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Q.不快感の扱い方について、もっと知りたいです。

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A.前回の記事で不快感の扱い方について書こうと思ったのですが、長くなってしまったので割愛しました。早速コメント欄でもっと知りたいと言っていただいたので、今回はそのことを中心にお話しします。

【前回の記事はこちら】☟


▼「不快感」って何者?
さて、不快感の取り扱い方について知るためには、まずは不快感の正体を知る必要があります。一体全体不快感とは何者なんでしょう?

これについては学術的にも色々な解釈があるのですが、私は不快感について「自分の安全を守るために感じなければならない感情」と捉えています。

こう捉えるためには発達心理学のとある知識が必要です。それは「人には生まれつき、快感情と不快感情を仕分ける能力が備わっている」ということです。

この先、感覚と感情という二つの言葉が出てくるため、ここからは不快感のことを「不快感情」と表記します。

▼赤ちゃんの頃から「不快感情」は備わっている
生まれたての赤ちゃんを想像してみてください。今、あなたの前でその赤ちゃんはベビーベッドですやすやと眠りについています。その顔はとても穏やかで、見るからに心地よさそう。この赤ちゃんはいま「心地いい、快い」状態です。

すると、その赤ちゃんが顔をしかめ、泣き出してしまいました。慌てたあなたは赤ちゃんを抱き上げ、優しい声をかけながらゆらゆらと揺れてあげます。すると赤ちゃんはまたすやすやと眠りにつきました。

安心したあなたがベビーベッドに赤ちゃんを戻そうとすると、また赤ちゃんが泣き出しました。どうやらしばらくはあなたに抱っこされていたいみたいです。

この時の赤ちゃんの感情の動きを示すと
・ベビーベッドで寝ている。特に気分を悪くする刺激がない【快感情】
・何かがイヤ【不快感情】
・抱っこしてくれた。優しい声。ゆらゆらと心地よい揺らぎ【快感情】
・体が傾く(ベッドに置かれる!)【不快感情】
・抱っこが続く【快感情】
となります。

もちろん、赤ちゃんはこのように感情を言語化することはできませんが、不快を取り除こうとしてSOSを出します。そのための方法が「泣く」なのです。

赤ちゃんはこのとき、この不快感情や不快な刺激は、泣いて誰かに訴えたら解決するんだということを学びます。生まれたての赤ちゃんはこうして誰かを頼ることを学び、同時に不快感情や不快な刺激が消去可能なことを学びます。

▼「不快感情」を細分化する
赤ちゃんの不快感情のスイッチは、痛い、暑い、熱い、痒い、空腹、眠い、、、、などの感覚です(こうした「感覚」を呼び起こすものを「刺激」と言います)。これらの感覚は、「今の状態が続くと健康や命が危険にさらされる」ことを知らせる警報と言えます。これらの感覚が備わっていなければ、警報が鳴らないので、自分が危険に晒されていることに気づくことができません。

そして赤ちゃんは、自分を助けてくれた人が「お腹空いたね」「暑かったんだね」と語りかけてくれることで、その感覚の正体を知ります。色々な感覚の正体を知ることで、漠然とした不快感情が、感覚として言語化され、細分化されます。

漠然とした不快感情を細分化できたら、つぎはそれぞれの解決の仕方を学びます。お腹が空いてるなら食べればいい、暑かったら脱げばいい、といった具合です。こうして解決の仕方を学ぶことができたら、人に頼らなくても様々な不快刺激を取り除くことができ、結果的に不快な感覚が消え、不快感情も消すことができます。

とは言え、例に挙げた空腹や、暑い、のような簡単に解決できる感覚だけなら気が楽なのですが、年齢を重ねるにつれて人間関係が複雑になり、自意識と向き合うなど、感覚よりも自分の中で湧き起こる新たな感情を経験するようになります。この感情への対応が実に厄介です。

▼「新たな感情」との出会い、その時人はどう振る舞う?
こういった新たな感情を経験する頃になると、赤ちゃんだったあの子には自立心が芽生え、人に頼ってばかりではダメだ、という気持ちになっています。

そのため、その感情を経験したことがあり、解決方法を知っている大人に頼ることはせず、自分で解決を試みたり、経験の浅い同年齢の人とその感情を共有したりします。そうすることで、その感情をやり過ごそうとします。

こうなったときに立ち返りたいのが、不快感情の役割についての理解です。先ほど書いた通り不快感情とは「自分の安全を守るために備わっているもの」なので、不快感情が湧き立ったときに体は防衛モード、詳しく言うと「逃走or闘争のモード」に入ります。心拍は速くなり、筋肉に血流が回り、逃走と闘争の準備を整えます。

もし、あなたを不快にした原因(刺激)が目の前にいる誰かだった場合、あなたはその人に対して攻撃を仕掛けるか、その場から逃走するかの選択を迫られます。攻撃を選んだ場合は、社会性が働き暴力はダメだなと判定が降りるので言葉での攻撃になります。

言葉での攻撃と言っても、罵詈雑言を浴びせてしまうと自分にも非が出てしまうので、あまり過激じゃない言葉「なんでそんなことするの」「なんで〇〇してくれないの」等で攻撃します。そう言われた相手はあなたからの攻撃の意思を感じ取り、不快に感じ、あなたに攻撃を仕返します。これが喧嘩の段取りです。

立場が対等な相手との場合は喧嘩という決着があるので良いのですが、これが上司と部下、親と子といった立場や年齢が対等じゃない相手の場合は、攻撃された側が言い返すことも逃げ出すこともできず、心や体が傷ついて終わりです。

感情に翻弄された自分の攻撃のせいで誰かが傷ついてしまう。そのことが嬉しいと思う人はいないはずです。できることなら感情に翻弄されたくない、相手を攻撃したくないと思うのではないでしょうか。

そのためには、あなたが感じた漠然とした不快感情を言語化し細分化する必要があります。感情に翻弄され、攻撃のスイッチが入ってからその攻撃の衝動を抑えることは難しいです。攻撃のスイッチが入ってしまった段階で冷静ではないので、そこから自分を抑制するのは容易ではありません。

必要なのは攻撃の衝動が起こる手前で、漠然とした不快感情を言語化、細分化することなのです。

▼「不快感情」をやり過ごす方法
ここでおすすめなのが、不快な感情が起きたらどんな原因(刺激)だったとしても、決まった言葉で一旦言語化してしまうことです。これは経験上かなり使える技だと思っています。

私の場合、不快の感情という波がやってきたときにはとりあえず「また相手に期待しすぎてしまった」と思うようにしています。相手に期待を持ってしまった、だからこそ「してほしいことをしてくれないのがイヤ」という感情が湧き立ったんだな、と思うようにしています。

というか自分が誰かに不快な感情を抱くときってほぼこれな気がします。「私だったら〇〇するのになんで〇〇してくれないんだろう?」と、気持ちを言語化してしまえば、不快感情に飲まれ、攻撃のスイッチが入り、相手を攻撃してしまうこともありません。

あとはその〇〇にその都度、その状況を入れれば良いだけです。これをやると、相手の立場に立って状況を考えれられるので、怒りではなく、心配に気持ちがいきます。そうすると攻撃的な行動は出てきません。

「私だったらすぐLINEを返すのに、なんですぐLINEを返してくれないんだろう?もしかしたら忙しいのかな?」
「私だったら食事中楽しい話をするのに、なんで楽しい話をしてくれないんだろう?もしかしたら仕事で何かあったのかな?」

これは、不快の理由が他人ではなく、自分の場合も使えます
「普段ならこんなミスしないのに、なんでミスしてしまったんだろう?もしかしたら疲れてるのかな?」
みたいな具合です。

ここまでをセットにしてしまえば、不快感情が湧き立ったとしてももう怖くはありません。この技を武器に、一度で良いから湧き立った不快感情を言語化することに成功すれば、もう大丈夫。その次もそのまた次も不快感情を上手に扱うことができ、感情のままに相手を攻撃してしまうことは減るはずです。是非試してみていただきたいです。

質問への回答は以上です。
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