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【IR分析】株式会社マネーフォワード 2022年11月期通期決算


ファイナンスのSaaS企業として有名な株式会社マネーフォワードの2022年11月期通期決算についてIRから分析していく。

・会社概要

CEO:辻 庸介
資本金:1,865百万円
従業員数:815 人
設立:2022年5月
決算月:11月

・MVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)

Money Forwardの「MVVC(ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャー)」のイメージ図:

(出典:共感から生まれる、ミッション・ビジョン・バリュー・カルチャーの浸透スパイラル。|keikokanai|note)

・サービス概要

【法人向け】
Money Foward Bissiness(下にイメージ図)
Money Foward Finance

【個人向け】
Money Foward Home

【金融機関向け】
Money Foward X

マネーフォワードはお金を管理するクラウドサービスを提供している。
ターゲットは個人から中小企業、金融機関と幅広い。

中小企業で利用できるサービスはマネーフォワードクラウドというバックオフィス業務システム。経理会計まわりの業務や、労務、原価管理まで一つのサービスでバックオフィスをすべて管理できるほどサービスが充実している。

個人で利用できるサービスはマネーフォワードMEという家計管理アプリ。
利用している口座やクレジットカードを連携することで、収入と支出を詳細に把握できる。

次の今期実績でも説明するが、マネーフォワードの強みは、マネーフォワードビジネスにおけるストック売上(ARR)だ。なのでこの中小企業向けサービスであるマネーフォワードビジネスに着眼して、ストック型のビジネスで成長を生むヒントを探っていきます。

・今期実績と成長要因

中小企業のストック売上を着実に増加させ、毎期売上増加させているマネーフォワードの2022年11月期通期決算から実績を見ていきます。
使用する資料はこちらです。


まず通期ハイライトで重要な指標に注目しましょう。
①売上高214.8億円(前期比+37%成長)
②Bissiness向けとメイン法人向けARRが114.4億円(前年同期比+55%成長)
③EBITDA△60.3億円

①売上高214.8億円(前期比+37%成長)SaaS ARR売上が163億円(前年同期比+45%成長)

図を見ると売上は毎期成長しており、特にBissinessドメインの成長率が著しく、売上の伸びをけん引しているのがわかります。

②Bissiness向けとメイン法人向けARRが114.4億円(前年同期比+55%成長)

マネーフォワードの最大の特徴はARRが毎期増加している。そしてBissinessドメイン(法人向け)のARR割合が高く、前年同期比から+55%成長を実現していること。ARRとは毎期確定している利益のことで、その割合が多いことから株式会社マネーフォワードはストック型のビジネスと言えます。

通常の商品を販売して売上収益を上げるフロー売上は景気や消費者動向に左右されやすいが、ストックビジネスは毎期確定した売上があるので、安定して売上が伸びる傾向にあります。
ですが継続的に収益を伸ばすためには、顧客数増加、売上単価をいかに上げるかが重要になります。

③EBITDA△60.3億円

今期は特にEBITDAのマイナスが目立つ。EBITDAとは税引前利益へ特別損益、支払利息、減価償却費を足して求める値のことで営業利益、経常利益と並んで経営においての重要指標です。

売上が安定して伸びているのにEBITDAがマイナスとなるか、それは広告宣伝費人件費への投資が原因です。
ただ次に説明する投資効果により、将来のための成長段階として必要な投資をしていると、プラスに捉えてよいでしょう。

広告宣伝費への投資の効果
マーケティングやTVCMへの投資により、調査では認知度が2020年度と比較すると2倍になっている。その効果もあって法人顧客数も2018年と比較して2倍に上昇している。

人件費への投資効果
プロダクト開発への投資により、なんと2021年以降に10個もプロダクトをリリースしている。これにより、クロスセルが生まれ、売上拡大につながった。1つの顧客がいくつものプロダクトを自由に組み合わせて利用できるようになり、中堅企業の業務改善へ貢献している。

前述したとおり、ストック型ビジネスではいかに顧客を増やすか、単価を上げるかがARRを継続して伸ばすために重要です。
売上=顧客数×1顧客あたりの単価
なので、広告宣伝費の投資により顧客数を増やし、人件費への投資によりクロスセル(単価UP)を生むことで、売り上げを確実に伸ばしています。

・今後の期待

・連結会計リリースによる大企業のシェア獲得
いままではバックオフィス業務にコストをかけられない中小企業がターゲットでしたが、連結会計をリリースしたことにより、グループ法人のような大企業も顧客に見込めるようになりました。今後もサービスの拡大により、バックオフィス業務改善を加速させ、売上増加に期待できるでしょう。

・会計ソフトの時代変化とシェア獲得率

マネーフォワードと中小企業の間にはいる重要人物として会計事務所があります。中小企業のほとんどが適正な税務申告をするために会計事務所と契約しており、その会計事務所と密接な関係を築いている点も今後の成長で重要になるでしょう。
会計業界ではクラウドシステムの導入が流行となっており、導入率も毎年上昇しています。マネーフォワードにとって追い風の中、会計事務所で使用している会計ソフトのシェアは現在2位という状況です。
今後もこのクラウド会計の流行が加速することを踏まえると、今後の成長に期待が持てます。

・さいごに

辻社長は2024年度にEBITDAの黒字化を宣言しています。現在は売上を確実に伸ばすための成長戦略として投資活動が活発なためEBITDAがマイナスですが、ストック売上がさらに成長すれば自然と利益が残る財務体質になる可能性は十分にあります。
今回は株式会社マネーフォワードの特徴的なビジネスモデルであるストック売上による成長戦略について分析しました。

今後も皆様の役に立つ情報を発信していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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