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獲得する、自分のことば

自分のことばを手に入れる。

それが大事だと思うのです。人と話して、本を読んで、わたしたちはことばを獲得してゆく。でも、きっとそれは他人のことば。では、“自分のことば”とは、何だろう。

たとえば、「美しい」とはどういうことか。辞書を引いて、意味を調べる。そこ書かれたことばではなく、自分なりに解釈をしてみる。調和のとれた色、形、音。だけでなく、夕飯の後に妻がそっと差し出してくれたとうもろこし茶。怪我をした一匹の犬に、静かに寄り添うもう一匹の犬の姿。精度を高めるために妥協を許さない、とあるクラフトマンの姿勢。

それらは、辞書には掲載されないかもしれない。大切なことは「美しいとは何か」を自分が知っていること。「美しい」は一つではない。そこに気付いた時、世界は鮮やかに移ろってゆく。つぶさに見つめてみると、そこには詩が息づいている。“自分のことば”を獲得することは、ポエジーを味わうこと。

“自分のことば”を扱う人に惹かれます。正しいも、間違いもなく。感じて、考えて、発見して、選んで、形にして。世界に自分が存在しながら、同時に、“自分”という世界を育ててゆく。そうなれば、“自分のことば”を持つ者同士の対話は、それぞれの詩の交換でもあるのです。

ことばを定義して考えることは大事。ただ、一度ことばを形にした後から“意味”を育ててゆく方法もある。与えたことばは器、どういう意味を育もうか。それが楽しくて仕方がありません。



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