのです。

とりあえず事態を報告し、ノイズを出来るだけ低減させる為に片っ端からノイズリダクションソフトを試しに試して字幕も出来る限り補完をして、夕飯も食べずになんとか確認用にエンコードした動画を用意出来たのが夜の12時近く。終電様はまだギリギリ笑顔でいらっしゃいます。そこからチェックをもらって実際にアップロード等全てが終わると夜の1時半。終電様は光の向こうへ去られました。終始ハイテンションのまま仕事を終えた私はそのままオフィスで椅子を連結させた即席ベッドの上で、スヤスヤと朝まで過ごしました。

もう一つ新聞社での話を。この日は動画の撮影が夕方からと遅く、字幕自体は量が少なかったので18時半頃にはファイルを貰って字幕の追加処理を行い、同じくロクに食事を取らないままギリギリ終電前にファイルのアップロードを終えてそのままのテンションで全力でオフィスを出て地下鉄に飛び乗りました。その頃私は東急世田谷線沿線の松陰神社前駅という駅が最寄駅であり、会社からは地下鉄東西線→半蔵門線→東急田園都市線→世田谷線というルートで帰宅していました。電車を九段下駅で乗り換えて渋谷に近づいた時にふとアナウンスが聞こえてきたのです。

「この電車は渋谷駅止まりの最終電車です。渋谷から先には参りません。」

そう、世田谷線乗換駅の三軒茶屋駅までの電車がもうない状態でした。仕方がないので渋谷駅から自宅まで徒歩2時間の長旅を経て何とか帰り着きました。それでもお仕事を無事終えたテンションの高さからか帰りにセブンイレブンで揚げ鳥を購入し、深夜だったのがダメだったのか胸焼けを起こして自宅でリバースカードしてしまったのは別の話です。

良い環境の場合その2:塾講師と家庭教師

次は「仕事に自己裁量権が大きく認められる」という環境で仕事に打ち込めた事例から挙げましょう。

私は一時期塾講師をしており、主に中学生を相手に5科目を教える個別指導塾に在籍しておりました。仕事内容は90分の生徒指導だけでなく教室の清掃から生徒の入退室管理、保護者との三者面談や生徒勧誘のための対策会議、他教室へのヘルプといった室長代理に近いポジションでした。もちろん仕事の内容は多いのですが、仕事に対してのやり方に関しては教師側へ一任されており、生徒のために学習を楽しく出来る最適なペースで指導する事を第一に、授業をこなしていける環境でした。その頃は他の先生もいましたが、いつも私と室長が最後に教室の清掃をして打ち合わせを行い、11時頃二人で教室を閉めて帰るという二人三脚的な方針でしたが私には何の苦にもなりませんでした。

また家庭教師においても同様で、生徒を教える為に先生があれこれ用意する事が認められており、あらゆる方法で学習を楽しくさせる為に寝る間も惜しんで用意をし、生徒のテストの得点が少しでも上がったりすれば褒めちぎり勉学に向かわせる姿勢を維持させました。もちろんこれも苦になる事は一切ありませんでした。

良くない環境の場合その1:町工場務めのケース

良い環境の場合その1と同じ「会社にて当日の深夜までもしくは徹夜勤務」「スマートフォンの使用制限はない」という環境で仕事に打ち込めなかった事例を挙げましょう。

私は一時期友人の手伝いで町工場に務めており、そこはシリコンを使い製品を複製する成形型を作成、そこに樹脂を注入し複製品を作る仕事が主でした。私が担当している部署は成形型を作成する部分にあたります。

その日は夕方に大型の成形品のマスター(シリコンで型を取る大本の製品)を始め、いくつかのマスターが搬入されてきました。だいたいこれら全てを成形型の土台に固定し穴を開けたりという処理をあれこれするのに4時間ほどを要し、時刻は日もとっぷり暮れた午後9時頃。ここからが作業の本番となります。

合計20kg程のシリコン缶を格納場所から40mほど手で持ちながら搬入。撹拌機にセットし決められた時間に凝固剤を投入し、シリコンがいい感じになればそれを成形型の土台へマスターを傷つけないよう流し込み、脱泡機と呼ばれる機械で真空状態になるまで減圧し、それを保温器という設備に入れてゆったりシリコンを固めるまでが必要な処置です。製品にもよりますが保温器に入れるまでにだいたい2時間程の時間は掛かります。

しかしマスターが大型となるとちょっと話はややこしくなります。小型のマスターなどに使ったシリコンは凝固が早いため、凝固時間の違う2つのシリコンを混ぜ合わせてしまうと成形型が使い物にならなくなるという問題点があるのです。そのため大型のマスターに対してはそのマスターに対応する量のシリコンを用意しなくてはなりません。そしてマスターが大型になればなるほど、各工程の所要時間は大幅に伸びていきます。

大型のマスターに対応するシリコンの量を図り、新しい缶を搬入し、撹拌機に(以下略)としてから処置を終えるまでに大体それだけで3時間以上経過しすでに時刻は深夜1時ごろを指していました。

もちろんそれまでに食事は会社の出前という事でタダではありますし、脱泡中は一時間単位で休憩が取れますし、スマートフォンも確かに使用制限はありません。しかしこういう勤務が連続で続けばどうなるかは推して知るべし。モチベーションが上がることもなく、翌日は午後1時出勤。そしてこういうスケジュールで11連勤を行った果てに私は身体を壊しました。

良くない環境の場合その2:オフィスワークとオペレーター

次は良い環境の場合その2と同様の「仕事に自己裁量権が大きく認められる」という環境で仕事に打ち込めなかった事例から挙げましょう。

私が一時期していた仕事のうちの一つに某ゴルフ場情報サイトの管理と整備の仕事がありました。専用ソフトを使って提示するプラン情報を更新したり、必要があればクライアントへ連絡を取ってやり取りをしたり、ゴルフ場の予約者のバッティングを防止する為に架電をしたりといった事が業務内容でした。

そんな中で提示するプランや顧客調整については裁量権があるものの、仕事そのものについては外部とほぼ接続されていないPCが目の前に一台あるだけという状況です。当然ほとんど何も出来ないままですので、ゴルフ場サイトに掲載されている漫画を読むのが精一杯。そう、早めに仕事を終わらせた後の拘束時間がひたすらに長いのです。それでいて業務量も変わらなければ、なにか新規事業が行える事もありませんでした。そのためモチベーションや業務に対する意識が向上する事はありませんでした。

またオペレーター業務も過去に行った経験があり、某大手ソフトウェアメーカーのチャット窓口対応として雇用されており、それ自体は特に大きな事もなく裁量に基づいて複数の顧客をこちらのペースで捌きながら円滑に業務を行えていました。業務効率化のための計画書を提出する程度の余裕もあったくらいの環境です。

しかし管理者により電話窓口対応とチャット窓口対応を兼任せざるを得ない様になってからは状況が大きく変わります。これまで割り振れていた裁量というものの意味合いが「多数の相手を並行しながら効率よく解決する」ということから「単一の相手に対し最速で解決する」という全く性質の異なるものへと転換。加えて勤務体系にも調整が入り、チャット窓口対応スタッフのみが土曜日出社を命じられる等雇用環境も大きく変わっていきました。人数が減っていく中で業務効率化の為にあれこれやれることはやっていきましたが、やはりそう上手いこと行くわけもなく過労が祟って身体を壊しました。

鬱と私を永久に蝕む病の先触れ

さてここまで合計4ケース、私がしてきた仕事環境の話を書きました。そしてここから、私がどうして仕事環境を選ばざるを得ないのかという原因を説明します。いや本当にようやくです、お待たせしました…!

私がとある交響楽団に雇用された時の話です。当初は事務担当という事で雇用をされていたのですが、男性だからという理由で何故か重量物である楽器の搬入・搬出を行うチームでの業務となりました。コレに関しては業務契約書にない内容です。また事務担当については9時出社、18時退勤という流れではあったのですが搬入・搬出チームについては17時頃で事務所に戻り退勤というのが常でした。つまり17時にこちらも帰宅可能という状況には…なりませんでした。事務担当のスタッフの雇用時間通り18時まで作業をせねばならず、大体17時以降の夕刻の時間は領収書への金額の押印を行うのが主な業務でした。その業務については当時の上司は非常に強いこだわりを持っている方でした。

その日もヘトヘトの身体で事務所へ戻り、領収書への押印作業をしていました。しかしその日は何度やっても押印した書類に対して許可が下りません。私はその時素人というレベルではありましたが、その素人目でも金額等の位置はマニュアル通り正確に押されていたものだと記憶しています。そして頸を傾げて押印し、4回目にその書類を持っていった時です。

「もういい!!」

その時の上司の声が事務所全体に響き渡ったのを今でも覚えています。

翌日事務所に出社しようと自転車を漕いでいると、事務所の100mほど前まで近づいた時に強烈な胸の痛みと鈍い頭痛、全身を倦怠感が取り巻きました。もちろんそれまでにこういった経験は無く、何度事務所に近づこうとしても同様の症状が出るばかり。

当時心療内科が事務所の近場にあり、内科医から紹介を受け私はそのクリニックの門を叩いて診察を受けました。診断結果は最近ではメジャーな症状である「自律神経失調症」でした。そしてこの症状は厄介な事に、ストレス要因となるものがあれば別の環境でも容易に発生し心身に過大な負荷を与える事が後に別の職場に就職した際に判明しました。そう、転職というのはただそれだけでは逃げ道にはならなかったのです。抜本的な所から雇用される環境を見直さない限りストレス要因によりいつかは身体を壊し仕事ができなくなるというループから逃れようが無いという地獄の幕開けでした。先程挙げたケースでも「身体を壊して」と書いていたのはこういう事です。

そんな中で長期間続いたのは新聞社での仕事であり、また転職活動と並行して行っていた家庭教師の仕事でありました。これらは自分の裁量による業務への関わりがとても大きく、また仕事を行う事に対しても環境に対しても満足感が得られる事が多大にあったからこそストレス要因によるストレス以上にプラスとなる要素が大いに上回ったからではないかと考えられます。

ワーカホリックとは病なのか

さてここまで読んでいただいた方には私がどういう人かわかったかと思われます。自宅作業とはいえバーチャルマーケット4の記事を寄稿したときもそうですが、仕事に対して飲まず食わずで作業を続けて全力を注いで成果物を仕上げ、かつその環境で誰にも負けないクオリティを目指し、納得のいく状態となるまで出来る限り妥協をせず、必要であれば多少の超過勤務は物ともしないという精神をもって仕事をしています。

これは流石に自分で書き出してもうわぁ…という感じではあるのですが完全にワーカホリックのそれですね。ヤバい人じゃないですか。でもその一方で環境要因による生産性の低下というのも実際に自分が体験してきた物事から導き出した結論です。現状一つ所で全く外部とつながる事もなく、また裁量も無いままに仕事をせざるを得ないという仕事環境は本当に私にとっては大敵と呼べるような物となってしまっています。

もちろん世の中の大半はそういう仕事で出来ており、またそういう仕事を出来る人もまた多数であり、そしてそういう仕事が出来るのが当たり前なのかもしれません。

しかし私はそういう仕事をしようと努力をし、数度も身体を壊し、結果的に社会生活を営むのが困難なレベルにまで困窮した時期がありました。そんな私からしたら「働きたい」からこそ環境を選び仕事をするのであって「働かない」から環境を選ぶのはナンセンスであると考えています。

もちろん私は現在の勤務環境に一切納得が出来ておらず、加えてストレス要因による体調悪化も頻発している中で倒れない内にベストないしベターの職場を見つけるしかない状態です。そうであっても私は自分が全力で働くことが出来て、かつ全力で働かせてくれる備えのある所にラブコールを送っていきます。それがたとえ100回断られようが200回断られようが、既にそれくらいの数は超えてきておりますので。

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