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ドミナントのコードファンクション

コードファンクションについて普段から意識しているでしょうか?コードファンクションとは「コードの機能」で、「あるキーにおけるそのコードの聴こえ方」の事です。

例えばCメジャー・キーに於いてCmaj7は落ち着いて聴こえるので「トニック」、G7はトニックに進みたくなる響きなので「ドミナント」となり、このコードファンクションは西洋音楽的な調性感が基になっています。

クラシックではより厳格な理論で転回形なども分類されていきますが、ジャズやポップスではこれらは一括りにされることも多いようです。

そもそもメロディ重視のクラシック理論とハーモニー重視のジャズ理論では考え方が異なるため、これを同一軸で考えると

「あれは正しい、これは間違っている」

という事になって、いつまで経っても解決できない事象が増えていくばかりです。今の世の中の状況とよく似ていますね〜😏


では本題

【ドミナント7thコードの聞こえ方】

◯7と表すコードですが、ジャズの理論では大きく2種類あります。

まずドミナントの機能を持ったドミナント7th、いわゆるⅤ7です。

ドミナントの機能を持ったドミナント7th

ダイアトニックのⅤ度にあたるコードでこれはⅠへ進行して解決するコードですね。

それから、ダイアトニックのⅠ以外に解決するのがセカンダリー・ドミナント。具体的にはⅡ度からⅥ度の各コードへ進行する事で解決感をもたらすことができます。

ディグリーネームではⅤ7/◯と表すコードです(◯は解決先の度数)

これらは「Ⅴ→Ⅰ」という解決感(終わった様に聞こえる)があるため、Ⅴ7はドミナントの機能を持っています。

トライトーン・サブスティテューション(G7 ↔︎ D♭7のようないわゆる裏コード)はドミナント機能があるのでsubⅤ7、subⅤ7/◯と表記


もう一つはドミナントの機能を持たないドミナント7th

ドミナントの機能を持たないドミナント7th

ドミナントの機能を持たないのにドミナント7thと言うのはおかしいですね(笑)

こちらも見た目は◯7で上記のドミナント7thと同じ形なのですが、聴こえ方がドミナントにはなりません。


音楽理論には色々な考え方がありますが、僕はドミナント・コードに関しては

「ドミナント機能のあるものはⅤ7」
「ドミナント機能でないものはⅤ7以外の表記」

と分けています。

具体的にはダイアトニックの5番目のコードとセカンダリー・ドミナントはドミナント機能があり、それ以外の◯7コードはドミナント以外と考えます。Cメジャー・キーにおいてG7はⅤ7、A7はⅤ7/Ⅱという表記です。

これが理論書によってはD7をⅡ7としているものもありますが、これだとD7の向かいたい先が分かりにくいため、セカンダリー・ドミナントとして機能する場合Gに向かおうとするのでⅤ7/Ⅴ、D7単独で響く(Gに進む様に聞こえない)場合はⅡ7・・・例えばTake the A Trainの3小節目がそうではないでしょうか?

Take the "A" Train

この曲の3小節目のD7がドミナントではない理由として、D7以外の◯7を当てはめても違和感なく聞こえることが挙げられます。

C7(♯5)
D♭7
D7(♯11)→オリジナル
E7
G♭7(9)
G7(♭9)
A♭7(♭13)
B♭7(♯11)

いずれもメロディとぶつからずコード進行も不自然には聞こえません。


C メジャー・キーでは◯7のコードは以下のように考えられます。

・ドミナント機能を持つもの

G7
 →プライマリードミナント(ダイアトニックのⅤ7)

A7, B7, C7, D7, E7
 →セカンダリードミナント

それぞれのトライトーン代理コード(裏コード)
D♭7
E♭7, F7, G♭7, A♭7, B♭7

・ドミナント機能を持たないもの

よく使われるものは以下の3つ

C7:ブルースのⅠ度
F7:ブルースのⅣ度
B♭7:ナチュラルマイナーの♭Ⅶ度

微妙なドミナントコード

D7, E7, A♭7, A7, B7
これらのコードは強拍に現れることでドミナントには聞こえづらいことが多いです。

ブルーノートに関連したコード
E♭7, G♭7, A♭7

例えばブルースのコード。

ブルースの1小節目のドミナント7thはトニック

Cメジャー・ダイアトニックにおいてC7はF(Ⅳ)へ進むセカンダリードミナントⅤ7/Ⅳとして考えられます。実際には2小節目がF7となり5度下降しているようにも見えますが、ハーモニック・リズムの関係を考えると1小節目はドミナント機能を持っているとは考えられません。ブルースの場合はこのC7はトニック(Ⅰ7)となります。

📖ハーモニック・リズムについてはこちら]

また、Cメジャー・ブルースの5小節目はF7ですが、これはⅣ7となり、サブドミナントです。4小節目のC7はここ(5小節目のF7)に進むためのセカンダリー・ドミナントⅤ7/Ⅳとなり、この場合はドミナント機能になります。

他にはモーダルインターチェンジでよく使われるナチュラルマイナーの♭Ⅶ7。ボサノバのイントロやエンディングでよく使われます。Killer Joeの最初の2小節と言えば分かるでしょうか?

Killer Joeの最初の2コード

先程紹介したTake The A Trainや同じコード進行のGirl From Ipanemaの3小節目はハーモニックリズム的には強拍に現れるためD7で落ち着いた様に聞こえます。(ブランコに乗って前に行った状態)このD7はGを期待させるようには聞こえないため、Ⅱ7と表記した方が良さそうです。

ブルースなどではブルーノートの音をルートにした7thコード(Blue Note Rooted Dominant 7th Chord)がしばしば使われます。CmajorブルースでのE♭7なんかがそうですね。Tin Pan Ally系の音楽などでよく使われるコードです。

例えばブルースのコード進行には以下のようになります。

ブルーノートの音をコードのルートにしたブルースの例

これらのコードは9小節目のG7は純粋なⅤ7、最後のD♭7は1小節目に戻るための裏コードとなるためそれぞれドミナント機能を持っていますが、他は全てドミナント機能がありません。

ブルースは基本的にブルース・スケールに基づいているため多様なドミナント7thコードが存在します。そもそもブルースはコード理論とは次元の違う話になってきます。一般的な音楽理論でブルースを分析することはある意味ナンセンスでもあります。


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