Mr.Children、30周年ツアー『半世紀へのエントランス』ライブレポート、50周年への扉はいままさに開かれた
2022年5月10日にデビュー30周年を迎えたMr.Childrenが「半世紀へのエントランス」というタイトルを掲げ、ドームツアー、スタジアムツアーの開催を発表した。ツアーは佳境を迎え、2022年6月19日に「半世紀へのエントランス」の千秋楽が、ヤンマースタジアム長居で開催された。
ライブ会場の最寄駅である地下鉄長居駅は、Mr.Childrenファンで溢れていた。ふと周りを見渡すと、30周年のTシャツを着た人や、デビュー25周年に開催されたThanksgiving25のTシャツを着た人、もっと昔のライブTシャツを着た人がたくさんいた。
小さな子どもが「Mr.Childrenってどんな人?」と、お母さんに聞いていた。お母さんは「それを知るために今日はここに来たのよ」と返す。あなたの目で感じた彼らがMr.Childrenの印象でいいと言われているみたいな感覚だった。
開場は17時。晴れ間が差していた会場に「優しい歌」のストリングスバージョンが流れた瞬間に、観客から大きな拍手が起こった。そして、照明が落ちて、「半世紀へのエントランス」を題材にしたSEが流れた。過去のシングルやアルバムがスクリーンに映し出され、いままさに30周年を祝うライブが始まろとしている。
サポートメンバーSUNNYを含む5人が会場に登場。1曲目は「終わりなき旅」である。僕たちの旅はまだ終わらない。SEで流れた扉の向こうには、終わりなき旅が続いていると1曲目で会場を大いに沸かせた。曲が大サビに入る前に桜井が「どんな旅にも終わりはきっとある。そう思っています。だからこそ、いまある情熱のすべてを、エネルギーのすべてを、音に変えて、声に変えて、人生最高のライブをお届けしたいと思います。6月19日ヤンマースタジアム長居、どうぞ最後までよろしく。僕らがMr.Childrenです」と観客に向けて胸の内を語る。桜井のMCはオープニングではなく、数曲演奏してから聴けるものだと思っていた。まさか桜井のMCがこんなにも早く聴けるとは思っていなかったため、彼らの30周年にかける熱い思いを感じた。そして、4度の「終わりなき旅」というフレーズを熱唱して、1曲目が終わる。
「終わりなき旅」で、まだ終わらないと誓いを立てたあとの「名もなき詩」だ。正直2曲でお腹がいっぱいだった。ちょっとぐらいの汚れ物なら全部食べてやると、彼らの器の大きさを感じた。続いて、もはやライブの定番曲になった「海にて、心は裸になりたがる」へ。2番大サビに桜井が中川にマイクを向け、中川が会場に響き渡る咆哮を飛ばした瞬間に、開場は大きな拍手でいっぱいになった。
次に、「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」「innocent world」と、彼らの代表曲の演奏が続く。最初からアクセル全開のメンバーにすこし戸惑いを感じていたが、桜井のリズミカルなダンスを見ていると、不安は一気に吹き飛んだ。ここで桜井のMCが入る。「ずっと雨予報でしたが。なんですかこの天気は!」とお茶目な桜井が天を見上げる。そこから「彩り」の演奏が始まった。桜井がただいまと言い、観客がおかえりのパートで天を指差す。大声で歌えていたならばとMr.Childrenと僕たち観客も思っていたにちがいない。「口笛」の演奏が始まったときに空を見上げると、陽が傾きかけている。夕に包まれたなかでの「口笛」は、不揃いの影が並ぶを見事に連想させた。
その後、桜井、田原、SUNNYの3人が花道を通り、サブステージに移動した。桜井が「いまから30年以上前からある曲をやります。みんな疲れたでしょ。疲れたら座って聴いてくださいね。僕は座って歌うんですけども」と言い、ファンのなかで隠れた名曲と言われている「車の中でかくれてキスをしよう」を演奏した。完全に泣いた。まさか「車の中でかくれてキスをしよう」を聴けるとは思っていなかったのだ。続けて「Sign」を演奏し、桜井が鈴木と中川をサブステージに呼んだ。ふざける鈴木に戸惑う中川。鈴木がふざけるのはライブの醍醐味である。メンバーが全員揃って、戦争や犯罪を反対し、平和を願うための「タガタメ」の演奏が始まった。スクリーンに映し出された世界中の人々。「誰が為、戦って」と腹の底から叫ぶ桜井の姿に、強い意志を感じた。
次に20作目のオリジナルアルバム「SOUNDTRACKS」の収録曲である「Documentary film」が演奏され、「DANCING SHOES」の恐怖映像に観客が戦慄する。そして、ステージから炎が噴き出た直後に、スクリーンが赤に染まり「LOVEはじめました」の文言が映し出された。なんなの。もう。絶妙なアレンジを加える桜井。「坊主が屏風に上手に絵を描くと言うだろう、なら僕は愛してる人に愛してると捻りのない歌を歌おう」と、歌ったときの桜井の顔が忘れられない。ここからロックナンバーで会場が盛り上がる。まさかの「フェイク」の演奏に、会場のボルテージが一気に上がった感覚がした。そして、「ニシエヒガシエ」の演奏で、会場は大きな拍手に包まれた。
ライブの定番となった「Worlds end」で「永遠が聞いて呆れる」と言ったのちの新曲「永遠」の演奏だ。「もう会えなくても君は僕の中の永遠」と、彼らは全力で「永遠」を肯定した。Mr.Childrenのセットリストは、反対と肯定など対をなす構成が多いような気がする。「others」ではスクリーンに街並みが映し出された。ライブ会場にいるのに、都会にいる感覚である。そこから「Tommrow never knows」の演奏が始まり、会場は一気に静寂に包まれた。かと思いきや「光の射す方へ」で熱を上げてくるものだから、感情の整理がまったく追いつかない。まだいけるだろと言わんばかりの「fanfare」。3サビで銀テープが発射され、追撃をかけると言わんばかりの「エソラ」に会場全体が沸いた。
演奏は1曲を残すのみ。メンバーが30周年の思いの丈を綴り、紹介はボーカル桜井のみになった。すると、田原が「たまには紹介させてください。ボーカル、ギター、そして、その他すべて、桜井和寿!」と紹介するサプライズだ。「え?あのケンちゃんがメンバー紹介?」と会場は大きな拍手に包まれた。桜井のMCが終わり、最後の楽曲「GIFT」の演奏が始まった。2番の「もうやめにしようか」の所で演奏を止め「僕は抱きしめる、君がくれたGIFTを、いつまでも胸の奥でほら光ってるんだよ、光り続けるんだよ」とアレンジを入れてみせた。演奏が終わり、メンバーが会場から去り、アンコールの拍手が会場に響き渡った。
メンバーが会場に現れ、桜井が「皆さんにとってあの曲聴きたいんだけどまだ聴けてないという曲もあると思います。次の曲がその曲になるといいなと思います」と言った。代表曲が多すぎるし、全然予想できないと思った瞬間に「HANABI」の演奏へ。「もう1回、もう1回」と桜井が叫び、観客が天に向かって指を差す。もう1回と言わずに永遠に聴いていたいと思った矢先に始まった「生きろ」。メンバーの力強い演奏に、桜井の「生きろ」が会場に響き渡り、ライブは千秋楽を迎えた。
彼らの旅はまだまだ終わらない。デビュー50周年への扉はいままさに開かれたばかりである。願わくば、永遠にMr.Childrenを追いかけていたい、と思わせてくれる30周年を祝う最高のライブだった。
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