#57 今一番欲しいもの／泖
【往復書簡 #57 のやりとり】
月曜日：及川恵子〈とんでもない時代を生きていてえらいけど〉
水曜日：泖〈気持ちの置き場〉
金曜日：くろさわかな
気持ちの置き場
この半年間、実は「今一番欲しいもの」を考えていました。すごくタイムリー。
わたしがなぜそんなことを考えているのかというと、30歳を迎える自分に何か贈りたいからです。ちなみに20歳のときは財布を贈りました。それは今でも大事に使っていて、早くも10年選手となりました。
少しキズは付いたけど、当時想像した以上に綺麗に使えています。牛革なので使えば使うほど革が柔らかくなって手に馴染んできているのも手放せない理由です。というか、もともと「待ってました、こういう財布が欲しかったのよ！！！」と一目惚れしたものなので、他のものに代えられるわけがないのです。
もうすぐ30歳。さらなる節目を迎える年代に「ずっと手放したくない！」「これが無くなったらきっと号泣する！」「これを持ってるだけでなんか頑張れる！」みたいなものを自分に贈りたいのです。この財布のように、いくつになっても色褪せずに使い込めるものがほしい。
ただしこの財布は学生のとき、誕生日プレゼントで母親に買ってもらったものです。2万円だったと思います。
1年間ほど「めっちゃほしい〜〜〜けどお金ない〜〜〜」と唸っていたら、あるとき母親に「20歳の誕生日、何がほしい？」と言ってもらったので、少し躊躇してからこの財布をねだりました。
20歳の頃は、本当に欲しいものを買う余裕がなかった。でも運よくゲットできた。しかし、今は社会人。30歳こそ、自分で自分の欲しいものを記念に贈りたいんです。「よくぞここまで生きてこられたな記念 〜30歳の巻〜 」として。
冒頭でわたしは「今一番欲しいものを考えている」と申しましたが、本心ではもう決まっています。だけど、手を出せずにいます。
目当てのものに手が出せないから、G-SHOCKを買おうかなと思いました。しかし、腕に何かあるのが苦手だから腕時計をしない自分に、わざわざ腕時計を買っても飾って終わるのではないかと思ったら購入を尻込んでしまいます。これを機に腕時計をつけるようにすればいいのかな。
と、気がつくとグルグル考えているのですが、「いやいや本当にこれでいいのか？」と妥協をしたくない自分が表れるんです。「あれ、ほしいんだろ？」と言うのです。
わたしが今一番欲しいものは、「MA déshabillé（エムエーデザビエ）」というブランドのお洋服です（note に書くのも緊張するわ…… 息するの苦しい……）。
※なんか、「服」とかじゃなくて、「お洋服」と言いたい。
これも学生のときだろうか。いつからだろう。
「SAHARA」というドレスがあるんですけど、このシリーズを見たときに「こんな美しいものあります？」ってくらい目を奪われまして。
↓ こういうやつ
でも、高い。でも、それだけの価値がある。でも、高い。でも、このお洋服を作るうえでクリエーターに必要な対価だとしたらむしろ安いかもしれない。でも高い。でも、これを着たら無敵になれそう。でも、高い。でも、何年経っても着れる。でも、高い。でも、これ以上のドレスに出合えるなんて考えられない。でも、高い。でも、きっと自分に似合う。でも、高い。でも、もっと自分を美しく見せてくれそうだし自然と美しい所作が身につきそう。でも、でも、でも。
こんな感じで、もう何年も悩んでいます。だからこそ、この機会に思い切って、と思っているのですが。すごく呼吸が浅くなります。まさに、清水の舞台から飛び降りる寸前。
でも、でも、でも。
「MA déshabillé」を立ち上げたデザイナーさんの価値観もすごく好きで、それも込みで尊敬できるお洋服です。
↓ インタビューはこちら
30歳。「MA déshabillé」のお洋服が欲しい。これを着ている自分がいい。
憧れの物に、わたしは自分の20代が終わることと30代が始まることへの、言葉では言い表しにくいような、ワクワクとモヤモヤが入り混じった気持ちの置き場を求めているんだと思います。
20代もだいぶ荒波だったけど、30代はもっと荒波になるのではないかと予想しています。30代以上を生きていくための武器が欲しいのかなぁ。武器は目に見える物だけじゃないけど、いったん可視化しておきたいのかも。年齢の節目に何かを自分自身に贈りたくなるこの気持ちはなんなんだろう。
いや、でも欲しい。すごく欲しい。なんとしても欲しい。
でも、高い。
でも、でも、でも。
追伸。
今日は寒すぎて家の中でパーカーでは間に合わず、ニットカーディガンを羽織りました。今週から来週にかけて衣替えの準備をしようと思います。
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