新自由主義が広げた分断 子育て罰に介護壊し(随時更新)

もはや、日本はある種の内戦状態ではないのか?
専業主婦vsワーキングマザーvsシングル女性。
子育て支援重視派vs高齢者。
など入り乱れての内戦状態がTwitterでは見られます。

だが、その行くつく先は、(消費税増税にもかかわらず)国民・県民・市民サービスの引き下げという暴政ではないでしょうか?

具体的な事例を上げれば、児童手当の一定所得以上人からの支給停止。いわゆる子育て罰とも言われています。これは、子育て家庭へのネット上のバッシングも追い風にしているとも言えます。

とくに筆者のようなロスジェネ世代の子どもがいない人にありがちなパターンですが、「子どもを持てるのはまだ余裕がある人たち。とくにその中で高所得者になぜ、俺たちが支援しないといけない。」ということになる。また、年配者の中には、「子育ては自己責任」という論調も根強く、その文脈から児童手当支給停止を支持するtweetも少なくありません。

もうひとつは、岸田政権が安倍政権以上に進める「介護こわし」です。これは、若手を中心に根強い、いわゆるシルバー民主主義批判も追い風としています。

20-30年間給料が上がらない暴政→人々の余裕がなくなる→「誰それはけしからん」という話になる→政治家や官僚がそれを悪用してサービスをカットする この悪循環に日本はここ最近、いや、もっとさかのぼると、この20年-25年くらいの間、陥っているのではないでしょうか?

◇専業主婦が大学院進学がなぜか炎上
例えば、専業主婦が補助金申請に合格して大学院に進学したことを報告するtweetをした
とたん、炎上するという事件を目撃しました。
「若い人に譲るべきだ」
「税金の無駄だ。」
などです。
しかし、そもそも、国(文部科学省?)が定めた制度により、書類やこれまでの学業成績などが国が定めた基準に達していると国が判断しているわけです。この女性を責めるのがそもそも、お門違いです。
また、海外では一定程度社会人で経験を積んでから、大学、そして大学院に進学する人は多い。日本でも増えてきています。
社会人で働いてみてからの方が、いろいろな問題意識に目覚めることだってあるわけです。
若い男性とみられる(注:匿名SNSにつき正体はわかりません。)批判者は、自分が基準に達していないことを棚に上げてこの女性を攻撃しておられるだけに見えました。
他方で専業主婦ではない女性(注:匿名SNSにつき正体はわかりません。)からは、この女性が余裕があると思い込んでバッシングしておられるように見えました。

そもそも、教育が無償化されていないことが問題です。この女性を叩いていた若い男性とみられる方だって、教育が無償化されてご自身も負担が軽く高等教育を受けられていれば、バッシングに参加することはなかったでしょう。あるいは、あの山上徹也被疑者だって、安倍晋三さん暗殺事件を起こすこともなかったでしょう。

また、シングルの女性で非正規労働者という方はとくに生活が苦しい。彼女らを民間企業はもちろんのこと、いや、むしろ国や自治体も含めて使い捨てにしてきたことが、彼女らを追い詰めてきたのも事実です。もちろん、専業主婦を打倒したところで、彼女らが救われるわけではないのですが、専業主婦をうらやましくおもってしまう気持ちを持つことはあり得ると思う。

ただ、専業主婦の方だって、DV夫に苦しんでいるかもしれない。そして、女性の(多い職種の)給料がもっと高ければ、DV夫なんて捨てられるかもしれないのです。

女性の多い職種の給料が不当に低い、男尊女卑が実は震源地なのですが、そこを是正するのではなく、既婚者を打倒する!という方向へエネルギーが向かってしまうのは残念です。ただ、これも、労働組合が弱い、あるいはあっても連合の芳野会長にみられるように役に立たないように見えてしまうことも問題なのでしょう。


◇男性の意識改革をすべきが女性間対立へ
他方で、ワーキングマザーに対して、シングルの女性からは
「子育て支援制度ばかり要求して、なぜ、もっと夫に家事をやらせないのか?」
というクレームも多く観測されます。
それはわからないではない。筆者も男性ですが、女性が多い職場です。
「うちの夫は縦のものも横にしない男で・・。今度高校入学の息子の制服の採寸があるんで、わたし休みます。」
筆者も少しびっくりました。いくら家事能力が皆無の男性でも、それくらいだできるだろう。それこそ、形式的に新高1の息子のそばに立ってボケッと突っ立てても大丈夫なのですから。だいたい、余計なお世話かもしれないが、将来のマザコン防止のためにも、そろそろ、母親べったりをやめさせないと、まずいのではないか?とも思う。そのためにも、それくらい、夫=父親にやらせるべきだろう、という言葉がのどまで出かかりましたが、おさえました。

ただ、これも、結局、そもそも、男性の意識改革が進んでいないことが問題です。女性同士が争わされるのはおかしな話です。経営者・管理職も、男性従業員をきちんと指導すべき話です。「お前、普段何もしていないなら、制服の採寸位つきあってやれよ」というべきだ。

◇「シルバー民主主義はけしから」若手vs「子育ては自己責任!」年配者の不毛

一方、「日本は有権者の高齢者割合が多く、シルバー民主主義だ。だから、けしからん。もっと子育て支援に予算をさいて、高齢者予算を切り捨てるべきだ。」という若手(とみられる)のご意見と「我々のころは子育ては国の支援なんぞいまよりなくてもやってきた。甘えるな。」という年配者のご意見の激突も見られます。

これも、不毛です。後者の年配者から若手への批判については、「いまは、昔と比べて地域や親族と言ったつながりも薄くなっている。前提条件が違う中で比較すべきではないでしょう。また、高度成長やバブルと重なった年配者の時代と違ってずっと給料が上がらないか下がってきた若手を同一視すべきではない。」という反論をしたい。


他方で若手の「シルバー民主主義批判」も不毛です。そもそも、若手もいつかは年を取る。加齢とは誰しも平等にやってくるのです。筆者も、若手のつもりでしたが、先日は、体力の低下に起因するちょっとした病気で苦しみました。若手の方に申し上げたいのはいま、医療や介護と言った制度をぶっ壊してしまって困るのは自分たちだ、ということです。

また、例えば、岸田政権がもくろんでいる介護保険壊しを許してしまえば、若手でも、要介護者の父母や祖父母を抱えている皆様に負担がかかってくる。昔は嫁=子どもの母親にかかっていた負担も、そうはいっても昔に比べて男女平等が進んだ今、孫に転嫁される場合も増えています。嫁に負担がかかっていた昔が良いと言っているわけではない。しかし、介護サービスが受けられなくなれば、一挙に、孫世代に介護負担が行き、ヤングケアラー(18歳未満)、若者ケアラー(18歳から30歳くらい)爆増になる。

いくら、子育て支援や教育を充実しても、ヤングケアラー、若者ケアラーとして負担が爆増すればどうなるか。学生の場合は勉強が本来大事です。30歳未満の新社会人なら仕事をおぼえておいた方がいい。あるいは、社会人として適切な遊び方をおぼえておいた方がいいかもしれません。だがその余裕がなくなってしまう人が増えれば、本人のためにも、日本の将来にとってもよくありません。

◇筆者の足元でも保育とそれ以外の公務労働者の隙間風が

筆者の足元である広島県内の自治体でも、保育とそれ以外の公務労働者、とくに非正規労働者で分断まではいかずとも隙間風が吹いています。

公立保育園に勤める人は給食調理員も含めて岸田政権の賃金3%アップの対象です。しかし、それ以外の公務労働者は非正規も含めて対象外です。ともに非正規という待遇におかれてきたとくに女性に多い公務労働者。その間でも、分断まではいかずとも隙間風が吹いています。このままだと、我々介護労働者のさらなる給料アップにも暗雲が垂れ込めます。現に岸田総理は臨時国会でさらなる介護労働者の賃上げに否定的な見解です。

非正規公務労働者の多くは、専門性の高い職種。女性が多い。女性の仕事だからと軽んじられてきた面では、介護や保育と共通します。こうした非正規公務労働者の思い切った給料アップも必要です。

◇新自由主義からの復興作業に取り掛かろう

筆者はもちろん、児童手当の支給停止にも、岸田政権の介護壊しにも反対です。介護も子育ても社会化し、教育は無償化。そして、当面は思い切った財政出動を行う。その上で、中長期には所得が多い人からは、昭和までのように、多く税金をいただく税制に戻せばいい。もちろん、気候変動などに対応してバッズ課税、グッズ減税などを組み合わせていく。その方向性であるべきと考えます。

その上で、国や自治体がまず、非正規という差別的な労働者の使い方を止める。また、介護や保育などケア労働者の待遇改善にも引き続き取り組む。それにより、全体の給料の底上げを図っていく。こうした方向ではないでしょうか?

新自由主義といういわば、この20-30年の人災で日本社会、日本経済は課題山積です。そしてその山積した課題が土石流を起こしているような状況です。ついつい眼をそむけたくなる気持ちもわからないではない。

しかし、この状況からの復旧・復興作業に取り掛からないといけない。

筆者は労働組合幹部としての活動でも、そして政治活動でもそのことに全力で取り組みたいと考えています。



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