音よ届け#21

そんな簡単に
思い通りには
行かなかった。

プロと素人。
その壁は思ってたよりも大きくて、
何度も、もっかいアタマからいこうか?

私には音楽の才能が
ないんだと自責していた。

「そんな不安げな顔すんなよ。大丈夫。なんでも積み重ねが大切で、才能なんて1%くらいだよ?俺たちだって。」

「ルイさん、Cメロに
はいった時の聴かせる感じとかすごいですよ。ドラミング忘れそうになるほどです。誇張抜きの話です。想いは必ず届きます。」

2人にそんな風に声を
かけられて
そこから楽しむことを
意識して歌った。
音楽はきっと
そういうもので、
そうしていくうちに
バラードなんかの時の
声にも感情をのせられるようになってきた。
届くような気がしてきた。

話し合いの末
作詞はシンラさんと
共同して、作曲は
2人に任せていた。

1日に五曲ほど
作っていたと思う。
ストックが増えすぎて
たまにどれがどれだっけ?
ってなることも
しばしばあった。

ソウマくんは
こんな日々を過ごして
いたんだ。
ここで練習して、
レコーディングして、
目を閉じて
歌うと、ソウマくんの
薫りがする。
そんな気がする。

ベースもそれなりに
弾けるようになってきていた。

まずMoon Raver
の曲で足並みをそろえていった。
ソウマくんのベースラインは
歌っているんじゃないかというほど
動きがあって、
ひとつひとつの音に
熱があるのがわかった。

歌いながら
時折、泣きそうに
なってしまって、
合わせるのを
少し間をおいてもらったりすることもあった。

歌えば歌うほどに
奏でれば奏でるほどに
好きが溢れてくる。

ソウマくんは
ずるいな。
思い出ばっかり
私に置いていって。
シンラさんたち
みたいになれないよ。
2人とも
かっこよすぎるよ。
絶対帰ってくるって
音から伝わってくるよ。

音楽を憎んだ日も
あったけど

今なら言える
こんなに素敵なものはない。

届くかな
じゃなくて
届くといいな
じゃなくて

届けるんだ。

私達が届ける絶対に。

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