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Re:Thank Virus for Symbiosis

散歩してたら爺さんに声を掛けられた。

「熊が出るから気をつけろよ」

85歳になる爺さんは水仙を8年前から裏庭の丘に植え始め、一反くらいの花畑をつくった。美しい花畑の横に座って話が進む。

「ここにある木はどんぐりで、奥にある枝が折れた木は栗。去年熊が登って折れた」

爺さんはマタギで、いままで40頭ほど捕まえたそうだ。彼はどんぐりや栗の木を大切にしている。熊の食料である木々が花畑の周りを囲っている。花に見とれていたら、熊にやられるかもしれない。でも、彼から熊を恐れている感情は読み取れなかった。


Life is a loose collective of uneasy alliances. Life is ambiguous.

-Timothy Morton:Thank Virus for Symbiosis

”生きること”は決してゼロリスクの中で伸び伸び過ごすことだけではその輝きを得られない。だからといって、熊に会いにいくようなサバイバルだけが生きることでもない。2つの間で揺れ動く、曖昧でバランスが取れないからこそ、生きることは美しい。

近くの自然公園には熊対策で電気柵が設けられている。熊に食われたいとは一切思わない。でも、熊に合わないためにきのこ取りに行けず、ただじっとしては”生きること”の輝きを失うだろう。

熊と共に生きるために、熊と戦う術を身につける、熊が里にこないように食料となる木々を奥に植えにいく、よい環境を整えるなど、小手先の電気柵ではない手段、その考えを支える思想が必要だ。その考え方を、この地に暮らしてきた人々は持っているはずだ。今のウイルスは、この地における熊と同じ存在かもしれない。

美しく生きたい。熊と山と暮らしてきた人々の智慧を、爺さんと水仙の花畑を眺めながら考えている。

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It’s the same with art. Art is not PR for meaningless blobs. Beauty is the reason why things can exist. Beauty is the ring of truth. Beauty is truthfeel. Beauty is also a tiny little bit of death. If the beautiful thing got turned up to 11, your internal organs would melt and you would die. Or you could eat the beautiful thing, and it would die. Beauty is an uneasy symbiosis. Beauty is the possibility of death—beauty is fragile. Beauty is fragility.
Beauty is a virus.

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