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政治、選挙関連の2エントリ(『現代ビジネス』『BUSINESS INSIDER』)著者解題

先だって2本の政治、選挙関連の記事、ロングインタビューが公開されました。自分のサイトではないので正確なpvを知るよしもないけれど、ソーシャルメディアのシェアの状況を踏まえると、どちらもそこそこ読まれている印象です。以下では、2つのエントリの著者解題というか補足を試みてみたいと思います。


ちなみに下のエントリは、「2019年、世界と日本の経済はどうなる?株価は?注目IPOは?消費税は?厳選5本」に選ばれています

前者は最近のぼくのわりと中心的な関心事項です。記事中でも言及しているように、ぼくは著書や論文のなかでイメージや印象、感情をめぐって、なかでも好印象や高感度を高めるような政治のアプローチを「イメージ政治」と呼んできました(もう少しだけ詳しくいうなら、論理的なものや理性的なものよりも、感情や印象、イメージによって政治が動き、また政治も積極的にそれらに対する介入を試み、動員や投票につなげようとする状態のことを指しています)。

instagramという非テキストを中心とするコミュニケーションで成り立つ非テキスト系SNSの場合、これまでの文字情報を中心としたSNSやメールでのコミュニケーションと大きく異なり、そもそも標準的なコミュニケーションそれ自体がイメージになってしまっていて、そのため、イメージ政治云々などと言い出すまでもなく、政治や行政がそれを使いさえすれば、静止画や動画、つまるところ半ば必然的に、そして好むと好まざるとイメージを中心としたコミュニケーションを行っていることになってしまう、ということです。

instagramを使ったことがある人ならすぐに気がつくように、instagramでは写真の加工がとても容易で、これもまた標準的なコミュニケーションの様式となっています。写真や動画を用いたコミュニケーションはただでさえ、理性中心のコミュニケーションというよりはエモーショナルかつ文脈が多義的なものになりがちです。通常のテキストでさえ、行間や背景、文脈が推察されますが、文字を用いない、イメージのSNSの場合、なおさらそれらが散漫なものになり、ビジュアルを積極的に調整できることによって「本当の姿」はとても見通しにくく、「今見ている対象」ではなく「本当の姿」があるのだということを想像するのが難しくなっています。

ただし、ここで、のみならず、ぼくが言いたいのは、「だから、政治はinstagramを使うな」ということではありません。そこには政治が苦手とする若年世代や女性ユーザーが多く集まっています。活用の仕方次第では、うまく小難しく、敬遠されがちな政治や行政の世界と彼ら彼女らを近づけることができるかもしれないからです(ぼくがnoteを再開したのも、そして普段と異なった文体で書いているのも概ね似たような理由です。うまくいくのか、いっているのかは今のところよくわかりませんが)。

大抵の物事には正の面と負の面があります。政治や選挙の制度設計はITビジネスの発展よりも遥かにゆっくりとした時間が流れています。それらの世界で新しいサービスを用いるのであれば、目的に応じたその有用性と課題を把握したうえでなければならないでしょう。さて、そのうえでどうするか、考えてほしい、ということなのです。ここではその端緒を紹介するにとどめていますが、たとえば下記のpptなどではもう少し詳しい分析をしていますし、ほかにも別の分析を試みていますので、よかったら参考にしてみてください。

元リンク: https://www.slideshare.net/NishidaRyosuke/20181215instagram 

ところで、もうひとつの『BUSINESS INSIDER』のインタビューはどのような意図で収録されたものでしょうか。あちらは今年最初のインタビュー収録でした。1月7日11時に行われたのですが、今年最初の大学仕事で1限授業後で、まだあまり社会復帰していない状態で収録がなされたといわざるをえない髪型で写真に写ってしまっています。実はこの週には他にもいくつか収録していて同じような写真がほかにも世間に流出してしまいかねないことを少し気にしています。

それはさておき、こちらのエントリで試みたのは、もっとも合理的な観点を採用したうえで、今後の安倍政権のベストシナリオを推論するというものです。このインタビューのなかで、ぼくは消費増税再延期について、35%、その心は「あったとしてもまったく驚かない」と述べています。いつの間にか働き方改革一色になってしまいましたが、もともとは2018年の国会は憲法改正論議を大きく進める「憲法国会」と言われていました。安倍総理はこれまでに第1次内閣で国民投票法を成立させ(実質的な手続きを定めたこの法律なくしては事実上、憲法改正は不可能でした。言い方を変えるとそれ以前は護憲派が圧倒的に優勢だったことになる)、第2次内閣後も繰り返し改正に言及してきました。

すっかり鳴りを潜めたかたちですが、上げ潮を貴重としていたと思しき経済政策アベノミクスも消費増税とは本来相性の悪いものだったはずです。次の総理候補の顔ぶれがいまいちぱっとせず、統一地方選挙と参院選が12年に1度重なる「亥年選挙」は組織選挙、つまり与党に不利というのが石川真澄記者が提唱した定説とされています。

しかし現実には野党第一党の立憲民主党の地方組織はまだ全都道府県をカバーできておらず、候補者調整どころか野党共闘の具体像もなかなか見えてきません。

また一般に、任期末の総理大臣は政治的影響力と権力が弱体化するとも言われます。安倍総理は現状のルールでは自民党総裁を三期務めていて最後の期にあたります。前回衆院選は2017年。任期は4年。この間、衆議院は任期満了となることは滅多にありませんでした。野党の組織づくりや体制づくりも時間が経てば経つほど進むことでしょう。そのような前提に立つとき、このような局面の場合も、果たして亥年選挙は与党不利なのでしょうか。そのような疑問から出発して、先のインタビューに結実したわけなのです。

本質的に我々は予測屋ではありません。それでも予測めいたことを公にしてしまった以上、その行方はそれなりに気になるというのが人の性というものではないでしょうか。少し緊張しながら、政局を見ています。

これからこうして、時々、自分が書いた記事などの自己解説、つまり解題も書いていこうと思います。疑問点や気になるところがありましたら、ぜひ書き込んでみてください。

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