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手を伸ばせる距離の人を幸せにする。それが遠くの誰かへのギフトとなる。文章にはそんな力がある。

今年に入ってからnoteで書いた記事を数えてみました。その数419本。そして、この記事が420本目となります。

コロナになり、「書く」という行為に対する想いを変えました。そのシフトは明確に行われました。その転換以降の文章は、文章の修練であり、生き方の鍛錬。つまりは、エチュードです。

noteと並行して、仕事でも毎日文章を書いてきました。それは、本当に毎日。ぼくが生きてきた中で最も文章を書いた一年だったと思います。頭に思い描いた現象をことばに落とし込むことはいくらか上達したような気がします。ただ、「まだまだやれる」とも思っていることも事実です。

闇雲にたくさん書けば文章がうまくなるとは思っていません。文章を磨くために最も有効な手は、尊敬する人と仕事をすること(ぼくの場合)。その人の考え方に触れ、美意識に触れ、哲学に触れる。「責任」が人を育てる。短い時間で自分の力を引き上げてもらえます。

ただ、たくさん書くことにも意味があります。日常的に大量の文章を書くことで、ことばは自由を手に入れる。別の言い方をすれば、自在に操る技術を習得するということ。そこには、飛躍はありませんが、確実な一歩前進があります。

いずれにせよ、「文章を書く」ということは尊い営みです。


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2020年に書いた(現地点で)420本の記事の中から、お気に入りの10本を選んでみました。もし良ければお付き合いください。

【10】

コロナが世の中を襲い、外に出れない、人と会えない日が続きました。その中で立ち上げたプロジェクト。本と手紙を贈り合うことで支え合う。それは「交換」ではなく、「ギフト」でした。集まった本を並べて「コロナの本棚」をつくりたい。それはコロナウィルスがもたらした数少ない希望的側面だから。

【9】

「聞いてよ20歳」という企画への応募作品です。20歳の頃、バックパックを背負ってインドへ一人旅をした時の話。今でも鮮明に覚えています。ありがたいことに、この作品で「きゆか賞」をいただきました。心より感謝いたします。

【8】

前作『スィートな夜を、愛で満たす』を書いた感触が楽しかったので、その完全版として書きました。バーのカウンターでアブサンを飲んで、あの日のインドへトリップするという仕立てです。cakesクリエイターコンテストへの応募作品。かすりもしませんでしたが、個人的にお気に入りです。

【7】

緊急事態宣言が発令して、経営しているバーがピンチを迎えました。夜の営業ができない中、ぼくたちは昼にカレーの販売をはじめます。その名も『生きるためのカレー』。お客さまのためのカレーではなく、ぼくたちが、そして店が生き抜くためのカレーです。この時、たくさんの方に支えていただきました。ことば通り、いのちを救っていただいた。この出来事以来、「書くこと」に対する姿勢は変わりました。

【6】

愛犬トムのお話。ぼくがはじめて小説を書いたのは、トムを題材にした物語だったことを思い出しました。大好きです。君以上の犬とは一生出会えない。

【5】

日本一の卓球選手だった義母のお話。卓球をこよなく愛し、たくさんの人に愛された女性。『磨け感情解像度』というコンテストへの応募作品です。これもかすりもしませんでしたが、個人的には大好きな作品です。書きながら何度も泣きました。

【4】

ぼくが主催した「創作」をテーマにしたコンテストです。シンガーソングライターの広沢タダシさんの楽曲『彗星の尾っぽにつかまって』からインスピレーションを受けて、クリエーションをつくる。画期的なプロジェクトで、YouTube配信やオンラインイベントを絡ませながら楽しく運営しました。想像を超えるクオリティの作品がたくさん集まりました。仲間を募って実装したことも、ぼくにとっては大きな挑戦でした。仲間はいいね。一人よりもずっと思い出が豊かになる。関わってくれたすべてのみなさまへ感謝します。

【3】

ぼくのライフワークとなっている文章によるコンテスト『教養のエチュード賞』。今回が第三回で、結果的に170作品が集まり、只今一通ずつ1000文字の手紙を送っています。最高に楽しい時間です。ぼくにとっての最上のエチュード。

【2】

営んでいるCafeBarDonnaが無事11周年を迎えることができました。ひとえにみなさまのおかげです。これは社交辞令でも何でもなくことば通り、みなさまに生かしてもらうことができた。この体験はぼくの人生に大きな影響を与えました。一つひとつの選択や判断、行動は全てこの経験と紐づいています。心より感謝いたします。

【1】

18歳年上の妻との物語。この記事はたくさんの人に読んでいただきました。スキの数が2000を超えたことには驚きました。ぼくの最もコアの部分です。彼女がいるから今のぼくがいる。彼女からいろんなことを学び、支え合い、愛し合った。喜びは分かち合い、悲しみは分け合った。誰よりも尊敬する人です。


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振り返ってみれば、強く記憶に残っているのは手の届く範囲のものばかり。妻や愛犬、それから店。両手をひろげた分の幸せを大切にすることが、誰かを救うことにつながる。

両手をひろげた分の幸せ。「みんなを救うからね」とは決して言えない。ぼくは目の前にいる人たちを大切にしたい。その「手を伸ばせる距離の人」を幸せにすることが、実は遠くの誰かの心に影響を与えるんじゃないかな?例えば、ぼくの文章を読んで少しでも響いてくれた人がいたとしたら。

最後だから少しだけ大それたことを言わせてもらう。

世界を救うとするならば、ぼくはそういう方法で少しずつ変えていきたいな。

いつかの文章でぼくはそう書きました。

だから、これからもそういう物語を書いて、世界を救う手助けができるといいな。

これまでの人生で最も文章を書いた一年だというのに、不思議なことに「渇き」を感じています。もっと書いていたいし、書くことがもっとうまくなりたい。それはね、いろんな人にたくさん助けてもらったから。たくさん支えてもらったから。

だから、書くことで、少しでも世界をより良くできたらなって。そのためにはもっと力がいるし、もっと真剣に「ことば」と向き合わなくちゃいけない。ずいぶんと大げさな話かもしれないけれど。でも、ぼくは本気でそう思っているんです。呑みながらじゃないと、恥ずかしくて書けないね。

ぼくの行動指針はすべてここにあるから。




「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。