「なんか気持ち悪い」をうまく演出した良作~映画『スイート・マイホーム』~

※ネタバレあります。気を付けて。







「家を買う」って、ほとんどの人にとっては大きなイベントだと思います。
自分は賃貸の気軽さから逃れられない人間なので、おそらく家を買う経験はしないでしょうが、友人から「ローンが数十年」みたいな話を聞くと、ちょっとやそっとの覚悟ではできないことかと。

ただしそんな「ちょっとやそっとの覚悟ではできない」からこそ、自分の家、マイホームを手に入れるのは大きな喜びでもあり、そこで過ごす時間は癒しやリラックスにあふれた時間になるのでしょう。
そんなマイホームで、得体のしれない恐怖が忍び寄ってきたら……というのが、この映画『スイート・マイホーム』の大きなテーマです。

ストーリー自体はとくに目新しさはないかもしれませんが、この「得体のしれなさ」の演出が非常に良かったと感じました。
途中まで「え、何がいるの?霊なの?それとも違うものなの?」みたいに、ちょっと惑わされましたから。
「何が出るのかな?」と思わせておいて、あっと言う間にネタバレした某『”それ”がいる森』(個人的には大好きな映画)とは大違いです。

全体的な不気味さを盛り上げる演出も良かったです。
挿入される登場人物の顔のアップとか、刑事さんや殺されちゃった住宅会社のおじさん(名前忘れちゃった)の、感情を出さない感じの演技とか。
魚の解体シーンなんかは「ちょっと狙いすぎじゃ……?」と思いましたが、このわかりやすさも悪くありません。
白子ポン酢、おつまみとしておいしそうでしたし。

そしてさんざん不気味さの演出で焦らされたぶん、犯人がわかってからの怒涛の答え合わせがちょっと心地良いです。
いや、映画の内容的には心地良くはないんですけど。
バラされていたパズルのピースが、テンポ良くハマっていく感じ、と言うんでしょうか。
推理モノの解答パートを観ているよな楽しみ方ができましたね。
あとタイトルの「スイート・マイホーム」が、主人公一家だけでなく犯人にとっても同じ意味を持つ言葉だった、という点に背筋がゾクゾクと。

観ていてかなり「観客にわかりやすく、伝わりやすくなるように」作られている、と感じた映画でした。
そのぶん、先読みが得意な人だと展開が読めてしまうかもしれませんが、私のようにあんまり先とか考えず、見せられるものを流れのまま楽しむタイプには良さそうですね。

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