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逃げるニンジン。

その日は、朝から浮かれていた。

すごくおもしろい本を立て続けに手に入れて
わくわくする仕事のアイデアがいくつもあって
目の前にニンジンをぶらさげて生きるのは
こんなにも楽しいものかと上機嫌で。

いつものように
ぽかぽかの寝室に掃除機をかけて
洗濯物をたたんで
部屋がどんどん磨きあげられていくのに
気づいたらなんだかいらいらしているぼくがいる。
ちょっと前まで、あれだけ浮かれていたはずなのに。

ぼくは慌てている自分に気がついた。
誕生日プレゼントをもらった子どもが
早くそのおもちゃで遊びたいと
駄々をこねるみたいに。

掃除なんてとっとと切りあげて
早くあの本を読んで、あの仕事をやりたくて。
目の前でブラブラしているニンジンを
早くぱくつきたくて。

こういうときってよくある。
子どもみたいに、ひとつのことしか見えなくなって
慌てて、焦って、楽しいものも楽しくなくなる。

でもその、今すぐやりたい楽しいことって
掃除したり、洗濯物をたたんだり、家族と話したり
そういう決められた営みの上に立っている。

ニンジンもおもちゃも逃げたりしない。
それはわかってるんだけど
今日もぼくは、逃げるニンジンを追いかけている。

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竜さんの「井戸の底の日記」
https://note.mu/ryunagayama/m/m2ea6b7ce93f9
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