ホラー映画のテイストを取り入れた推理映画~映画『名探偵ポアロ べネチアの亡霊』~

※ネタバレをする。







こういう「世界的な名作」と呼ばれるような作品の映画だと、なんだかその時点で安心して観られるような精神状態となってきました。
なんだか精神的に「守り」に入っているようで、なんとなくイヤな感じもしますが、年を取ってくるとそんな感じになるのかな、とも思ったりします。

そんな個人的な感傷はさておき。
この『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』は、タイトルからもわかるように「探偵モノ」と「亡霊モノ」を掛け合わせた「ホラー推理ストーリー」となっています。

このふたつ、一見するとなんだか相性が悪いようにも思えますが、意外と「心霊的なテイストを取り入れた推理ストーリー」は多く見られるのも事実。
「人の世の理を越えた位置にいる心霊が引き起こした(と思われる)事件を、名探偵が人の世の理を根拠に解決する」という部分に、大きなカタルシスが存在するためでしょうか。
日本でも「古くからの因習」が絡む探偵ストーリーは多い(先日観た『ミステリと言う勿れ』もそうでした)ですし、これは全国共通の感覚なのかもしれませんね。

ただしそういった意味では、この『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』は「ポアロが心霊側の理論をバッサバッサと解決していく」といったカタルシスは少なめなのが、ちょっと残念でした。
どちらかと言えば、ポアロが「あちら側」の世界へと取り込まれそうになっていく様子を、延々と見せられている感じです。
そのなかで事件が起こっていくので、ポアロが後手後手に回っているように感じられてしまうわけですね。

ポアロが幽霊的なものを見たり、心霊現象的なものを感じたりしていた理由が「毒物による幻覚」というのも、ネタばらしとしてはちょっと……と感じられる部分です。
毒物自体は、事件の根幹にかかわる存在ですので、まあいいんですけど。
なんか「解決はしたけれど、なんかスッキリしない」との気持ちになってしまいました。
むしろホラー映画として観たほうが、面白かったのかもしれない……というのは、さすがに言いすぎでしょうが。

しかしいわゆる「毒親」の問題を、当時からストーリーに取り入れているのはかなりスゴイことなのではないでしょうか。
いや、原作は読んでいないので、映画オリジナルの要素なのかもしれないんですけれどもね。

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