フォレストポリス#011


それを私が見つけたのは巡視の一環というか、癖にちかいもので
インターネット上のサイバーテロなどを防ぐための行為でもあった。

日本は東京から2.3テラビット秒毎にひとつまたひとつと世界各国に
インポートされそこから各地に送付されているデータがあった。

それを開くには12ケタのパスが必要らしく、届くと程なくして
あちこちで開かれるところをみるとウィルスやマルウェアの可能性は
低い。
だが一概にそうとも言えない。
パスもオトリでそこから自動開封システムがあって
なんてこともあり得る。
こっちの方が可能性が高いのではないか。
とは言え、ここで摘発するには証拠不十分だ。
少し泳がせておくことにした。

その行為は毎月15日に行われていた。
そしてデータへアクセスしてみた。
もちろん万が一を考えて、そのためのパソコンで
そのための仮設サーバも用意した。
ひらくと

I hope ur HAPPY...
itumo onaji sorano sita.

そのメッセージが表示された後に
データが開く。

テキストが無尽蔵に並んでる時もあれば

多少のテキストに対し、メロディが付いているもの。

ただ、それだけだった。
犯罪性の可能性は圧倒的に低い。

だがまだ可能性が完全に消えた訳じゃない。

一度他のサーバを経由させてフェイクさせてる
つもりかもしれないが、大元はいつも同じ場所から。

こんなの仕事にしてない人間でも解るレベルよ。

ipアドレスから身元を割った。


森 想真   


唖然とした。
偶然見つけた点がまさか、私が探していた人??
こんなことある?
まさかのまさかだよね。
と言い聞かせる。

これは仕事なんだと、
すぐに作成した作りの粗い
自作のアプリを彼の携帯にそれとなく仕込む。

通話とチャットが可能なもので
他に機能も付けたが至ってシンプルでそこの
住民と会話していくことで街が発展していくような作りで
私と彼、以外のユーザーはAIである。

彼が気づくのを待つことにした。


それから
毎月15日を過ぎると
あちこちで新しいヒットソング、書籍が生まれていることに
気付いた。

私も、音楽も本も嗜む程度ではある。

15日、ただのテキストに見えたアレ。
ただの音だと思ったアレ。

ただの偶然なのかな。

でもどのそれにも
彼の名のクレジットはない。

彼は何をしようとしているんだろう。

データが開く前のあの言葉を完全に信じるなら
悪意はない。

これだけのヒットを業界特有の波はあれど
毎月飛ばしている。

彼のデータが実際にひと目に触れるようになった物に
どこかに彼の素養はないのか。




経緯を話した。
私が動かせるスタッフ、それ面白そうだなと
乗ってくれるチームがいくつか動いてくれた。

ただこの作業は大人数になればなるほど意見が割れ
難航をきわめた。


書籍に関しては
月並みなセリフが多かった。
君たちも人間なんだねと初めて思った瞬間でもあったけれど。

音楽に関して
聴いてると癒されますねー。
仕事中なのに眠りだすスタッフ。
ここ本人の意図をちゃんと汲んで歌ってるんですかね?
なんか特殊なビートに対してのギターだなあ。
君たちも。。。Rpt

ここからは私の意見だけど

書籍に関して
考えさせられつつ、恋愛要素が絡んでくる。
多くの人の胸を打つパターンで多くの本が構成されているように感じた。
無論、そんなの全くない本もあった。


音楽に関して
想っていることが伝わってきた。
誰かを、何かを、自分を、それを愛そうとしている。
傷に寄り添うような音楽だった。
でも今にも消えそうな風前の灯のような。

初めから解っている?
彼はこれらがそれなりの大金になってしまうことが
解っていて、手放している?
版権の無償提供だとして
合意の上ならなんら問題はなく、事件性はない。

いるの?
そんなこの世界に、形容は幼稚すぎるが
まるで、神様みたいな人が。

私はただ一人の人間として
彼に接してみたくなった。



私も紆余曲折あったが、彼にもあったはず、
ただ繋がりはただひとつ
フォレストポリスというアプリのみだった。




意を決して
メッセージを送る。
返ってくる望みは薄い。


普通の人間が相手なら、だけど。



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