#27 最近読んだおすすめの本/泖
積読からの漁りもの
わたしは本を読むのが遅くて、なかなか次の本に進めません。それなのに新しい本を買い足してはちょっと読み、また新しく買い足してはちょっと読み…… が積み重なって、積読が20冊以上溜まっているような状態がいつも続いています。
好奇心旺盛だけど三日坊主。わたしの性格をそのまま表しているかのような読み方だな、と改めて思います。
そんな読み方をしているわたしが最近同時に読み終わった本があるので、2冊のエッセイを紹介させてください。
ちなみにこの2冊は積読だったもので、購入して何ヶ月か寝かせてから読んだ本でもあります。
最初に紹介する1冊は、岸本佐知子さん『ひみつのしつもん』です。
翻訳家でも知られる岸本さんですが、わたしは岸本さんの書くエッセイが大好きで、考えすぎて思い詰めちゃったときとか、何も考えたくないときによく読んでいます。
本当にどうでもいい内容なんです。でも、読み進めると分かるのですが、岸本さんの妄想力と文章力のセンスの良さには圧倒されっぱなしになります。
何も考えなくていい、とは、ものすごく気持ちが楽になるってことです。一つ一つのエッセイが最終的には思ってもみないところに着地しているので、ある意味、刺激的な一冊と言っても良いかもしれません。
2冊目は、サンキュータツオさん『これやこの』です。
サンキュータツオさんは、前回の「高まる曲」で紹介した『東京ポッド許可局』というラジオのパーソナリティの一人です。米粒写経というお笑いコンビのツッコミ担当、そして一橋大学・早稲田大学・成城大学で非常勤講師をつとめる学者でもあります。
『これやこの』はタツオさんの幼少期から現在までの「別れ」を綴った一冊です。タツオさんの身の回りで亡くなった人についての思い出が語られているのですが、ただ語られているわけではないのが面白いところです。
タツオさんは『渋谷らくご』というイベントのキュレーターも担当されており、ゆかりのある師匠たちの死についても書かれています。そのなかで、『これやこの』を読むうえで重要な心持ちだと思った一文があるので紹介します。
この本を読んだとき、わたしは人目も憚らず電車で泣いてしまいました。泣いたからいい作品、というわけではないのですが、自然と涙がこぼれ落ちたのです。「お前、どこぞの女優だよ!」ってくらい、たぶん綺麗に涙を流したと思います。
最近はコロナで閉店するお店も増えています。まさに、いまのわたしの気持ちは『これやこの』状態。人でなくとも、”場所” とか、わたしが 無くなってしまうものに対してできることはあるのだろうか、と悩んだときにはこの本が支えてくれます。「そうか、語り継げばいいのか」と。それなら『これやこの』の帯に書いてある ”もちろん寂しい、もちろん哀しい、でもそれだけじゃない。” の先にある向こう側が分かるかもしれない。
『これやこの』は、夜の22時くらいに白湯を飲みながら読むのがおすすめです。朝に読むと一日を菩薩の心で過ごせます。自分に合った時間帯に読んでみてください。
職場が本屋の近くにあるのって最高ですよね。休憩時間と称して本を物色しに行ったり、大好きなジャニーズが表紙の雑誌発売日を忘れていたとしてもすぐさま買いに行けたり。昨日も本を買ったのですが、いつも買ってから気づきます。
あ、また積読が増えた。
追伸。
ちなみに昨日買った本は、土井善晴さん『料理と利他』と、いとうせいこうさん『ガザ、西岸地区、アンマン「国境なき医師団」を見に行く』です。
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