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古市憲寿「平成くん、さようなら」感想

#平成くんさようなら あらすじ🐳 社会学者・古市憲寿、初小説。 平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。 愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。 なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。 『絶望の国

    • 宇佐見りん「推し、燃ゆ」感想

      🐳あらすじ: 逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。 アイドル上野真幸を""解釈""することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。 🐳感想: "推し"という今どきのタイトルと目を引くピンクの表紙に惹かれて久しぶりに本を購入しました。表紙のイラストを描いている方も有名な方ですね。とてもいい。。 内容ですが、題材のとっつきやすさに比べてとても文学的でした。まるで純文学を読んだあとのような読了感。 推し

      • 最近のディズニープリンセスを見て思うこと

        先日ラーヤと竜の王国を鑑賞した。実写と見まごう映像美もさることながら内容も素晴らしく鑑賞中何度も涙したのだが、「面白かった」の次に出た感想は「いいなぁ」という正直な気持ちだった。  ラーヤと竜の王国のあらすじを簡単に説明すると、昔、龍を滅ぼした邪悪な魔物が再び王国を襲い、聖なる龍の力が宿るという石を探し守護者の一族の娘ラーヤの旅が始まるといったものだ。自らを犠牲にした龍がコミカルなキャラクターとして描かれたり、旅を通して出会った人たちと仲間になったり、現代とは馴染みのない内

        • 生まれ変わり

           私には右耳に四つ、左耳にひとつピアスホールがある。一見、ひとつも開けていなさそうな見た目をしているので耳に髪をかけるとぎょっとされることが多い。「どうしてそんなに開けているの?」とよく聞かれるが、答えは簡単。単純にピアスが好きだからだ。そして、私なりにすべてのピアスホールにはちゃんと意味があった。 もともとピアスに興味を持ったのはまだ年端もいかない頃だった。ショッピングモールで食料品を買うついでに寄ったアクセサリー屋さんで、母の買い物に付き合ったのがきっかけだった。母は金

        古市憲寿「平成くん、さようなら」感想

          朝井リョウ「正欲」感想

          🐳あらすじ 息子が不登校になった検事・啓喜。 初めての恋に気づいた女子大生・八重子。 ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。 ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。 しかしその繋がりは、""多様性を尊重する時代""にとって、ひどく不都合なものだった――。 「自分が想像できる""多様性""だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」 これは共感を呼ぶ傑作か?目を背けたくなる問題作か? 🐳感想 作家デビュー10周年の作品。 「桐島部活やめるってよ

          朝井リョウ「正欲」感想

          私のよくキレる姉の話

           自分の話をしようと思ったとき、姉の話は避けられないだろう。 私より三年早く生まれた姉は私とはとにかく正反対だった。平均身長より高い姉と低い私。バスケ部に入部していた姉と帰宅部の姉。大学で外国語を専攻した姉と日本文学を専攻した私。ブルベ肌の姉とイエベ肌の私。見た目は似ていてもとにかく姉と私は正反対で、幼い頃からその正義感ゆえよく怒っていた姉に隠れるように私は無意識のうちに内向的に育ったように思う。私が学校で嫌がらせのようなことをされたら先に反応してやり返していたし、会社で上

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