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「#電通案件」で感じた2つの違和感。

「100日後に死ぬワニ」で、電通が炎上してしまった件で

ワニさんの余韻に浸って翌朝を迎えたと思ったら、元職場の電通がツイッターで炎上していた。(正直なところ、ちょっとだけ嬉々として)追いかけてみたら、どうやら元同期が、その渦中にいる。直接連絡をとってみたけれど、炎上の方向と事実とは、違いました。

昼頃には、著者本人が釈明ライブに出演したそうで、電通案件は、事実と違うということで一旦収束に向かうわけですが、実際に電通で働いていた者としては、こういった「電通が世の中を操作している」みたいな風潮が出るたびに、2つの違和感を覚えています。

電通は、そもそも自分で動けない。

1つ目の違和感を語るのに、2011年3月11日、東日本大震災がおきた週末の出来事まで遡ります。当時、副社長がSNSで呼びかけ、月曜日の朝、社員有志が集まるということがありました。副社長がSNSで呼びかけるなんて、異例中の異例。

電通が、というか電通で働く僕たちが、いまできることって何だろう、みんなでできることから動こうじゃないか、と。

副社長も交えた、あの時の、あの熱い空気感は、今になっても忘れられません。社会人になっても、熱い想いが宿った先輩方がたくさんいるから、この会社って好きだ大好きだ、と叫びたくなる、そんな気持ちの高まりが、あの場の僕にはありました。今すぐにでも被災地にみんなで乗り込んで、この身体が、何かの役にたてばそれでいい....そのくらいの覚悟でした。

色々熱論を交わした結果、電通の社員として、動くことは叶いませんでした。汐留のお隣、ソフトバンクは孫社長の一声で、すぐに社員有志を集め、被災地に向かわせ、事態の確認と、対応できることを次々と進めていく。一方僕は、被災地にいくことができなかったんです。

なぜなら、電通はクライアントに依頼を受けてから、ソリューションを提供する会社だから。依頼を受けて(あるいは依頼がありそうなところを探して)、予算をお預かりして初めて動けるのが電通。そこから市場調査をし、最近の流行を追いかけながら、流行と流行を掛け合わせてアイデアにしていくのが基本業務姿勢です。

頼まれないと動けないという、あの時ぶち当たった現実に、割と衝撃を受けました。こんな事態に、そんなこと言ってていいのかよ!と。行かせろー!行かせろー!

結果、僕はソフトバンクさんに懇願して、ソフトバンクさんからの依頼で、という形をとっていただき、ソフトバンクさんと一緒に被災地復興支援に関わらせていただくことになりました。懐の大きいソフトバンクさんのご決断に、改めて心から感謝しています。

電通は、自分たちでは動けない。だから電通が世の中を操作しているというところには、若干誤解があるように感じています。電通が動かしているんじゃなくて、電通は依頼に応えて精一杯動いているというのが事実。そこに真実があるんだよなぁ、と思うのが、1つ目の違和感。

もちろん例外もあります。電通が動くことで、社会に新しい価値を生み出している事例が。それはまた別の時に、素晴らしい取組としてご紹介させてください。(電通Bチーム

ひとり、ひとりの声が、世界を動かす

もう1つの違和感は、結果、世界を本質的に動かせるのは、大きな組織でも、お金ではなくて、やっぱりひとりひとりの、本能的で、本質的な感情だということ。ワニが電通案件じゃなかった今、改めて、最初から読んでいる人たちの気持ちは本当だったということだし、ここまで話題になっていった流れは、オーガニックで自然なものだった。

今回の炎上も、筆者が込めたコンテンツへの想いに対して、本質的に心を動かされていたからこそ、裏切られたような感情が生まれたわけで、コンテンツそのものが、何にも代えがたい評価を得ていた証なんだと思います。

今の時代、何か大きな見えざるチカラで簡単に動かせるほど、個人はやわじゃない。一人一人の声は、出せば出しただけ、チカラになるし、そのチカラを信じて、みんなが言いたい声をあげていい時代。自分が好きなもの。自分が正しいと思うもの。これだと思う生き方を、発すること。それがスイミーのように大きな力となって、世の中は変わりうる。

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それでも負けずに、攻め続けて欲しい...!!

このご時世、どこがどう炎上するかわからない中で、昔の杵柄のようになってしまった電通の激しい噂あるあるは次々と現実から遠ざかり、今まで歩んだことがなかった「普通の会社」として道を(時に踏み外しながらも...)歩み始めています。

これによって守られる人が増えたのは歓迎すべき事実ではある一方で、これまで電通という会社が培ってきた会社への誇りとか「俺たちが新しきを生み出して行くのである」的な気概を、日々削がれていく感覚があったのも事実。そういうこともあって、僕は出る道を選びました。

これは電通だけでなく、世の中の風潮がどんどんそっちに向かうから、クライアント側も右に同じことがおきている。これって、仕方がない、ことなのかなぁ。

この風潮のなかで、クリエーティブはかなり限られた中で出さなきゃいけない。守りながらも、それでも「何か新しきを創り上げる」信念があって、生みの苦労を続けている。相当難しい采配を強いられている中でギリギリを攻めていく。

ギリギリ....アウトだったこのCMは、当時「これもだめかー!」と(自分の作業じゃないながら)悔しい気持ちになったのを覚えてます。ここを攻めた日清さんと、そしてプランナー、そして、出演した皆さんに、改めて尊敬するし、そういうの抜きにして、やっぱり面白い。ただ面白いんじゃなくて、考えさせられる。

「おりこうさんなんかじゃ、時代は変えられねぇよ!いまだ!ばかやろう!」という、たけしが伝えたかったメッセージ。今も刺さる。今こそ、刺さる、メッセージ。

折に触れて非難を受けることが多い電通ですが、新しきを作り、どこかで「やっぱり電通すげえ」と言われる仕事をしたい。そんな想いを持って働く先輩、同期、そして後輩たちが、たくさんいるのも、やっぱり電通です。

気に食わない作品があれば、ぜひみなさん一人一人が声をあげ、抗ってNOと言っていただきたいし、もし「最高だぜ」そんな作品があれば、それはぜひYES!と叫んでやってもらえると、きっと働いてるみんなも本望じゃないかなぁと思います。

これからも、世の中に新しき、素晴らしいコンテンツが生まれていくのを楽しみにして。。

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