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3分でわかるアトラスⅤ

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アトラスVは、アメリカのロケットメーカー、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ロッキード・マーティンとボーイングの合弁会社:ULA)が製造するロケットです。

アメリカの宇宙港ケープカナベラル空軍基地とヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられ、2002年8月の初打上げ以降は1回を除いて全ての打上げに成功しています。

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アトラスⅤには400シリーズと500シリーズがあり、100の位がフェアリング(搭載物を載せる先端部分)の直径(4mか5.4m)、 10の位が第1段の固体燃料ロケットの数、1の位は第2段のエンジン数(1基か2基)表しています。

全長は60.6m、ケロシンと液体酸素を推進剤とするエンジンと最大で5基の固体燃料エンジンによる第1段、液体水素と液体酸素を推進剤とするエンジンによる第2段、シリーズによって形が違うフェアリングから構成されます。

低軌道(LEO)までは18850kg、衛星を静止軌道に載せるまで軌道(GTO)までは15179kgを輸送することができ、価格は約109億〜179億円です。

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再打上げ・払戻しサービス

ULAはロッキード・マーティンとボーイングの共同出資で作られた会社ということもあり、アトラスⅤの打上げ契約は少し複雑な関係になっています。

政府の打上げの場合にはULAの子会社ユナイテッド・ローンチ・サービスが、商業打上げの場合はロッキード・マーティン・コマーシャル・ローンチ・サービス(LMCLS)が契約の当事者になります(ロッキード・マーティンはULAとLMCLS両方の親会社)。

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参考:AtlasV Launch Services User’s Guide March2010

軍事目的だけでなく商業打上げでも活用されるアトラスⅤですが、2014年3月、ロッキード・マーティンは、アトラスⅤの打上げに失敗した場合に再打上げか費用を補償するというサービスを発表しています(政府顧客は除く)。

価格が下がるというわけではないものの、打上げに関する保険を付す必要がなくなるとされ(衛星のハード面についてはなお必要)、アトラスⅤの信頼性だからこそできるサービスといえます。

惑星探査での活躍

アトラスⅤは、従来から惑星探査ミッションで多大な貢献をしてきました。代表的な例を時系列でみていきましょう。

太陽系外探査

2006年1月、探査衛星ニューホライズンズの打上げに活用されました。
ニューホライズンズは、2007年2月に木星をスイングバイ(重力を使って加速)し、2015年には冥王星の観測に成功しています。
その後2019年1月2日、太陽系の外縁で人類が直接観測できた最も遠い天体ウルティマ・トゥーレ(現名称:アロコス)の観測に成功しました。

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ウルティマ・トゥーレ(現名称:アロコス)
出典:NASA Website

月探査
2009年6月、月探査衛星ルナ・リコネサンス・オービター (Lunar Reconnaissance Orbiter:LRO) とエルクロス(LCROSS)の打上げに活用されています。

エルクロスは、月面に衝突させて発生した物体を観測するための衛星で、また、LROはアポロ11の着陸地点の撮影を行いました。

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アポロ11の着陸地点
出典:NASA Website

木星探査
2011年8月には、木星探査衛星ジュノーの打上げに活用されました。
ジュノーは、木星の磁場の変化、近時では衛星の影が映った木星の姿を観測しています。

火星探査
アトラスⅤは、火星探査の常連といっても過言ではありません。

※スピリット、オポチュニティについてはULAの別ロケット「デルタⅡ」が使用されています。

まず、2011年11月、火星探査宇宙船マーズ・サイエンス・ラボラトリー(Mars Science Laboratory:MSL) の打上げに活用されました。
MSLには、火星の土と岩石を採取して解析する探査機キュリオシティが搭載されています。

また、2018年11月には火星地下探査機インサイトの打上げに活用されています。

そして、2020年は火星への軌道が開ける年です。
7月17日、ケープカナベラル空軍基地から新たな探査機Mars 2020の打上げが予定されています。

※Mars 2020については名前公募中(執筆時点)

突き動かすのは人類の探究心
これらの惑星探査のほか、2010年2月、太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(Solar Dynamics Observatory:SDO)が打ち上げられ、2020年2月9日にはNASAとESAが共同開発した太陽観測衛星が打ち上げられています。

このように、アトラスⅤは、惑星探査機の打上げを通じて、人類の未知への探究心に貢献し続けてきたのです。

新時代を切り開く有人宇宙船スターライナー

2019年12月20日にはボーイングが開発中の有人宇宙船スターライナーの試験飛行が行われ、11月には実際に宇宙飛行士が搭乗しての有人飛行試験が行われる予定です。

12月の無人飛行試験では軌道投入に失敗しており、その他発覚したトラブルやコスト面など、今後の開発への影響が懸念されているところですが、スペースXの宇宙船クルー・ドラゴンと共に新時代の幕開けが期待されます。 

マンガ「New Era in Space」

冒頭のマンガを作成いただいたのは、昭和が生んだ天才美少女漫画家あんじゅ先生が運営するオンラインサロン「あんマンサロン」に所属するぽっくすさんです。いつもありがとうございます!

宇宙法、ロケット美少女化という無茶振りミッションにも対応できてしまう「あんマンサロン」はこちら↓

アトラスⅤは、古くから商業衛星や軍事衛星の打上げのみならず、火星をはじめとする惑星探査に多大な貢献をしてきました。
数々のミッション成功は、人類の探究心と好奇心に支えられていたのでしょう。冒頭のマンガでは、クールに見えて実は好奇心旺盛な様子を描いていただきました。

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フェアリングのポニーテールが可愛らしいですね

火星への航路が開く2020年は、火星探査、民間企業による有人飛行と続き、まさに新たな時代が幕を開ける年です。

そしてULAは、新型ロケットのヴァルカンロケットの開発を進めています。
アトラスⅤが切り開いた路は、そのあくなき好奇心と探究心が紡いでいくのです。

参考:
・AtlasV Launch Services User’s Guide March2010
https://www.ulalaunch.com/docs/default-source/rockets/atlasvusersguide2010.pdf
・The Annual Compendium of Commercial Space Transportation: 2018 Federal Aviation Administration
・宇宙プロジェクトがまるごとわかる本 エイ出版社

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