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#1 二階堂ふみ「あいつとの約束」

ぼくはノートの1ページ目を開いた。

1ページ目、ぼくの世界に来てもらうのは
二階堂ふみ!お前だ!

僕は、緊張に侵されていた。
その原因は1か月前まで遡る。

「それじゃ、お前らの最後の大会になるメンバーを発表する!」

顧問の原島が大きな声で言った。
3年全員が固唾を飲みながら、自分は呼ばれるのだろうかと不安に陥った。

「1番、ピッチャー田上!
2番、サード岡田!3番、セカンド山口!
4番、ファースト安形!5番!……」

結局、万年補欠の僕は呼ばれなかった。


ベンチで1人落ち込んでいた。

そこに、マネージャーの二階堂がやってきた。

「原島もさ、ちゃんと竜秋のこと見ててくれたらよかったのにね」

「うるさい…」

「ごめん…でも私、竜秋が毎日頑張ってるの知ってるし!隣で見てたから!」

「…………」

「ごめん、こんなマネージャー最低だよね」

僕は、抱きしめた。
二階堂の事を、二階堂も3年生。
僕達と同じ今度の試合がマネージャーとしての最後の仕事。

「どした?竜秋」

「まだ離れんで…」

二階堂はすこしだけ涙をこぼした。

「朔のホームラン打つ姿見たかったな」

「ごめん、二階堂…」

「仕方ないよ!いつか見せてね!ホームラン打つところ!」

「え…?」

「約束!」

二階堂は屈託のない笑顔で僕にそう言った。

結局、僕は毎日、最後の試合の日。
そう引退当日まで、部活を頑張り続けた。

そして、1ヶ月後。今だ。
最後の試合の日。

2-0、8回裏ツーアウト2塁の場面。
うちの高校は最後の大会も負けようとしていた。
その時、原島が僕に向かって

「岩山、行けるか?」と言った。

思わず動揺したけど、僕は二階堂との約束を
思い出した。

こっちを見つめる二階堂。
僕の返事は決まっていた。

「はい!やってみます!」

二階堂の言う通り、僕の個人練習は
原島の目にも映っていたみたいだ。

最後の試合初めて回ってきた
チャンスの場面。決めなきゃダメだ。
そこに二階堂がやってきた。

「竜秋!竜秋ならやれるよ!」

「二階堂!約束守るよ!」

僕がそう言うと、二階堂は一瞬口元を手で覆った。
そして、僕に向かって拳を突き上げた。
僕も、それに返した。

僕は、ホームランを打ちたい理由がもうひとつあった。
それは、ホームランを打って二階堂に告白することだった。

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