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営業社員が研修を嫌う理由と、その克服方法

営業社員は研修が嫌いである。
研修への出席を促しても、 “重要なアポイントが入っている”とか“出張が入っている”とか、何かと理由をつけて出席したがらない。
人事部門のトレーニング担当にとっては、頭の痛い話である。
最終的に彼ら彼女らは、強制的に出席を命じられ、渋々参加することになる訳だが、そんなモチベーションの社員が参加したとて得られるものは知れている。
何故、営業社員は研修に参加したがらないのだろうか。そして、それを変えていくための方策はあるのだろうか。考察していこう。

営業社員が研修を嫌う、その理由は?

営業は、常に数字という目標を担って活動する職種だ。目標達成に向けて課された期間は、営業サイクルの早いところで週次、通常は月次で締める。彼ら彼女らの活動目線は、必然的に短期だ。
一方、研修は育成が目的であるため、目線は中長期である。効果はすぐに出てこない。研修内容を理解し、体得し、実践を繰り返すことによって、初めて糧となる。
研修の目線が、日々の活動の目線と遠くなればなるほど、営業にとって研修はピンとこないし、優先順位が低くなってしまう。人事担当者が、どんなに熱を入れて研修の重要性を訴えても、営業社員の心には響かない。頭では理解しても身体が反応しないのだ。

営業社員が喜ぶ研修メニューは?

研修が嫌いな営業社員でも、数は少ないが、彼ら彼女らが喜ぶ研修メニューはいくつかある。それは、日々の活動に直結する内容の研修だ。

  • 新商品、新サービスの知識と売り方

  • 成功事例の紹介

  • 見積手法を学ぶ

  • 円滑な契約手続きの進め方

上記のような研修テーマでは出席率は高い。明日から自身の活動に活かせることができ、かつ効果が見込めることが明快だからだ。しかし、出席率が高いからといって、事例の紹介ばかりやっていても、それだけでは足りないことは、皆さん周知のことであろう。
上記のような研修の目的は、主として知識の習得にある。どちらかというと学校授業の企業版のようなものだ。本来の研修が目的とする、スキル向上に直結するものではない。

最も効果的なことは、営業マネージャーに研修を課すこと

営業社員のスキル向上は、現場の実践が最高の場となる。ガチンコの競合提案で大きな受注を勝ち取る、誰も落とせなかった新規顧客を契約に持ち込む、トラブルが続き顧客の信頼を失った状態を回復させる、等々。現場でのチャレンジ要素が高ければ高い実践ほど、営業スキルは確実に上がっていく。
しかし、難易度が高いことにチャレンジするのは、一人では無理だ。そこに寄り添って親身に指導する第三者の存在が必要となってくる。営業マネージャーこそが、部下である営業社員たちを育てられる指導者足りうるのだ。
指導力のないコーチの下では選手は育たないのと同じように、営業社員の育成も営業マネージャーの指導力に依存する。営業マネージャーが現場に同行し、実践し、そして助言し、任せてみて、初めてその部下はものになってくる。
営業マネージャーは、一流の営業である必要はない。部下の個性を理解し、部下の足りない部分を補完し、伸ばせるように指導できればよいのだ。
そのためには、営業マネージャーは自身の成功体験だけで、営業スキルがあると勘違いしないようにしなければならない。営業マネージャー自身が、体系的に営業プロセスを理解し、営業スキルについて様々な見方と捉え方ができるようになっておく必要がある。俯瞰的な立ち位置で、部下の行動を客観的に捉えるとともに、その先にある顧客の立場と気持ちが分かるようになっておくことが肝要だ。
体系的に学ぶには、営業研修を生業としている企業のプログラムからいくらでも選択可能だ。単に営業社員ばかりに研修を受けさせるのではなく、営業マネージャーが研修を受け、部下への指導に持ち込むことで、効果は大きく変わってくるはずだ。

Sクラス営業職には特別カリキュラムを準備する

営業社員を能力別に分布すると、大体2割くらいの社員は高い能力を持っている。それらの社員に対し、さらに能力を伸ばすために、特別カリキュラムを準備することをお薦めする。彼ら彼女らは営業スキルにおいて、上司を超えるべき存在であるからだ。
Sクラスの営業社員のスキルをさらに伸ばすためのトレーニングは以下の4つだ。

質問力
顧客から有効な情報を聞き出す力(筆者の記事:質問力を鍛える参照)。
的確な質問を行うことができれば、顧客の真の課題を見出せるようになる

分析力
財務データや販売データ、市場データから発見や気づきを見いだす力。
分析軸の引き出しを持ち、仮説構築と検証ができると、単なる数値のグラフ化ではないインパクトのある分析結果を提示できるようになる。

ロジカルシンキング
論理的な思考に基づき説得ある提案書を書ける力。
顧客の立場になってWhy/What/Howの論理展開で提案書を書けば、顧客はそのまま社内説明資料として活用できるようになる。

プレゼンテーション力
顧客に対し分かりやすく訴求力のある説明ができる力。
どんなに良い提案書でもプレゼンが下手だと伝わらない。それを克服するための技法を会得し、顧客の心を掴む。

以上、営業社員に対する研修の取り組み方針を紹介した。
研修を売り込んでくる企業は、様々なトレーニングメニューを提示してくる。決して惑わされることなく、営業責任者と人事部門とが一緒になって、有効な研修プログラムを構築していくことを期待したい。

FIN.  December 11th, 2022


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BUSINESS COMPASS | 経営の羅針盤 (visioningpartners.com)

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