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まちづくりとは”乾杯の数”

 まちづくりの評価指標は宅飲みやBBQなど”小さな集まりの質”。これは私の持論。週末や花金に友人や知人と集まってする小さな飲み会。旅先でも小さな集まりに参加することは一番の楽しみで、ちょくちょくその楽しさに圧倒される。

 小さな集まりで地域の力を総合的に測れる。生産者とのつながり、釣りや狩猟の野性力、環境・倫理を踏まえた加工品、器や空間など食を操る空間力、おいしさを探求する調理力、食を心から楽しむ没頭力など。

 先週は、世界を飛び回りながら仕事をしている起業家のお宅に、地域のみんなが集まって春先取りのBBQ。空間はみんなでDIYしてできた古い家の1室。狭すぎず、広すぎず、10名ちょっとくらいが心地よく、みんなの顔も声もよくわかるくらいの居間。

 午後から味噌作りをしながら、卵とベーコンの燻製がはじまる。薪ストーブでシチューを温めつつ、味付けした肉の塊、たまねぎなどをストーブに突っ込んで丸焼きにする。料理はFoodは風土からでシェフをしていた、パシャパ舎のまるちゃん。コロナのこともあり、東京でのイベントが中止になり、秋田に身を寄せている。私たちにとって彼がいてくれることはとっても幸運だ。

 日が沈んで暗くなると、仲間が集まってくる。20代の写真家は鹿角の自然栽培農家のすみこさんからお米を、木工職人は本業でもあるこだわりの日本酒を、お嫁さんは料理家で(佐藤になるけど)砂糖を使わないスイーツを、私は節約の智慧で生まれた鶏胸肉のハムを持ちよった。

 途中で映像作家がふらっと来て痛風だから飲めないといいながらご飯だけつまんで帰ったり、家族がご飯を作る間、暇つぶしに飲みにきた変わり者もいた。東京にいるみんなの友人とFacetimeしてみたりと、それぞれのタイミングで集まっていた。

 小さな集まりは即興的。季節の食材をとらえ、旅から戻った人がいれば思い出と旅先の食材をもちよる。知人が新たな商品や食材を作ったなら取り寄せる。美味しそうで気になったものがあれば、買ってもっていく。今しかできないことを詰め込む。

 即興的ゆえ、町にいない場合や、仕事があって動けないときは、声がかかっても行けなくて悔しい。計画してた訳ではなく仕方がない。それでいいと思ってる。

 レストランで美味しい料理を食べるのも大好きだ。高級レストランと小さな集まりの対比、消費と生産、等価交換と贈与、貨幣経済と信頼経済をとおして、この小さな集まりはその両端を和えて昇華させるところまできている。

 若くして亡くなられた天の戸の森谷杜氏が、仲間の結婚式で、「乾杯の数だけ幸せになれる」とおっしゃっていた。秋田という土地が育んだ森谷さんの声が胸に響く。「まちづくりとは乾杯の数だ」と教えてくれた農家の友人が、イタリア語で乾杯は「Cincin! (ちんちん)」だから、「まちづくりはちんちんの数」だと言ってました。

 

 

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