見出し画像

ロンドン治験体験記🇬🇧

一昔前までは、お金のないバックパッカーがわざわざ物価の高いイギリスに行くと言うと、真っ先に治験が思いつくくらい、世界一周旅行者が旅の資金を補充する手段としてロンドン治験は知名度が高かったそう。

しかし僕の知り合いの旅行者で実際に治験に参加した人はいなかったので、最近ではそんなに有名ではないのかもしれません。

そんなロンドン治験を経験してきた僕がその様子をまとめてみました。

先に言っておきますが、治験中は写真撮影が禁止だったため写真が1枚もありません。文章ばかりでちょっと想像がしにくい部分もあるかもしれませんがお許しください。🙏

あと、ちょいちょい愚痴を挟みます。

ロンドン治験とは


そもそも治験とは、試作中の薬を世の中に出す為の最終段階として、人間に投与して副作用などを確認することです。要するに人体実験です。

治験に至るまでにすでに数々の実験・検査をパスしてきているので、実際に人間に投与しても絶対大丈夫となってから治験を行うはずですが、一応参加者にはそれ相応のリスクもあるということは認識してなければいけないと思います。

薬の作用は人種や生活習慣によっても変わってくるはずです。なので我々はアジア人枠もしくは日本人枠という枠組みで治験に採用されます。

一般的に欧米人やその他の人種で治験を行ったのち、最後に日本人で治験を行うという話を聞いたことがあるので、そういった意味では日本人はリスクが低いんじゃないかと思います。間違ってたらごめんなさい。

もちろんイギリス以外でもたくさんの国で治験は行われていますが、中でもロンドン治験が日本人から人気な理由は、①報酬が高いから②イギリスがシェンゲン協定外だから③日本人枠の案件が頻繁にあるから、の3つかなと思います。

入所までの流れ


ロンドン治験に参加してから入所するまでの大まかな流れを説明します。

①ボランティア登録


治験会社のHPからボランティア登録をすると、新しい案件が入るとメールで知らせてくれます。

僕が参加した治験はリッチモンドファーマシーという日本人御用達の治験会社です。もう1つ有名な会社があったはずなんですが名前忘れました。
こちらのHPからボランティア登録できます。

②治験に応募


HPで募集中の案件を探す、もしくは新規案件のメールが届くのを待って、日程・報酬など自分に合った案件があれば応募します。

【僕が参加した例】
渡英

入所前1週間ロンドンステイ(その間に事前検診)

3週間入所

退所後10日間ロンドンステイ(その間に事後検診)

帰国

応募する際に以下の10問ほどの質問に答えるようになっています。

  • タバコは吸いませんか?

  • BMIはこの範囲内ですか?

  • アレルギーはありませんか?

  • 年齢は?

  • 両親両祖父母全員日本人ですか?

など

ここで1つでも参加条件に合わない回答をすると、その治験には参加できませんが、正直に答えないとこの後の事前検診でバレます。

③事前検診の予約&渡英


案件に応募して数日後に事前検診の予約&渡英のための航空券を探してスクショを送ってくださいとのメールが届きます。航空券は日本からでなくてもOKでしたので、長期旅行者でも大丈夫です。

航空券の承認が得られたら、それを購入してくださいとメールが来ますので購入します。その後事前検診の日時を決めて予約し、ホテルの手配などをします。

そこまで完了すると、以下のような注意事項が書かれたメールが届くので、それらを守ってしばらく生活します。

  • ○○日前から柑橘類の食べ物禁止

  • 3ヶ月前から喫煙禁止

  • 48時間前からカフェイン禁止

  • 激しい運動禁止

  • 事前検診当日は絶食不要

特に食べ物の制約が多かったです。

応募の際の質問に正直に答えたり、注意事項をきちんと守ったりしていれば、結果的に治験に参加しなかったとしても、航空券・ホテル代は出してくれます

事前検診の日程はわりとすぐに埋まって、応募締め切りになりましたとメールが来ていたので、そこそこの数の日本人が治験に応募してるんだと思います。予約が間に合わなければもちろん渡英はできません。

ちなみにメールでのやり取りはすべて日本語です。

④事前検診


渡英して3日後くらいに、治験会社に赴いて入所前の検査をします。血液検査・尿検査・心電図などを行った後、日本人の医者から投薬する薬のリスク説明があり、誓約書にサインして全部で3時間くらいで終了しました。全部日本語なので安心です。

特に細かく何度も聞かれたのがアレルギーについてと、定期的に性行為をする相手がいるのかについてでした。治験参加中はもちろん、退所してから数ヶ月間は必ず避妊をしてくれと言われました。

案件にもよりますが、その後は持ち運び用心電図を身体に取り付けて家に帰り、そこから24時間心電図を測りました。なのでその日はお風呂に入れませんでした。機械は翌日返却に行きました。

聞いた話によれば、事前検診には治験参加予定人数の3倍くらいの人が呼ばれているそうです。なので検査結果次第で健康な人でも普通に落ちます。落ちたら即帰国ですが、これも規約を守っていれば航空券代などは出してくれます。

結果が出るまで数日かかるので、その間はイギリス国内を自由に観光したりできます。

⑤入所


検査結果が良好であれば、1週間ほどでメールが届き入所となります。その案内に指定のシャンプー&歯磨き粉を準備してくださいと書いてあったので前日までに購入します。

初日はまず施設の案内や色々な説明がありベッドが割り振られます。その後荷物チェックがあり、カメラ・食品・薬・指定外のシャンプー&歯磨き粉などは没収されて最終日まで保管されます。

またTシャツ、制汗剤、耳栓、アイマスクなどが入った入所セットを貰えます。

翌日は事前検査で行ったのと同じような検査を再度行います。

実は入所案内があれば参加確定というわけではありません。僕が参加した治験の投薬人数(実際に治験に参加する人の数)は8人ですが、入所に呼ばれたのは12人でした。入所翌日の検査で最終的に投薬する人を選びます。ここで選ばれなければ帰国することになります。

12人中4人が落ちるわけですが、うち2人は検査結果で落ちて即帰宅、もう2人は補欠要員というかたちでもう1泊した後帰宅してました。このへんはたぶん運の要素もあるんじゃないかと思います。日頃の行いですね。

ちなみに即帰宅した人も補欠の人も、入所手当をもらえます。確か1日150£だったと思います。

施設内での生活


晴れて選ばれし投薬メンバーになることができたら、ここから長い治験生活が始まります。治験プレーヤー達がどんな生活をしてるかがいちばん気になるところじゃないでしょうか。

治験中は何もない暇な日と薬を飲んで丸一日検査する忙しい日とに大きく分かれます。

何もない日

何もない日と言っても、朝昼晩のご飯の時間は分単位で徹底管理されてるので、その時間になれば必ずご飯を食べます。あとは朝晩に1回ずつ採血があるだけで、それ以外は自由です。ベッドでゴロゴロしたり、映画見たり、PCで作業したり、トランプやゲームをしたりなど、有り余る時間を各々工夫しながら潰します。オンライン授業を受けてる学生もいました。

普段生活しているベッドスペースの隣に談話室があり、そこでTVをみることもできます。インターネットはそこそこ速いです。

案件によって施設外に出て散歩したりする時間があるそうなんですが、僕が参加した案件ににはありませんでした。慢性的に運動不足なのでとんでもなく便秘になります。また、日光を浴びる時間も少ないのでセロトニン不足に陥ります。

丸一日検査の日

丸一日検査がある日は地獄です。薬を飲んで朝5時から夜中1時まで、1時間毎に採血・心電図・血圧測定を行います。トイレに行く時間や歯を磨く時間もろくにありません。

さらに地獄なのが心電図がある日は電子機器を使えないということ。動いたりしても怒られるのでただベッドに真っ直ぐ横になり天井を見つめます。この状態が早朝から深夜までです。気が狂いそうになります。

3週間の入所で丸一日検査の日が5日くらい、暇な日が10日くらい、残りはその中間くらいの日という感じでした。

食事

食事は朝昼晩すべて日本食です。

このあたりは案件によって様々だと思いますが、献立はカレーライス、焼き魚、豚キムチ、エビチリ、チキンカツなどでした。日によっては晩御飯の後におやつのどら焼きが出ました。どれも普通に美味しいですが質素です。隣の部屋の外国人治験プレーヤー達にはフルーツが出されていたので羨ましかったです。

出された食事は全部食べないといけません。僕はエビが大嫌いなので、エビチリの日は最悪でした。

また食事は最初の一口と最後の一口が何時何分みたいな感じで、すべて1分単位で徹底管理されてます。朝8時12分になったらスタッフが来て「はい、一口目食べてくださいどうぞ!」みたいな感じで言われます。早く食べ終わりそうでも最後の一口だけ残しておかないといけません。20分後に再度スタッフが「最後の一口どうぞ!」と言いにきます。もう慣れましたが最初はこれがなかなかストレスフルでした。ちなみにどら焼きも同様です。おやつくらい好きに食べさせてほしいです。

トイレ

トイレも自由ではありません。これも案件によると思いますが、入所中のすべての尿を提出しないといけなかったので、トイレに行く際は必ずスタッフに声をかける必要があります。トイレは15分以内というルールがあるため、朝長く大便をきばる僕にとっては地獄です。シャワーは毎日いつでも自由に浴びられます。洗濯は週に1度です。

施設内には日本人スタッフが24時間交代で常に1人はいます。なので英語が話せなくても通訳してくれます。半分以上くらいはイギリス人でした。イギリス人スタッフは仕事が雑な人もいます。

退所後


最終日に許可が出れば晴れて退所となり、3週間ぶりに外出できます。一旦ホテルに移り、退所3日後にその後の体調の変化がないか調べるために事後検診が行われます。ここで何も異常がなければ数日後にイギリス出国の案内がメールで来ると思いますので、あとは航空券を手配して帰国するだけです。

ちなみに私はこの後も旅を継続するつもりで、イギリスからインドに飛ぶつもりなのですが、イギリス→インドの航空券代は出してくれないとのことでした。あくまで帰国便を補償するとのことでしたので、インド→日本の航空券は出してくれるそうです。

報酬


僕が参加した治験の報酬は4600£(投稿時点で約82万円)+往復航空券・交通費+宿泊費です。報酬はかなり良いと思います。経費申請にはクレジットカードの明細か領収書があれば、報酬の振り込みと合わせて実費補填してくれます。

ちなみに治験は就業ではなく有償ボランティアという扱いなので、ビザ等の心配は要りません。

振込先は日本の銀行でOKです。ポンド受け取りでも日本円受け取りでも大丈夫です。

まとめ&感想


最後にまとめです。

バックパッカーから敬遠されがちなイギリスですが、治験に参加すれば渡航費と宿泊費が出て、さらにお金も稼げるので、時間を持て余した旅人にとってはかなり良い条件なんじゃないかなと思います。

もし検査に引っかかって治験に参加できなかったとしても、タダでイギリス旅行を楽しめるので、最悪それでもいいやと思える人は応募してみる価値はあると思います。

今回僕は話のタネに一度参加してみるのはありかなと思い応募しましたが、個人的にはもう二度と参加することはないと思います。やはり長期間自由が制限されるのは苦しかったです。

ちなみに僕は薬による副作用らしきものは全くありませんでした。

ということでロンドン治験体験記は以上になります。🙏

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?