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逃げるは恥だが役に立つ

逃げ恥。

同タイトルの人気ドラマがあるが、この文章とは全く関係がないし、わたしは一度も見たことがない。さらに言えば、ロマンティック・コメディの漫画が原作だということも今しがた知った。だから、ドラマや漫画についての内容を期待した人には先に謝っておく。ごめんなさい。何一つ関係のない話が続くことになる。

では、なぜこのタイトルにしたのか。果てしなく答えはシンプルで、逃げるは恥だが役に立つからである。そう、逃げることは恥なのだが、役に立つのだ。人はもっと逃げた方がいい。問題に向き合い続けることが美徳とされているのか、自ら苦悩に飛び込んでゆく人の多さったらない。

コミュニケーションが上手な人は、逃げ足がはやい。面倒な展開になってくると、それをいち早く察して、少しずれた話をはじめる。みんながぼんやりしたところで、さーっと霧のようになっていつの間にか消えている。あれは、わざとだ。技術なのだ。人は、逃げたことさえ気付かない。

「君子危うきに近寄らず」ということわざもあるが、彼ら(彼女ら)は問題が起こる前にその場から離れる。不穏な気配に対する嗅覚が、異常に鋭い。何かが起こる前に、さっと身を引く。それがわからない人は、問題が起きた後に慌てふためいて、面倒に巻き込まれてゆく。

彼ら(彼女ら)のすごさは、「逃げる」を選択しているのに、周囲にそれを気付かせない点にある。「逃げる」は恥。だから、恥をかく前に消える。いかがわしい場所には近づかないし、不穏な空気には敏感だし、面倒な人とは距離を置く。そのようにして、問題が起こらない状況を常に整えている。

言わずもがな、コミュニケーションが上手な人が、全ての問題から逃げているのかというとそうではない。自分の信念と関わる問題とは真摯に向き合っている。逃げるのは、自分とは関係のない“いざこざ”に対してだ。賢者は、自分の人生が有限であることを知っている。

また、「問題に対して、声を上げて解決することも大事だろう」という声も聴こえてきそうだ。それは、確かに仰る通りなのだが、コミュニケーションが上手な人と活動家の目的は違う。先ほどの“自分の信念と関わる問題”とゆるやかにつながっているのだが、活動家は衝突を起こすことで世の中に問題提起し、革新を起こしてゆく。彼ら(彼女ら)にとって、“問題”は重要な火薬となる。爆燃を起こすことで、現状を是正するきっかけをつくる。

逃げることは、恥ずかしい。それならば、賢者のように事前に姿を消せばいい。問題が起こりそうな“何か”と距離を置き、不穏な空気を読み取る嗅覚を鍛えたい。もし、やむなく問題が起きてしまっても、問題と向き合う覚悟がないのならば、勇気を出して逃げてしまえ。自分のアクションの選択肢の一つに「逃げる」があると思うだけで、気持ちが楽になる。逃げるは恥だが役に立つのである。

本家の『逃げ恥』も、そういう話なのだろうか。見たことがないから、万に一つの可能性でシンクロしているかもしれない。知っている人がいたら教えてほしい。

まずは、誰かの悪口に賛同することを控えるだけでも、生きやすくなる。



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