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「美味しい」は味覚だけでなく感性に訴えかけるもの。飲食店経営者が考える「美味しい料理」とは?

株式会社イデアルを経営しています、和田 亮(わだ りょう)です。

このnoteでは今までに私の生い立ちから飲食店経営や自社の株式会社イデアルまで、様々なことに触れてきました。

ふとnote記事を振り返ってみて、飲食店経営者のnoteにしては直接料理に関係する記事が少ないと感じました。

以前書いた「本物の美味しさは「レシピ」の先にある。飲食店経営の核である「料理」への3つの想い」の記事もスタッフへ向けたもの。「こういった味を目指してほしい」という想いで書いたものでした。

今回は飲食店経営者らしく「料理の美味しさ」について書きます

経営者目線での「美味しい料理とは?」について書いていこうと思っています。



味覚は環境に左右される?私が考える4つの「美味しさ」

なぜ「経営者目線での美味しい料理とは?」について書こうと思ったのか。それにはきっかけがありました。

先日、ある有名飲食店へ行きました。たまたま友人が見つけてくれたお店ですが、周りのお客様からは「よく入れたね!ここは予約が取れなくて有名なんだよ!」と。

調べてみると、あるグルメサイトではその地域で一番評価が高いお店

お客様は口々に「う~ん、美味しい!」「やっぱり、ここの料理じゃないとダメだな!」とお店を大絶賛しています。

私は「そんなに美味しいんだ、座れてよかった!」と思って料理を待ちつつ、店内を見渡しました。

すると、お店の中がとにかく汚い。店内が狭くて全てが丸見えだったのですが、特に厨房が汚いのです。

開店と同時くらいに入ったのですが、前日のものらしい洗い物が流しに山積み。挙句の果てには、ゴキちゃんがまな板の上を堂々と歩いていました。

今まで入ったお店の中では、一番汚かったかもしれません。

料理の味がいくら旨くても、どうしても他のお客様のように「美味しい!」とは素直に言えず、早々にお店を出てしまいました

私は世界各地の屋台をいろいろ巡ったことがあり、衛生環境に関しては許容範囲が広いと自負しています。個人差はあるかもしれませんが、最低限の衛生さはほしいな、と思ってしまいました。

「グルメサイトの評価が高い」「予約が困難なお店」などの情報はもちろん必要です。しかし、基本的な衛生環境は飲食の味に直結すると改めて感じた出来事でした。

そんなことがあり、私は改めて「美味しさとはなんだろう?」と考え始めたのです。

今までも美味しさを追求したことはあります。独立する前には、世間の美味しいと自分の美味しい感覚のギャップがあるかを確認するため、高級店には行けませんでしたが様々な高級食材を買って食べてみました

キャビアを箱買いしてスプーンで丸々食べてみたり、神戸牛や村上牛なども分厚いステーキにして食べてみたりしました。

また独立してからは仕事として(笑)、世間で言われている様々な「美味しい食材や料理」を食べてきました

まず大前提として、混同されやすいですが「美味しさ」と「うま味」は意味合いが違いますうま味とは「塩味」「甘味」「酸味」「苦味」とともに「基本味」と呼ばれる味の1つです。

※5つの基本味

一方美味しさとは、味そのものだけでなく、料理の見た目や香り、食感やその時の雰囲気や環境など感性を通して感じるものだと考えています。

これを踏まえた上で、私が考える美味しさには下記の4種類があります。

①本能的な美味しさ…生理的な美味しさ。例えば運動した後にしょっぱいものが美味く感じるものがこれに当たります
②おふくろの味…家庭料理など食べ慣れた味を美味しいと感じるもの
③感性に訴えかける美味しさ…希少性や高級・手間ひまかけて、など情報が与える美味しさ
④ 病みつきの美味しさ…砂糖 や油といった脳の神経に直接快感を与えるものに感じるもの。ポテトチップスやアイスクリームなどいわゆるジャンクフードの美味しさがこれです

どれも美味しさには変わりません。しかし、今回私が取り上げる「経営者が考える美味しさ」は③の感性に訴えかける美味しさだと考えています。

味だけではなく、良い立地・雰囲気・価格などお客様が感性で楽しめて美味しいと思える料理が経営者の考える美味しい料理ではないのでしょうか。

そう考えると、先ほどの高評価のお店を「美味しい」と思えなかったのは、感性で美味しいと思える環境ではなかったからなのでしょう。


お客様との関係性や笑顔も美味しさに影響する!?

先ほど「経営者目線での美味しい料理とは、感性に訴えかけるもの」と書きました。

感性というと、味はもちろんですが、お店とお客様の関係性も大切です。お客様がどなたと食べに来たのかも美味しさに繋がってくるでしょう。

さすがにお客様がどなたと食べに来るかは決められませんが…。お店とお客様の関係で美味しいと感じさせることはできます

お店のスタッフがお客様とコミュニケーションを取って「美味しい!」と思わせるようなコンディションを作ることはできるでしょう。

例えば、お目当てだった飲食店に行ってみると、すごく混んでいたとします。

前のお客様が利用したテーブルには、まだ片づけられていないお皿やコップがいっぱい。

こんな時「まだ準備しているので、外で待っていてください」と冷たく言われたらどう思いますか?

おそらくお客様はムッとして、いやな気持ちになってしまうでしょう。食事をする気分にもなれないかもしれません。

反対に「今、急いで片づけます!外で少しお待ちください。片づけ終わったらすぐにお呼びいたします!」と笑顔で言われたらどうでしょうか?

この混み具合に店員さんの好意的な対応。「このお店の料理は美味しいはず!」と期待するのではないでしょうか。

つまり、美味しさとは味だけではない。食べる前のお店の対応も美味しさに影響するのです。

私はお客様とお店の関係が美味しさを左右することを知っています。イデアルのスタッフには、この重要性を研修などできっちりと伝えていました。スタッフには「常にお客様が何を期待しているのか考えよう」と話しています。

以前は私もお店へ頻繁に顔を出し、スタッフと仕事して自ら教えていました。最近はイデアルも店舗が増えて、研修やコミュニケーションが難しくなっています。しかし、ここはスタッフ全員に行きわたらせるようにしています。

美味しさに関係してくるのは、お客様とスタッフの関係だけではありません。お店の入り口やお店へ行くまでの環境すらも美味しさに影響してくるのです。

「越後一会 十郎」の外観。「一期一会のように新潟の食材との出会いを楽しんでほしい」という想いを込め、外側には新潟の職人さんが作った格子を取り入れました。県内各蔵の酒樽も置き、日本酒と新潟の食材をイメージしてもらえるような入り口になっています。

「路地裏の名店」なんて言葉がありますよね。文字通り表通りに面していない、わかりにくい場所にある美味しいお店のことです。

街灯の明かりが乏しい路地裏に入る時、少しドキドキするのではないでしょうか。「こんなところに本当にお店があるのかな?」と不安になるかもしれません。

しかし、そのお店はとても美味しいと評判。頑張って探してお店を発見した時は、ホッとした気持ちになるでしょう。

そして、お店に入り、店員さんに笑顔で「いらっしゃいませ」と言われた時の安心感と期待感!それこそ、先ほどの混んだお店で「片づけ終わったらすぐにお呼びいたします!」と笑顔で言われた時と同じ気持ちになるのではないでしょうか。

経営者としては料理の美味しさはもちろん、今まで書いてきたお店とお客様の関係性や環境なども大切にしています

お客様により美味しく感じてもらうために、五感の視覚(見る)・聴覚(聴く)・味覚(味わう)・嗅覚(嗅ぐ)・触覚(皮膚で感じる)を総動員させたいのです。

例えば、海の近くや山の中など、大自然の中で食べる料理はどうでしょうか?

潮の香りや鳥のさえずりを聞きながら食べる料理は、街中で食べるよりも美味しく感じられます。

なぜなら食べる前から味覚以外の他の感覚が、大自然によって心地良くなっているからです。

もちろん、カトラリー(食卓用のナイフ・フォーク・スプーンなどの総称)も大切な要素の一つ。

「ダイレクトにビールを飲む感覚を味わえる」といわれている「うすはりグラス(ごく薄いガラスで作られたグラス)」で冷えたビールを飲むのは、とても美味しいはず。プラスチックのコップでぬるいビールを飲むのとでは味が全然違うでしょう。

料理に合ったカトラリーを厳選するのも経営者の仕事です。

イデアルではお客様のコンディションから食べる場所の立地まで、お客様に関わるあらゆることを大切にしています。


美味しい=値段では決してない。日本中にはまだまだ美味しい食材がある!

ここまで美味しさには感性が必要、味や環境も大切と話して来ました。経営者としては美味しさと値段の関係も見逃せない部分です。

「高い料理や食材=美味しい」と思っている方は多いでしょう。私もそれは完全に否定しません。

世界三大珍味のトリュフ・フォアグラ・キャビアの様に希少価値が高い食材はとても美味しいと思います。しかし値段と美味しさが比例しているのかと考えると少し疑問です。

先日、友人のお店へ行った時に「トゲクリガニ」というカニと出会いました。青森県でとれるカニです。ご存じの方は少ないでしょう。私も知らなかったです。

※友人シェフからいただいたトゲクリガニの写真
※トゲクリガニの料理の写真

友人に「どんなカニなんですか?」と聞くと「味は毛ガニに似ていて、毛ガニ以上に美味しいという人もいます。ただ青森県外ではあまり流通してなくて、ほぼ知られていないので値段もまだまだ安いんですよね」と言っていました。

食べてみると、とても美味しい!友人は有名な一流シェフ、味付けも見た目も完璧でしたが、彼の料理の特徴は素材の味を活かすこと。つまり、そのトゲクリガニ自体がとても美味しかったのです。

しかも、美味しいだけでなく安い

私はその時、このトゲクリガニのような食材を探すことも経営者としての美味しさの追求ではないかと考えました。

高いものを高く仕入れるのではなく、日本中を巡ってまだ知られていない美味しい食材を探すのです。

そうすればお客様に「このお店に行けば、新しい美味しいものを味わえる!」と思ってもらえます。新しい美味しさの発見がお客様の感性を刺激するでしょう。それもまた「経営者としての美味しさ」に繋がると思っています。

新潟でいえば、佐渡には広く流通していない美味しいものが、まだまだたくさんあります。

新潟県外では山形や岩手・四国や三重などにも、流通量の少ない美味しいものがたくさんありそうです。

以前、知人が「フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義」という本を出版しました。このタイトルにもありますが、食は700兆円産業と言われています。

過去に私が作ったお店は後継者に譲りました。しかし、自分は「食」の産業に関わる経営者として「感性に訴えかけるおいしさ」を創っていきたい。立地や雰囲気、適性な価格、そして驚きなどお客様が感性で楽しめる美味しさをこれからも追求していきたいと思っています。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

引き続きお店や会社のことをnoteに書きたいと思っています。ぜひチェックしていただければと思います。よろしくお願いします。

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