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暁月のフィナーレ発売延期に見る期待値というコンテンツの怖さ。

     人は何か(もしくは人に)期待する。期待すればするほどに裏切られた時のショックは大きい。しかし、重要なポイントはショックそのものではない。それは期待する、しないという行為があくまで受け手の勝手な想像力に委ねられている点だ。もちろん、期待を抱くことそれ自体になんら非は無い。期待する、しないは当の本人の自由である。つまり、期待させるというテクニックは相手の想像力に依存する。しかし問題は、人が期待している対象の何か(もしくは人)は、人々に大いに期待させようと見えたとしても、それは往々にしていい意味での「勘違い」なのである。

     想像力。そう書くと何か都合の良い言い方に聞こえるかもしれない。だが事実、よほど優れている人でも他人の考える事など分かるはずがない。統計学的に多数の意見を聞いたとしてそれは100%他人を理解するということではない。人々の求めている意見にいくら丁寧に耳を傾けたところで、受け手の願いに100%答えることなど出来はしない。それは結局のところ、一方の求めに答えた時、もう片方の求めを断ることになるからである。つまり全ての期待に答えることは出来ないのだ。

   今回私が筆を執った一番の理由は、昨日土曜日の公式番組で冒頭に発表された、新パッチである「暁月のフィナーレ」の発売延期。それについての考察である。かなり個人的な私見が含まれていることを承知して欲しい。もしそう言った文章を見たくもないという向きはここで戻っていただけないだろうか。前にも言ったが、わたしは頭の中に渦巻く言葉をここに置きに来た。誰かを非難するつもりはない。言葉を置く。ただそれだけなのだから。

   考察?というか、私なりの落とし所かもしれない。というのも、わたしはこの件についてすぐに自分事として理解することが出来なかった。公式番組の冒頭で吉田直樹氏から発表されたとき、率直に言ってその言葉の意味を理解できずにいた。いや、頭では分かっていた。発売日が2週間伸びる。ただそれだけである。しかし、そのことが吉田直樹氏の口から「残念なお知らせ」として発せられた時。私は思考停止してしまった。彼が発した言葉の意味を理解することは出来ても、その事実が意味する破壊力の大きさを捉えることが出来なかったのである。

   発売日が延期される。それは事実だ。どれくらいの期間か?およそ2週間である。以上だ。しかし、私は理解できなかった。何が私を混乱させたのだろうと私は私自身の心の中を測りかねていた。そこから様々な反応を目にする。

楽しみが伸びただけだ。問題ない。
他のゲームをやるから大丈夫。
残念なお知らせと言うから、誰かチームから離脱するのかと心配した。逆にゲームの延期だったことに安堵した。

これらの意見にわたしは激しく同意した。わたしもこれらの意見とほぼ同じような気持ちだったと思う。しかし、わたしはもっと先の不安を持ってしまった。それを口にすることはとても怖い。けれども私が思ったことをここに記しておく。それは

吉田直樹さんがFF14から離脱することになりました。

    吉田直樹氏も人間である。疲れもすれば、体力も無限ではない。それは加齢による成熟と共に訪れる肉体的、精神的衰退だ。わたしは、どこかで、彼を神様のように崇拝してしまっていたことに気づいた。彼が人間で、いつか彼がこのプロジェクトから離脱する未来が必ず来るのだという当たり前の事実に、わたしは思い至ったのである。わたしのショックはまさにこの分野のものであった。

   彼がエオルゼアを愛し、このプロジェクトにゲームクリエイターとしての全てを捧げていくつもりだという言葉を信じていないわけではない。それは紛れもなく彼の本心でありそのつもりなのだろう。しかし、その彼の言葉や信念とは関係なく、彼にも限界は来る。その日は、必ずやって来る。

    彼がこれまでパッチのスケジュールを変更したり、延期させたことはこれまでにもあった。しかし今回みたいに、「やむを得ず」「急遽」遅延させたことは、私が知る限りなかったように思う。私が知らないだけでこれまでにもあったのかもしれない。けれども、わたしにとって、彼の、吉田直樹氏という存在の最も信頼のおける部分は、スケジュール能力である。つまり、どんな状況になろうとも完璧なスケジュールをこなす能力。それは組織人としてのそれであり、ビジネスマンとしての仕事の遂行力の高さを示す絶対のスキルだった。わたしが彼に心酔していたのはまさにそこである。

     仕事がすべて順調に進むことなどない。むしろスケジュールが変更になることなど普通だ。それをサラリとこなし、遅れる時は即座にリスケする。あらゆる仕事には相手がある。そしてその相手はユーザーひとり一人はもちろん、全てのビジネスパートナーにも向けられている。それらの関係者に迷惑をかけないこと。そこにこそ最低限のマナーがある。それを破ってしまうこと。すなわちタブーがあるとすればそれは何か?それこそ、直前のリスケと私は思っている。分かりやすくいえば、ドタキャンだ。

    今回のケースはあくまで延期であり、ドタキャンではない。そこは私も理解している。むしろ、2週間延期しただけでリカバリーできるとは素晴らしい組織力だと関心すらさせられる。ゲーム作りは1人では出来ないのだ。それも世界中の人が関わっている一大プロジェクトなのである。 

   しかしだ。リスケを避けられない状況になった。リスケせざるを得ない。それならば即座に対応して即座に発表すべきではないだろうか。リスケが最適な判断だとしても、その判断が少しでも遅れてしまえばそれば悪手になりうる。つまり大惨事になる。決断したのは先週の金曜日と言っていた。それは果たして5日のことなのか。それとも言葉の通り1週間前のことなのだろうか。

    それでもクオリティアップのためのやむを得ない判断なら仕方ないという意見もあるだろう。しかしそれを許してしまうともはや何を信じていいのか分からなくなる。間に合わなければそれで終わり。そんな厳しさがビジネスの世界では往々にある。つまりどんなにいい言葉を、作品を作ったところで、また遅れるのではないか?という不信感を相手に与えてしまったら、もはやその部分への信頼を取り戻すことはかなり難しい。それほど大きな信頼を、もしかしたら彼は失ってしまったのかもしれない。わたしの心配する「引退」の2文字と直接関係する話では無い。それはわかっている。しかし、彼の中のビジネスマンとしての高水準なスキルに絶対の信頼を寄せていたわたし。その彼の「陰り」を見てしまったような、そんな心配をしてしまった。わたしがショックだったことは、まさにこの部分である。

   ネットの掲示板には他にもこんな意見がある。

零式が1月4日になったことで、固定が解散になった。
零式のために有給取っていたがさすがに年始は無理だ。零式だけでもリスケしてほしい。

    わたしは高難易度コンテンツをプレイしないライトユーザーなので、この手の話は自分事として認識しない。しかし、高難易度コンテンツはワールドファーストを目指すガチ勢が多数いることは知っている。つまり、誰がいちばん早くクリアするか?は十分に魅力的なコンテンツとなっているのだ。そのことについて理解していない運営ではない。ましてや、吉田直樹氏も高難易度コンテンツをプレイするユーザーの1人である。にも関わらず、年明けの1月4日というあまりにも不可解なスケジューリングを良しとしたことにもまた、わたしの彼に対する絶対的な信頼感を損ね、不信感を募らせる結果となったことは否めない。

   もちろん、零式については、これまでにもあったのかもしれない。無理な日程でもこなす。それが真のワールドファーストの猛者に与えられる称号かもしれない。しかし、今回の発売延期が、彼の「ワガママ」によるものであり、メインストーリー周りの変更によるものだと言うことがどうもひっかかる。それが真実かどうかはさておき、すべてのコンテンツが出来上がっており、メインストーリーも踏破済みであるはずのこのタイミングでの延期。リリースしてからホットフィックスで当てられなかったのか……。私も詳しい訳では無いが、様々な選択肢の中から、最も選択してはいけない選択肢。それが「延期」だったように思えてならない。

    不完全な物を世に出してはならない。それはクリエイターのエゴなのか。それとも、ユーザーのことを真に考えた苦渋の決断なのか。いずれにしても、最新のパッチはその是非についてかなりのハンデを負ってしまったと言わざるを得ない。つまりめちゃくちゃ面白くても、そうでなかったとしても、今回の発売延期がじわりじわりと暗い影を落とすきっかけになるかもしれないという杞憂は、ずっと残り続けていくのである。私はその事がとても恐ろしくてならないのだ。

    期待値というコンテンツは応えているうちは大きなプラスに働く。しかし少しでも応えられなければ即座に奈落の底に突き落とされかねない諸刃の剣そのものだ。彼はその大きな期待値を1人で背負い続けてきた。それは超人のそれであり、奇跡そのものである。しかし、わたしたちユーザーは期待値を高めることはあっても、低くすることはこれまで1度もなかったのはないだろうか。彼も人間である。そして期待値を高め過ぎたのは、いつも私たちの方なのだ。

MUSICAでした•*¨*•.¸¸♬︎

それでもわたしは絶対楽しめると思います!

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