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漫画「サガラ~Sの同素体」 3-4巻のハイライトとその魅力について


ナルセの父である現職の成瀬産業の会長と面会をすることにこぎつけたサガラ。

成瀬の父はかつて、自身の判断ミスによってプラントを持つインドで銃殺された従業員の死を、現地の暴徒によるものとして遺族にウソの説明をしたことで会社の体裁を守った。
これが、成瀬家が家訓に持つ「利よりも義を重んじて仕事をする」という掟を破ったとして、自身を苛んでいる。

今回、実子のナルセが掲げる理念と、それを具現化するためのクーデターを支援することをせめてもの償いとしているが、その判断に再び迷いが見れる。

一方でサガラはナルセとの接触を重ねながら、自己犠牲が顕著に見て取れる行動によりナルセの窮地を救ったことで、徐々に信頼を寄せられるようになる。

ナルセは日本を家に喩え、建物自体はきれいでしっかりしているように見えるが、基礎が粗雑であるため傾いているという。
そして、基礎をやり直すには、国家転覆という方法しかないという結論に至ることで、この計画を進めてきた。

しかし、ほどなくしてナルセのクーデター計画がバレ始めていることを悟り、スパイの存在を確信するに至る。その目が、サガラにも向けられるようになる。

計画は着実に進み、港から都心までの距離が極めて近い東京に一個旅団のフル装備を匿ったコンテナを積み下ろし、税関を通すまでもなく軍事行動を開始し、都内を一気に制圧することでクーデターを成功させようと目論む。

サガラは諜報仲間であるイギリスのスパイから、ヤミ資金が成瀬産業に流れていることを知り、実行まで日が無いことを理解する。

内閣官房長官はこの報告に動顚し、いよいよ具体的な発令を下すときが迫っていることを知らされる。

この巨大なスケールの骨子を持つ一方で、諜報活動の現場でのサガラの身のこなし方1つ1つの描写が非常に凝っていて、スパイの仕事術にもうならされる。

重要な面会の場所は開口が非常に狭い要塞や、警察署が隣にあるホテルなど、暴発が極めて起こりにくい場所に限定されていたり、サガラに支持をする上官は一般市民の成りをした伝言役をその都度雇い、間接的にメッセージを伝えたりする。

サガラはこうした大枠のあらすじと、諜報活動の現場の機微が双方とも作りこまれているため、読み進めている最中に緊張感が解けることがない。

とにかく、本当に面白い!

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