あの頃のラガーマンたちへ

ラグビー日本代表の世界ベスト8、本当におめでとうございます。
おそらく世間にとって、「突如」ラグビーというものが市民権を得た感があります。
それまではマイノリティだった何かが大きな結果を出したことで突如として脚光を浴びるのは、ジャンル問わずとても素敵なことです。

実は俺、「ラグビー」というスポーツにはかねてからちょっとした馴染みがありました。
というのも、高校2年生の時ににわかに同じ学年の同級生たちのとあるグループがある日突然「ラグビー同好会」を設立したのです。

彼らとは中学からそこそこ親しくしていました。
(俺は中高一貫の学校に通っていました。)

今でもそうなのかは分かりませんが、当時の学校社会の大半は「バスケ部」「サッカー部」「野球部」などのメジャースポーツ部に所属する部員くん達が絶大なるヒエラルキーの頂点に君臨し、それ以外の枠組みに属する者はどういう訳か明らかに彼らからオメーらみたいなもんはオレらの下やでって感じの雰囲気が決定づけられる、あの感じの中で俺も10代を過ごし、ヴィジュアル系やエヴァンゲリオンなどが好きな以上は「オタク」に分類される訳で、バンドはやりつつもそういう世界観の中で生きてきました。

そして、高校生に上がるにつれ、なんというかこう、当時サブカルチャーのひとつとして流行っていた【18歳未満はやっちゃいけない男の子がプレイするPCゲーム】に入れ込みはじめる一派が現れます。

当時の俺、なんか自分の中で「俺はオタクだが、18歳未満がやっちゃいけないゲームだけには手を出さない！」という謎のこだわりを持っていて、だんだん中学校の頃に仲良かった「オタク仲間」と疎遠になっていきました。
(もちろん、高校生になってますますバンドに熱中したことも大きいです)

やっぱこう、「オタク」の「オタク」たる風貌ってそのカルチャーを突き詰めれば突き詰めるほどどんどん出てくるもので、かつての仲間の一部はどんどん18歳未満がやっちゃいけないゲームをやってそうな感じをガンガン醸し出し始め、俺は俺で当時のバンド仲間たちとバンドまっしぐら！みたいな。
(その間も「バスケ部」「サッカー部」「野球部」の人々はおそらくドラマみたいな超絶青春まっしぐら！)

なのに、なのにですよ。ある日突然、その「ディープなオタク界隈」の人々が、校庭に登場する放課後がやってきます。
で、突如として彼らが始めたのが「ラグビー」でした。

その理由は全く謎です。確実に言えるのは、ラグビーは今以上に当時はマイナーなスポーツで、バンド部の部室から見た校庭でのラグビー同好会の「異分子感」はとてつもなかった。
(マジ彼らの校庭デビューを「バスケ部」「サッカー部」「野球部」の人々とか露骨に迷惑そうにしてたし。)

すごく印象に残っているのは、ラグビーにはニュージーランドなどの代表選手が試合前に行う「ハカ(haka)」と呼ばれる儀式があります。
(一番近いのは、俺的に日本の「ソーラン節」です。)

◆ハカ｜カ マテ｜ラグビーニュージーランド代表 ラグビーワールドカップ2019
https://www.youtube.com/watch?v=GCA3NTQ2A_s
このワイルドな踊りみたいなのを、「ディープなオタク連中」が昼休みには廊下で、放課後は校庭でやってる訳です。

もうね、圧巻。オタク連中、大体みんなデケーし。

なんだか俺の知らないところで何かが起きているって当時思ったのはすごく覚えています。

で、一年後、晴れて「ラグビー部」に昇格した彼らは一度だけ地区予選的なものに出場し、対戦校にボコボコに敗退して帰ってきました。

大会の翌日に登校してきた彼らの晴れ晴れとした表情もまた、今でも鮮明に覚えています。

「オタク」であるが故になんとなく学校社会で弱者扱いされ、きっと同好会～部として活動している中でも既存のスポーツ部に校庭の縄張り争いなどで疎まれたであろう彼らにとって、「公式戦」に出場したのは自分たちの活動がオフィシャルなものとして世界から認められた証。
試合の内容は俺は知らないけど、負けた翌日に見た彼らは間違いなく全力を出した後の男たちの面構えだったし、きっと納得のいくパフォーマンスが出来たのだと思う。

俺は俺で、世界にも自分自身にも誇れるものを探してバンドを子供ながらにやっていたつもりです。だからなんとなく分かるつもりです。

あの頃の若きラガーマンたち。
君らが何故かあの時始めたラグビーというまだまだ謎めいたスポーツが2019年の日本でめっちゃ大きなお祭りになりました。

それに流行りがどうこうっていうよりも、あの時それをしていたからといってまったくモテる感じもイケてる感じも纏えたりはしなかった「ラグビー」というスポーツを純粋にやりたくてはじめた君らはめっちゃカッコよかった。

多分、彼らの大半がパパになったりしてると思う。
「パパな、高校生の頃にラグビー部を作ったんだぞ」って娘さんとかに自慢していて欲しいな。

ちなみに当時はYouTubeとか無かったのになんで彼ら完璧にハカが踊れたんだろ。
やっぱオタクの情報収集力はいつの時代も最強です。

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