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「捨てる」覚悟

今年に入ってから、ユニークな仕事に関わらせていただいている。

とある作品のシナリオ制作で、アイデアを出し合ったり、プロットをつくったりして、魅力的なストーリーをチームで共に考えて、形にしていく。これがとにかく楽しい。毎回、5、6時間かけて練り上げる。課題や方向性が見えると、一度形にして、それを元にまた打ち合わせをする。

僕が最も感心したのは、「良いアイデアが出ると、前のものは捨てる」という姿勢だ。みんな真剣にシナリオについて考え、アイデアを出し、形にしていくのだが、新たに良いアイデアが生まれると、それまでつくっていた設定や展開を惜しみなく捨てるということだ。普通なら、「これだけ考えたのだから」となかなか手放せなかったり、つくったものに愛着が生まれて大事にし過ぎたりしてしまう。それを、ためらいなく捨てる。

プロフェッショナルだと思った。プロは、優れたアイデアが現れたら、それまでの全てを潔く捨てることができるのだ。彼らはピュアに「本当に良いもの」をつくろうとしているのだ。それまでにかけた時間や労力を気にかけることはない。ただただ「良いものをつくること」にこだわる。

この体験は、ぼくに大きな影響を与えた。

ぼくはもっともっと考えることができる。「より良い方法はないか」ということを常に考えていたいし、「より良い方法」は必ずある。考えることをあきらめてはいけない。「推敲」という文章を洗練させる工程に惹かれるのも、同じ理由だ。文章は、まだまだ良くなる。より良くするために、積み重ねてきたほとんどを捨てることが求められるなら、ぼくはためらいなく捨てる。「良いもの」にこだわりたい。

エモーショナルに創作し、キンキンに冷えた頭で批評する。ひとりの自分が情熱と冷静を繰り返す。そのようにして、洗練された文章は練り上げられてゆくのだと思う。

書くことが楽しい。ぼくはまだまだ成長できる。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。