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希望とドライブインシアター

「商売ってぇのは我慢強くやんなくちゃいけねぇよ。良い時もあれば、悪い時もある。今が悪くとも、飽きずに続けていればきっと良くなる。〝あきない〟ってぇからなぁ」

そこから気持ちいい音を立てて蕎麦をすすり、勘定を一文ちょろまかして夜道へ駆け出す。くだらない冗談も、軽快なリズムを刻めば、すり抜けた鼓膜の向こう側、頭蓋骨で螺旋を描き、胸の内でぱっと華やぐ。

塞翁が逃がした馬も、ハワイの雨も、「今を生きる」の延長線上に希望を描く。

幼い頃、妹と「こうすれば、同じ夢を見れるんじゃないかな」と手を繋いで一緒に寝た。ぼくたちは、本気でそう信じて。

翌朝、答え合わせすると、当然外れていて。それから何日も手を繋いで寝たけれど、同じ夢を見ることはなかった。だんだん、「それはできない」ということがわかってくる。大人の階段の、まだ浅いところ。

それに気付かないまま大人になったり、抗い続けた人は「天才」となり、受け入れた人は「普通の大人」となる。でも、それだけじゃない。

いつからか、寝る時に見る夢じゃない方の「夢」なら一緒に見られることにぼくは気が付いた。相手は妹から変わったけど、その方法を今でもずっと訓練している。

人は、希望があれば、つらいことでもそこそこ耐えることができるらしい。つらいことなんて一つもない方がいい。でも、人生は長い。いろんなことが起きる。頭の中に、夢を描くこと。ドライブインシアターのように、みんなでそれを見るんだよ。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。