「特別な人間」らしさを消した名探偵の物語~映画『ミステリと言う勿れ』~

※ネタバレをするかもしれません。







人気作だとは知ってはいましたが、漫画もドラマも未見です。
とは言え、いろいろと良い評判は聞きますし、映画単品でも楽しめそうな雰囲気ではありましたので、観てみました。

結果、まあ面白かったです。
事前知識が乏しくても楽しめるのは、非常に良いところですね。
一話完結型の原作モノは、こういうところがありがたいです。

ストーリー的には、まあまあ、て感じでしたかね。
推理モノ、ミステリーとして楽しもうと考えれば、若干物足りない感じはありました。
偶然に頼って解決する展開が、ちょっと多いですし、伏線も「ああ、これが伏線だろうな」と非常にわかりやすい感じです。
(早死にする人の特徴とか、弁護士さんがポロッともらすセリフとか、USBメモリの隠し場所とか)
まあ、この作品は推理モノ、ミステリーとして観てはいけない作品なのでしょう、タイトルの示すとおり。

では「どういった部分を楽しむのか」と言われれば、結局は「事件を解決していく主人公の活躍を楽しむ物語」ではあるわけで。
結局は「形を変えた名探偵モノ」なわけですね。
かつての「金田一耕助」「明智小五郎」と同じ系譜です。

ただし、かつての名探偵モノと違うところは、あくまでも主人公が「ひとりの大学生」である、という点でしょう。
最初から「特別な存在」として存在していた名探偵ではなく、どこにでもいそうな主人公が事件を解決する、そこがキモとなっているわけです。
もちろん能力的には、そしてやっていることは、かつての「名探偵」たちと同じなのですが、それをあくまでも身近な存在がやっている、という部分が、近年の人間にはウケるのではないでしょうか。

途中で、あくまでも説教っぽくなく説教するシーンとか、私なんかはそんなに好きじゃないんですけどね。
なんか「自分の常識」の押しつけに見えてしまって。
むしろ最初から説教したほうが、まだスッキリします。

とまあ、いろいろと思うところはありましたが、エンタメとして観るにはじゅうぶん楽しめる映画でした。
ギャグ要素も軽くちりばめられていて、笑える部分もありましたしね。

あと途中で「子どもをスパイにしちゃいけない」「子どもの頃にセメントに型がつくと、大人になってそのまま固まってしまって後悔する」みたいなお説教があったのですが。
それが先日観た『禁じられた遊び』と重なって、なんか笑っちゃいました。
こういう偶然が楽しめるのも、映画の面白いところだと思います。

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