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かすかだけどたしかな幸福を食べて生きていく。

よく晴れた土曜日。

ぼく以外の家族は朝から出かけていったので
お昼はキッチンテーブルに一人で
昨日の残りのほっけ焼きとレンジでチンした冷凍ごはんを食べた。

秋晴れの陽光が窓から差しこむのが綺麗だったので
キッチンの灯りをつけずに、ちょっと薄暗い中
一人でもそもそと食べ、静かに白湯を飲んで
ふーっと一息ついて
「なんだか幸せだなあ」と思った。

その日の午前中は書斎でずっと書きものをしていた。

アクセスを稼ぐためのブログ記事ではなく
媒体の需要に沿ったライター記事でもなく
集客のためのPR記事でもなく
つまりお金とか関係のないところで
ぼくが書きたい文章を、書きたいように書いていた。

ぼくにとってこんなに楽しいことはなくて
こんなに幸せな時間はない。

だからよく晴れたお休みの日に
暗いキッチンに一人でお昼を食べるのだって
かすかだけどたしかな幸福感に包まれる。

以前テレビで、ある大学教授の一日に密着した番組を見た。
白髪まじりの老教授は、毎朝さんぽをして
同じ朝食を食べ
決まった時間に研究室へ行って
定時まで仕事をして
夕方に帰宅すると、奥さんと静かに食事をして
クラシックを聴きながら、ウイスキーを少しだけ飲んで
早めに床に就く。

そんな変わらない生活は、ぼくには色褪せて見えて
こんなんでしあわせなんだろうかって思ったけど
今ならわかる。
彼は毎日好きなことだけしかしていなかったんだって。

しあわせを安直に語るのは品がないけど
しあわせって、案外ぼくらが思っているよりずっと
静かで地味なものなのかもしれない。

眩しくて見映えのする幸福は胸焼けがしそうだから
焼き魚の朝食みたいに
かすかだけどたしかな幸福を食べて生きていきたい。

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