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来年度の本講師未定という異常事態

本願寺派の最高講会「安居(あんご)」は4年ぶりに龍谷大学大宮学舎で開催され、7月31日閉繙式(へいばんしき)で閉幕した。

通常であれば、この式において来年の本講師、副講者、典議(てんぎ)、会読論題が発表される。しかし、ここにも新しい「領解文」問題の影響が出てしまった。発表された来年の予定は、

期間:2024年7月18日〜7月31日
場所:龍谷大学大宮学舎本館講堂
講師、典議および講題:未定
会読論題:未定

だった。後日発表するというアナウンスはあったものの、その後日がいつになるということも明確ではない。安居の本講師は、

安居に、本講師1人を置く。
2 本講師は、学階勧学を有する者のうちから、毎会計年度ごと、綜理の推薦によって、勧学寮頭が申達し、門主が任命する。
3 本講師は、門主が選定した講題を講述し、会読の論議を判決する。

安居規程第6条

とある通り、門主の任命である。
安居綜理の推薦、勧学寮頭の申達は行われたようであるが、門主の任命が遅れているもようである。「勧学・司教有志の会」に名前を連ねている勧学が本講師の候補であったようであるが、批判を行う者を本講師に任命することはできないというのはいかがなものだろうか。

2020年秋に菅義偉首相(当時)が日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否したような権力の濫用ではないか。

来年度の本講師の氏名や講題は閉繙式の一番最後に勧学寮の部長が発表する。振り返ってみれば、今年は式の内容も例年にない緊張感があり、「安居を存続させたい」という思いがにじむような言葉が続いた。

満井勧学が最終講義で安居の重要性語る

本講師の満井秀城勧学は最終講義を行い、

私たちのこの時代、宗祖聖人から800年の時を隔てています。聖人の時代と今の時代と何が大きく違うか。二河譬の時に指摘いたしましたが、善導大師が示された二河白道(にがびゃくどう)の出発点は〈西に向かう人〉、つまり西方願生(さいほうがんしょう)が前提になった説示であります。今や私たちのこの時代、西方願生という出発点にすら立てていないと思います。その時代にあって、私たち西本願寺の安居(の会読)においてはゆゆしき学生(がくしょう)たちのおわせらるる南都北嶺の広学竪義 (こうがくりゅうぎ)に比べて何が一番違うか、それは皆さんが宗義(親鸞聖人が示された浄土真宗の教義)を自分の言葉で表現してくださっていることの一点だと思います。時代即応の伝道を担っていくには基礎的宗学の修得なくして時代に即応することはできません。それは例えば、やぶ医者に大きな手術を委ねるようなものであります。時代即応の伝道が大きな課題、重要な課題であればこそ、この宗派において一人一人が基礎学問を修得させていただくことが重要であると思っている。

と、宗学を修得する安居の場の重要性について力説した。また、淺田恵真勧学寮頭は訓示し、4年ぶりの対面での安居になったことの喜びを語り

3年前は安居始まって以来の中止を余儀なくされた。2年前、昨年は異例のオンラインで開いた。すべての日程をもとに戻すことはできなかったが本講師、副講者の講義、そして皆さんの会読をこれを対面でできたことは有り難かった。

と語った。
安居に参加する僧侶「大衆」の1人は「最終日に発表される会読論題を聞き、その論題を一年間研究して来年の安居にのぞむ。論題が発表されなかったのは残念に思う。学問の場に政治の混乱を持ち込まないでほしい」と首を傾げていた。

龍谷大学大宮学舎本館に掲げられる講札。本講師が講義する内容が掲げられるが、いつ講札はかけられるのだろうか。

(稲城 蓮恵)


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