「変化を求めないこと」の閉塞性が強く感じられる物語~映画『アリスとテレスのまぼろし工場』~

※ネタバレがあるかもしれないです。







正直、この映画に関しては鑑賞する前には、あまり期待していませんでした。
映画の上映前に流れる予告映像を観る限り、個人的に「なんか暗い話っぽいな……」と感じてしまっていたためです。
また、それ以外に「なんか気持ち悪い」という思いもありました。
気持ち悪いというか、なんとなく「居心地が悪い」とでも言うべき違和感を持っていたんです。

そんなふうにかなりのマイナス印象を持って鑑賞したためか、映画が終了したあとには「意外と面白かった」と思えましたね。
ただ「意外と面白くはあった」のですが、やっぱり「気持ち悪い」「居心地が悪い」といった気持ちはなくなりませんでした。

この映画が舞台としている世界が、本来の自然法則からは外れている「不自然な世界」であることが、私が抱いた違和感の原因だったのかもしれません。
世界が不自然なだけではなく、その世界の中で静かに淡々と毎日を送っている人々の姿、それがあまりにも人間らしくなかったのも、気持ち悪いと感じた理由なのでしょう。

だからむしろ、映画の舞台となっている世界の向こうには「通常の世界がある」と判明したときは、なんだか安心してしまいました。
自分がこの不自然な世界に違和感を持っていたのは、自分が正常な感覚の持ち主だからなのだろう、と思えたので。

さらに「変化しないように」生きていた人々が、自分たちの住む世界の真実を知って「そんな世界のなかでも、精一杯生きていこう」と変化を受け入れだしたあとは、かなり個人的に面白くなってきた、と感じましたね。
その変化のほとんどが「恋愛」を基準としているのは、ちょっと苦笑いでしたが。
しかし中心となる登場人物たちの年代である中高生くらいのときって、世界の変化の大半は恋愛中心ですものね。
これはこれで仕方がないか、という感じでした。

そんな感じで観ていたもので、残りのストーリーについてはそれまで抱いていた「閉塞感」が払拭されていく、との意味で、楽しめました。
とは言え、かなり人によっては好き嫌いがありそう、とも感じましたし、結局「面白くはあったけど、他人にオススメするタイプではない」映画だった、というのが正直な感想でしょうか。
映画を何度も観て考察する、といったタイプの人には向いているかと。

あと映像はキレイでしたね。
「空が割れる」シーンとか「あちらの世界とこちらの世界が入り混じる」シーンとかは、かなり良かったです。

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