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へその緒の行方

探していたわけではない。

何気に棚の奥に置かれていた空き缶を見つけて、これって何が入ってたんだっけ?と開けたら、それはその中にひっそりと納まっていた。

子供たちのへその緒だ。それから水天宮でいただいた安産御守も。

引き出しの奥にしまっていた記憶があるんだけど、どうしてこんなところにあるんだろう?と思いつつ、さらに中を確認してみる。

一つは桐箱に入ったへその緒。長男のものだ。
桐箱の裏には当時の看護師さんが記入してくれたのだろう、私たち夫婦の名前と、長男の名前、生地(病院名)、生年月日に身長体重等が記入されているシールが貼ってある。
そして初めて髪を切った時の髪の毛も入っている。


もう一つは小さいジップロックのような袋の中に、ガーゼでそのへその緒は包まれていた。次男のものだ。
入院時に私と次男の腕に巻き付けられていたネームバンドも入っている。
袋の表面には、マジックペンで次男の名前と「へその緒」と私の字で記入されている。

なんだ、この差は。ちょっと酷すぎないか。


長男は私の地元の大学病院で出産している。
早産で少し小さく生まれたため、1カ月半ほどNICU(新生児特定集中治療室)でお世話になった。

次男は今住んでいるところの市立病院で出産している。
前置胎盤だったので3カ月ほど入院したが、帝王切開の予定分娩だった日の前日に大出血、緊急手術で出産した。

次男を産んだ病院は、へその緒のケースはないよと、ママ友からうっすら聞いていたように思う。
今はへその緒ケースをくれないところもあるんだってと。

次男は普通に私と一緒に退院したので、まだへその緒は取れていなかった。
いただいたその透明の袋に入っていたものは、ネームバンド二つと、私のお腹の傷を留めていたクリップだった。

次男のへその緒が自宅でポロっと取れた後、なくさないようにと、その袋の中に私がしまったのだろう。

へその緒ケースを購入しようと思っていたが、長男の入園を一か月半後に控え、お道具類の名前つけもまだ、手提げバッグ等も作っていない、次男の面倒もみなくてならないなどと睡眠を削ってバタバタし、すっかり忘れてしまっていた。

そういえば、そのバタバタのおかげで母乳は1カ月ほどですっかり止まってしまったんだった。


あれから12年。忘れすぎでしょ。

自分のズボラさを棚に上げて言ってしまうが、その分お金を払ってもいいから病院側でへその緒ケースは用意してほしかった。


二番目以降というのは、とにかく手を抜きがちになる。

写真だって、長男に比べたら次男一人で映っているものは極端に少ないし、母子手帳だって次男の方は書き込みの程度が違う。
服だってお下がりを使うし、へその緒ケースだってこんな具合だ。
もともと母乳もミルクと混合だったけど、私の不摂生で1カ月くらいしか母乳はあげられなかった。


次男は長男に比べれば手のかからない子だった。

添い寝をしようとすると、おしゃべりが過ぎちゃって全然寝てくれなくて、ひとり、転がしておけば勝手に寝る子だった。

桐箱のケースと、透明なジップロック様の袋に入った二つのへその緒。

当時、ワンオペ育児で忙しかったからと言って、この仕打ちはなんだ。
せっかく手のかからない子が生まれて来てくれたのに、私のズボラさはなんだ。

すごく、次男がかわいそうになってきた。

こんな風に過ぎ去った私のズボラな育児を時々思い出し、もう戻らない日々を嘆く。


来月は次男の12回目の誕生日が来る。
せめて誕生日までにはへその緒ケースを用意しよう。

次男のために戌の日に水天宮まで行っていただいてきた安産御守は、コロナが落ち着いたら夫と一緒に返しに行こう。
ちょっと生意気な口を利くようになったけれど、元気に育ってます、って。
今頃だけど。



そして、今度はきちんと箱に納められた二つのへその緒はまたそっと、引き出しの奥にでもしまっておくとしようか。


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