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3分でわかるカナダのリモセン法

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カナダのスタートアップSkyWatch Space Applicationsが750万ドルを調達したというニュースです。
同社は、衛星画像の配信プラットフォームと、リモートセンシング(リモセン)衛星の地上システム向けソフトを開発している会社です。 

日本で衛星リモセン画像を扱おうとする場合、リモセン法の適用を受けるかどうかが問題となりますが、カナダの場合はどうでしょうか?

カナダのリモセン法のポイント

カナダは、アメリカ、ドイツ、フランス、ロシア、そして日本と並びリモセン法を持つ国の一つです。
カナダのリモセン法は、リモセン衛星「レーダーサット2」から得られるデータの取扱いについて規制するために制定されたという経緯があります。

カナダの宇宙活動法のポイントは、以下の3つです。

①適用範囲が広いが政府は適用を免除できる
②大臣による許可制度
③生データは第三者へ提供できない
④政府によるアクセス権
【参考】
「生データ」:リモセン衛星から取得し、まだ製品になっていないデータ
※つまり、まだ0と1で構成されたままのデータのことです。
※生データから生産された画像・データを「リモートセンシング製品」と呼びます。

適用範囲の広さ

リモートセンシング宇宙システムを運用するには外務大臣の許可が必要です。許可を受けない限り、何人も、直接・間接を問わず、いかなる態様の運営も禁止されます。

「リモートセンシング宇宙システム」とは、以下のものをいいます。

①単数・複数のリモートセンシング衛星、ミッション管制センター、衛星の運用に用いられるその他の施設
②衛星自体が運用を停止した後も含め、衛星からの生データの受信、保存、処理、配布に用いられる施設

日本のリモセン法の場合、センサーが持つ分解能に着目し、一定以上の分解能を持つ場合にはリモセン法の適用を受けることになりますが、カナダの場合は分解能やセンサーの種類ではなく、幅広く「システム」として適用対象を規定しています。

また、人に着目した場合、本法は以下の者についてはカナダ国外での活動であっても適用されます。

①カナダ国民
②永住者
③カナダ法人
④リモートセンシングシステムに関し、カナダと実質的な関連を有する何らかの部門を構成する人

対象とするシステムも人も適用対象が広いことがわかります。

他方、担当大臣は、一定条件のもとで本法の規制から免除する命令を出すことができます。これは、元々の適用対象が広いため、国際的な管轄を越えた規制がなされないように配慮したとされています。

ライセンス取得の要件

リモセン法の適用を受ける場合、リモートセンシング宇宙システムを運用するには外務大臣の許可が必要となります。日本のリモセン法の場合にはリモセン装置を使用するために内閣総理大臣の許可が必要となります。

許可を得るためには様々な要件を満たさなければなりませんが、運用上の安全が確保されていることが重要です。
また、ミッション期間中は積極的に衛星をコントロールしたいという政府による要請もあり、スペースデブリの発生を低減させることや、大気圏へ再突入する際の安全性も確保されていることが求められます。

生データの第三者への提供禁止

衛星から取得する情報には、軍事に関する情報など機微なものが含まれている可能性があることから、これらの情報が敵対国などに渡らないようにしなければなりません。
カナダのリモセン法では、ライセンス取得者は、ライセンスを持っていない者に生データを提供できないとされています。

しかし、担当大臣は、付与したライセンスについて、一定の条件のもと、生データをライセンス取得者以外の者に提供する権限を与えることができます。

【生データ】
原則:提供禁止
例外:担当大臣の命令がある場合に提供可能

他方、製品データの提供は禁止されていませんが、担当大臣は、一定条件のもと、付与したライセンスについて、リモートセンシング製品をライセンス取得者以外の者に提供することを禁止することができます。

【製品データ】
原則:提供可能
例外:担当大臣の命令がある場合に提供禁止

このように、カナダのリモセン法では分解能やセンサーの種類ではなく、生データか製品データかに着目した規制がなされていることが特徴的です。

日本のリモセン法の場合、リモセン記録保有者は、リモセン記録取扱い認定を受けた者にしか高分解能のリモセン記録を提供できないとされますが、分解能が低いデータの場合にはリモセン法の適用はなく、第三者への提供が可能となります。

カナダ政府による優先アクセスが可能

カナダ政府は国際関係や国防のため、優先的にデータにアクセスする権利を持ちます。
具体的には、担当大臣、国防大臣、公安大臣は、一定条件のもと、ライセンス取得者に対してライセンス対象システムを通じたあらゆるサービスを提供することを求める命令を発することができます。

参考:
・Handbook of Space Law Frans von der Dunk, Fabio Tronchetti
・Small Satellites and Their Regulation Ram S. Jakhu, Joseph N. Pelton
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦



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