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【書評】スティーヴン・マーフィ重松『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』

「リーダーシップ」、「メンバーシップ」…会社でも学校でもよく耳にする言葉ですね。
集団で何か一つのことを成し遂げようとする場合、リーダーの存在はとても大きなものになります。優秀なリーダーがいれば、集団の中の人間関係が良くなり、生産性が上がり、目標達成に大きく近づいていきます。

実をいうと、リーダーシップは”リーダー”だけに必要な力ではありません。
今回紹介する『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』を読むと、その意味が分かると思いますし、組織で動くとはどういうことがという事が見えてくると思います。

本書の基本情報

基本情報

タイトル:『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』
著者:スティーヴン・マーフィ重松(スタンフォード大学 心理学者)
出版社:サンマーク出版
価格:本体1,600円+税
ページ数:351p
ISBN:978-4-7631-3688-6

紹介文(表紙の切り返しより)

・どうすれば、「人望」が長く得られるのか
・彼ら(メンバー)は一体、「何」を考えているのか
・私たちは、彼らにどう「接する」べきなのか
チームという「感情的な生き物」に牙をむかれず先導する、「学術的根拠」と「企業調査」で裏付けられた究極のチーム・リーディング術。
現職のリーダーも、これからリーダーになる人も、絶対に読むべき一冊――。

引用元:『スタンフォード式最高のリーダーシップ』表紙の切り返しより

おすすめポイント

心理学・脳科学による科学的根拠がある。

本書は、とにかく科学的根拠が豊富です。そのため、非常に説得力がありますし、汎用性が高く実用的な内容が盛りだくさんになっています。
「トリクルダウン理論」「現状維持バイアス」「MI理論」「学習性無力感」など…様々な専門用語が出てきますが、誰にでもわかるように丁寧に説明されているので安心して読めます。
人間関係については、「常識」「慣習」などによって問題を”見えなくさせている”ことが多々あります。この本は、心理学や様々な科学的根拠がそのバイアスを取り除き、問題の根本を明らかにすることに成功しています。

リーダーとしての”強さ”について考えさせられる。

リーダーというと、「上に立つ人」「力のある人」「強さを持っている人」というようなイメージを持たれている方も多いと思います。
しかし、これからのリーダーは少なくとも「力」を行使して集団を押さえつけたり、無理にコントロールしたりするような存在であってはなりません。
本書では

Authentic Leadership(本質的なリーダーシップ)
⇒積極的なリーダーに必要な「個人としての土台」

Servant Leadership(支援するリーダーシップ)
⇒部下を前に出す「謙虚さ」

Transformative Leadership(変容をもたらすリーダーシップ)
⇒「自分の力で変えられるもの」を変えていく勇気

Cross-Border Leadership(壁を超えるリーダーシップ)
⇒人、もの、価値観など、様々な「違い」を理解するための知恵

という4本柱でこれからのリーダーについて語られています。
これらを身に付けることで「最高のリーダー」になることができると著者は述べています。この最高のリーダーのことを”アサーティブ・リーダー”と呼んでいます。

リーダーとして、抑圧的な力を行使するのではなく、どのようにチームをよりよく動かしていくかという事が書かれています。全ての人が気持ちよくそして自分の役割にやりがいと責任をもって動けることで、チームとしての力はどんどん高まり、それに伴って生産性も上がっていくのだと思います。

リーダーとしてどのような「強さ」を持つ必要があるのか、それが分からない人には、本書は沢山のヒントが散りばめられられているのでおすすめです。

チーム内の多様性を尊重できる力が身につく。

最近よく目にする「多様性」というワード。「ダイバーシティ」を推進する会社も多く出てきています。
会社だけにとどまらず、全ての場において多様性を尊重することは大事です。でも、多様性を尊重するとはどういうことなのか…これを知るのはとても難しい問題ですね。
著者は多様性の尊重について、「細胞」を例にこのような記述をしています。

リーダーは、人間の作っている細胞にならって、自分もチームも「壁」ではなく「細胞膜」を持つ意識でいよう。壁をなくして同一化するのでもなく、何もかも取り込むのでもない。他者と自分を分ける「壁」ではなく、行き来できる「膜」を存在させるのだ。自分に必要なものや自分を成長させてくれるものは膜を通過させ、そうでなければ受け入れなければいい。
引用元:『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』p.331

「半透性」のある細胞膜を使って、多様性を尊重する方法を見事に語っていると思います。私の特にお気に入りの文章です。
最後に「そうでなければ受け入れなければいい」と書かれていますが、これは自分の価値観を一旦保留し、それでもどうしても受け入れられないものは、とりあえず受け入れなくてもいいという解釈です。そうしなければ、結局自分の価値観やバイアスで多様性をなくしていくことになるので…。

壁を全て取り払う必要はない、と著者は語っています。むしろ、壁をなくしてしまうとチームとしての力がなくなってしまうと言っています。「壁をなくす=同一化」とすれば、差異がある個々の能力を十分に生かしたり、尊重したりすることができないということになります。自分を守る最低限の膜だけは持っておこう、その上で自分の持っている様々なバイアスを取り除いていこう、という風に捉えてもらうとよいのではないかと思います。

まとめ

本書は、これまでの日本にあった「リーダー像」の問題点を指摘し、多様性を尊重したリーダーとはどういうものなのかを提案しています。
これらの能力は、たとえリーダーという位置につかなくても、身に付けておいた方がいいものだと私は思いました。
自分の弱さを認め、謙虚な姿勢で部下を前に出し、そして、多様性を認める…そういうリーダーがこれからの社会を引っ張っていってほしいなと願っています。

本当にたくさんのヒントが載っているので、ぜひ実際に手に取って読んでほしいと思います。

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