ちょっと駆け足な感じがあるけど概ね満足~映画『グランツーリスモ』~

※ネタバレとかをするかも。







『グランツーリスモ』と聞けば、どうしてもレースゲームを思い起こしてしまうお年頃の私。
最初は「それの映画化?」とイマイチ良くわからなかったんですが、簡単に言えばゲームの映画化、ではなくてレーサーのヤン・マーデンボローの自伝的映画、てことですね。
まあ、ヤン・マーデンボロー自体が『グランツーリスモ』のトッププレイヤーで、それがきっかけで本物のレーサーになった、てことで、一応『グランツーリスモ』のタイトルに違和感はありません。

「絶対に不可能」と言われていた、ゲームプレイヤーから本物のレーサーになったこと自体は、すごいことですよね。
「信じれば夢は叶う!」的な物語が好きなら、きっとハマるのではないでしょうか。

個人的には映画全体的に、やたらと駆け足感があって、ストーリーにも登場人物にもあまり感情移入できなかったのが、ちょっと不満ではありました。
ヤン・マーデンボローがGTアカデミーに入学してレーサーへの第一歩を進みだしたのが2011年、そしてル・マン24時間レースで3位入賞するのが2013年。
一部時系列を無視して、2013年以降のエピソードも入っていますが、そこまで駆け足で描かなければならないような期間ではないような気もするのですが……。

家族との関係性、スタッフとの関係性、恋愛、そしてヤン・マーデンボロー自身の活躍と、ちょっと要素を詰め込み過ぎたような気もしないではありません。
とは言っても「じゃあどれを削る?」となったら、なかなか難しい部分でもあるので……。
駆け足感は、仕方がなかったのかもしれませんね。

ただ、たとえばGTアカデミーで一緒だったライバルが、ル・マンでチームメイトとして参加してくるシーン。
これなんか、基本的には感動的なシーンなんでしょうが、このチームメイトに対してどうにも思い入れがないので、観ているこちらとしては「ああ、うん……」という気持ちに。
ライバル的な存在だった奴はまだしも、もう一人は完全に「誰だっけ」状態でした。
そういうノイズが混ざってしまうので、本来感動すべきシーンでも素直に感動できなかった、というのはありましたね。

と、なんだか文句っぽくなってしまいましたが。
レースのシーンは迫力もありますし、ヤン・マーデンボローの人間的な成長も描けてはいるので、けっして悪くない映画だったと思ってます。

そもそも、ヤン・マーデンボローの存在は、現在非常に盛り上がっている「eスポーツ」の世界にとっても、重要なものでしょうし。
「ゲーマー」という、一般的に「家の中に引きこもって、ゲームで遊んでばかりいる人間」のイメージを、世界的に変えた要因となっているのは、間違いないでしょう。

ただしヤン・マーデンボローの時代は、あくまでも「ゲームのトッププレイヤー」ではなく、本物のレーサーとして活躍するようになったからこそ評価された、と言えます。
それが今では、ゲーム自体のトッププレイヤーとなれば、世界的に認められるアスリートとして扱われるようになったわけです。
ヤン・マーデンボローがル・マンで表彰台に立ってから、わずか10年程度の間に、ゲームに対する認識は大きく変わったんですよね。

たかが10年、されど10年。
子どもの頃からのゲーム好きとしては、なんだかしみじみしてしまいました。

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