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真夜中のハリネズミ

体調を崩した。

だって、急に寒くなるんだもの。あと、ペットのハリネズミが夜中にゲージを抜け出して寝室にやってきた。ガサゴソ音がするから、灯りをつけてみると「くんくん」と鼻息を立てたちびっこが顔をのぞかせた。夜中の三時だよ。部屋が明るくなるとずっとこの調子で走り回っているの。

これで結局寝られなくなった。ハリネズミの運動神経を侮っていたみたいだ。遊具の回転車を倒して、屋根に飛び乗り、ゲージの隙間から抜け出して家の中を探索するという大冒険を彼はやってのけた(結局、ぼくにつかまってしまうのだけど)。

ハリネズミはモグラの仲間でほとんど目は見えていないらしい。だから匂いや音に敏感。きっと妻の匂いを辿ってやってきたのだろう。たこ足コンセントに顔を突っ込んだり、コードを齧ってビリビリと感電してしまう子も中にはいるらしい。無事でよかった。脱走しないように工夫しなくちゃいけない。

急な寒さと睡眠不足。体調を崩すと、頭がぼんやりするからいけない。文章を書くにしても、一時間でできることが二時間かかる。時間がかかったわりにはミスが出る。いいことがない。

だから昨日は体調を整えることに集中した(締切の原稿があったので書くのはそれだけ)。SNSも更新しない。その間にも、いろんな人からいろんなメッセージが届く。教養のエチュード賞の応募作品も届く。言葉を交換し合って、コミュニケーションをしている。とても素敵な営みだとあらためて感じた。

目の前にいる家族とも、遠い国にいるあの人とも、感情、想像、ポエジー、生活、声、時間───言葉へ乗せたあらゆる「何か」を送り届ける。寄せては返す波のように、残響はまどろみの中へと消えていく。互いの岸のその間を言葉が遊泳する中に、人生というものがあるのかもしれない。ぼくの場合には。

言葉への乗せ方を、もっと上手になりたいな。できるならば会ってみたい。たとえ会えなくとも、言葉を贈り合える関係性を築きたい。

ぼんやりとした頭で、そんなことをなんとなく考えていた。そう、なんとなく。



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