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【データ分析系書籍紹介】デジタル競争戦略

本日は、「デジタル競争戦略」という書籍を紹介します。

スイスのビジネススクールIMD教授であるモハン・スプラニアムが執筆した書籍を、NTTデータが翻訳しています。
418ページと厚めの書籍で、理論を裏付ける事例が多く示されています。

「訳者まえがき」と、巻末に掲載されているNTTデータ経営研究所の山口社長と著者の特別対談を読むことで、要諦がつかめる構成になっています。

特に面白いと思ったり、学びになった部分に絞ってまとめます。

データこそが新たな顧客価値を創出するための源泉となる

これまでデータは製品を生産・販売するために活用されてきたが、今後は製品がデータを取得するための導管の役割へと変化します

そして、この変化により、これからの競争環境は激変していきます。

従来のデータの役割は、製品を効率的に生産・販売するために使われていました。

最近では、センサー、IoT技術の発展によりリアルタイムでインタラクティブデータを取得・活用が容易になったことで、業界を超えての価値創出が可能となります
例えば、冷蔵庫のセンサーを活用してレシピの提案をする、歯ブラシのセンサー情報から健康状態を監視し、介護に役立てる、車のセンサー情報からガソリンスタンドやカフェを案内する、ルンバがシロアリを吸い込んだことを検知して害虫駆除サービスに連携する、などがそれにあたります。

この変化により顧客価値の創出が業界の枠にとらわれなくなり、競争環境も大きく変わります
例えばアリババやテンセントが第三者決裁から金融業界に参入し、銀行業で成功を収めています。なぜ成功しているかといえば、その源泉はデータです。
従来型銀行は、融資の申し込みがあって初めてニーズを知ることができますが、アリババ・テンセントは行動情報からニーズを事前に汲み取ることができ、スピードやニーズの把握で圧倒的優位となっています。

データの価値や使い方が変わる

これまでは、製品を生産・販売するためにデータを活用してきたため、蓄積したデータそのものが自社の競争優位の源泉であり、門外不出として扱うべき資産という意味合いが強くありました。
もちろん現在もその重要性は変わらない面はありますが、常時センサーやアクセスログなどから得られる「インタラクティブデータ」の持つ価値はやや異なります。
インタラクティブデータの主な価値は、プロセスの把握とリアルタイム性です。

プロセスの把握:通常、購買記録は、購買に至った時点で初めて情報が得られます。対してインタラクティブデータは、購入に至らないケースであっても、商品を手に取ったけどやめた、視認すらしなかった、などのプロセス情報が含まれます。そのため、データ活用することで、より効果的な対策を立案できます。

リアルタイム性:即時にアクションにつなげられる、という価値ももちろん大きいですが、面白いのは、その時点でなければ価値がない、という面があることです。例えば、人気アーティストのゲリラライブがあり人混みができた、という情報は、その瞬間に最も価値があり、時間経過により価値は大きく損なわれます。
これは、所有する資産としての価値が低く、データの公開により競争性が低下しない(むしろ競争優位となる)ことを意味します。
インタラクティブデータは公開することで価値が高まるため、APIの活用は今後のデータ活用の肝となっていきます


なかなか重厚で読み応えのある本ですが、「訳者まえがき」と、巻末に掲載されている対談を読むだけでも価値が高いと思いました。

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