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【stand.fm音声配信“上海生活のリアル”】GDP成長を支える外需の今

みなさん、こんにちは。いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今まで中国経済、ビジネスのトピックを発信してきましたが、主に内需に関するお話がメインでした。今回は、貿易に関して、つまり輸出入について、記事をまとめたいと思います。

9月上旬に中国税関総署が21年1−8月の貿易統計の速報値を発表いたしました。この数字に沿って、ご説明をさせていただきたいと思います。記事の情報は主に共同通信社系のNNAの記事を使用させていただいております。ご了承ください。


1. 貿易がGDP成長率に占める割合は?

2019年上期の実質GDP成長率が6.3%で、そのうち1.3%が外需の成長でした。このことから、2019年はざっくりGDP成長を20%を外需がもたらしたと考えてよいのではと思います。

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2. 2021年1−8月の実績は?

21年1−8月の実績;
前年同期比+34.2% 3兆8277万米ドル(約420兆2500億円)
直近で続いている外需の回復の傾向が押し上げ要因と見られています。

8月単月の実績;
前年同月比+29.3% 5302億9970万米ドル
プラスは14ヶ月連続で前月比(21年7月)+4.2%となりました。
輸出:前年同月比+25.6% 2943億1550万米ドル
輸入:前年同月比+33.1% 2359億8420万米ドル
貿易収支は583億3130万米ドルで、前年同月比+2.2%となりました。

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3. 輸出の主力産業と昨年対比

主力製品の輸出につきまして、昨年1−8月との対比は以下の通りです。

機電製品:+34.4%
1兆2322億3500万米ドルを占め、21年1−8月の輸出入合計3兆8277億9040万米ドルの約33%となり、中国貿易の主力といえます。
機電製品とは機械装置、電気設備、電子製品、電器製品、計器器具などを指します。

液晶パネル:+50.5%
2020年大型液晶パネルの世界シェア1位は中国の京東方科技集団(BOE)で22.9%を占めました。この他、世界シェア5位に中国の華星光電(CSOT)8.8%となっており、上位2社で世界シェアの30%を占めています。
また、中小型液晶パネルの世界シェア1、2位はそれぞれBOE19.5%と天馬微電子15.9%で、こちらも中国企業の上位2社のみで世界シェアの35%以上となっています。

自動車:+230%
主に政府がサポートしている中古車輸出の伸びが要因と考えられます。また、世界最大市場の電気自動車(EV)の輸出も一要因であると想定されます。一方で、中国の自動車産業は中国生産、中国市場向けが基本となっているので、そもそもの輸出の母数が小さく、前年比が大きく触れたと考えられます。

集積回路(IC):+32.4%
2020年DRAM、フラッシュメモリー、マイコンの世界シェアTOP5に中国企業はランクインしておらず、低付加価値のICチップの輸出と想定されます。

4. 輸入の主力産業と昨年対比

主力製品の輸入につきまして、昨年1−8月との対比は以下の通りです。金額ベースで見ると肥料以外は全項目でプラスとなっています。

ハイテク製品:+27.6%

機電製品:+27.5%

自動車:+50.1%
トヨタ自動車生産の高級車レクサスをはじめ、中国現地生産をしていない車両もあります。よって全体需要の伸びによって、自動車の輸入も伸びたと考えてよいでしょう。

化粧品・スキンケア:31.2%
アリババ系ECのTaobaoなどでも多くの輸入品が売れているので、容易に想像ができますね。特に肌に触れる化粧品、ベビー用品などは安全性が高く輸入品が好まれる傾向にあります。

資源、原材料については量ベースで以下の通り減る傾向でしたが、価格高騰により結果的に金額ベースでは前年比増となっています。

鉄鉱石:量ベース1.7%減 7億4645万トン、金額ベース82.6%増
原油:量ベース5.7%減 3億4635万トン、金額ベース33.5%増
石炭:量ベース10.3%減 1億9768万トン、金額ベース1トンあたり+13.4% 約560元 

天然ガスは量も金額ベースも増加しました。
量ベース 22.2%増 7930万6000トン、金額ベース 30.1%増

5. 貿易相手国は?

ASEAN諸国が最大の貿易相手国群、次のEU諸国となります。それぞれ輸出入の14%ずつを占めています。第3位としてアメリカ、日本は4位です。

中国から見るとアメリカとの貿易総額の75%以上が輸出となっており、この中には中国自国で調達できず、さらにシェアのTOPをアメリカが占めているAI用のハイエンドICチップも含まれています。

中国は14億人の内需に対して、自給自足をできるまでにはなっておらず、先ほどご紹介したようにハイテク産業、機電製品など、まだ輸入に頼る産業もあると考えてよいと思います。

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中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」沿線国との人民元建てでの貿易額決済は+24.6%の7兆2900億元となりました。内訳は下記の通りです。

輸出:+23.5% 4兆1200億元
輸入:+26.0% 3兆1700億元



参考情報;

THE DAILY NNA KYODO GROUP 2021年9月8日版PDFファイルより
1〜8月の貿易額34%増に

中国で不人気だった中古車、32兆円規模の市場創出なるか-輸出にも力
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-08/QMJEMQT0AFB401


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