3ヶ月かけて引き継いだのに辞めるのかよ・・・
ちょうどほぼ一年前の3月末に20年務めていた会社を60歳で定年退職した。
自分の代わりになる人が、会社社長の知り合いの紹介で採用された。
その人は30代後半のシングルマザー。以前はお土産売り場で販売の仕事をしていたらしい。
自分と年代が離れているせいか、自分に対して遠慮しているのか、口数も少なく、コミュニケーションが取りにくい人だった。
『この人が俺の代わりかよ・・・』が、正直なところだった。
車で取引先や、同業業者を訪問することがあるのだが、彼女はペーパードライバーで、車を運転するのは免許を取って以来だという。
当然、地元の地理はほとんどわからない。
バックで車庫に入れられないなど、引継ぎは運転の指導からだった。
事務作業に至っては、与えられた仕事は黙々とこなしてはいた。
ある時、取引先から契約書が届き、会社の印を押して返送するのだが、その書類が入っていたクリアファイルを一緒に送り返した方がいいのかを尋ねてきた。
『そこまで指導しなければならないのか…』というイラついた気持ちが表情に出たのか、「そんなことは自分の判断でいいよ。社会人一年生じゃないんだから・・・」と、今思えばパワハラまがいの発言に、彼女は涙を流し始めた。周りに誰もいなかったから、このことは会社の誰も知らない。
『そんなことで泣くのか・・・』と愕然としてしまった。
なんとか、業務の引継ぎをして晴れて退職した。
やっと解放された!という気分だった。
もうすぐ丸一年になろうとしている、2日前、その会社の社長から電話があった。
「〇〇が3月いっぱいで辞めさせてくれ」と言ってきたという。
社長が以前から、そのうち辞めるだろうとみていたということも、自分は耳にしていた。
自分から辞めると言ってきたことにホッとしているようだった。
当然彼女の仕事ぶりには満足していなかったのだ。
社長の言いたいことは、3月末までに次の代わりが見つかるまで、半日でいいから戻ってきてくれないか?というのだ。
「え? いまさら?」一年のブランクは大きく、ポンコツ化が進んでいる。要求レベルの高い社長には着いていくのがやっとだったのに・・・
退職してから体重が5kg近く増えたのが物語っている。(体と精神は正直だ)
どんな事情があるのか分からないが、一年で辞めてしまうなんて・・・
次の人が見つかることを祈るばかりだ。
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