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漫画『とめはねっ!』まとめ ~漢字編~

漫画『とめはねっ!』の書道に関する部分をまとめました(割愛あり)。

「漢字編」です。どうぞ!


1巻

■第4話
【漢字の基礎練習】
(1)『一』を半紙1枚に5つ、それを100枚書く
(2)『十』を書く
・(1)は筆遣い、「部品(パーツ)」の練習で、(2)は「字」の練習
・「部品」と「字」の違いは余白
・余白も字の一部
・余白が字のバランスを決める

■第5話
『一』が上手く書けない時
・書き初め用紙を横にして『一』を書く
・体全体を使って書くことがねらい

■第8話
書体の成り立ち
・篆書(てんしょ)がベース
→筆で書きやすい書体、隷書(れいしょ)が生まれる
→篆書、隷書を早く書くために、草書、行書が生まれる
→楷書は最後にできた

臨書(りんしょ)とは
・書の古典作品を模写すること

楷書の臨書で中国7世紀中頃の書(※)を手本にする理由
・この後ほぼ進化なしの完成形だから
※「初唐の三大家(しょとうのさんたいか)」
・欧陽詢(おうようじゅん)
・虞世南(ぐせいなん)
・褚遂良(ちょすいりょう)

【漢字の古典】
欧陽詢『九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)』
・全文を臨書(全臨(ぜんりん))すると千字以上


2巻

■第20話
【日本の書】
仙厓(せんがい)『○△□(まるさんかくしかく)』、『一円相画賛(いちえんそうがさん)』

■第23話
純羊毫筆(じゅんようごうひつ)
・最初は弾力性がないが、墨に含まれる膠(にかわ)を吸って弾力性がついていき、使うほどによくなる
・膠の入っていない液体墨を使うのなら宝のもちぐされ


3巻

■第25、26話
【漢字の古典】
褚遂良『雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)』

【漢字の基礎練習】
・半紙にできるかぎり太い横線を書く
→筆を寝かせると太く書けることを知る

(1)できるかぎり細い横線をなるべく速く書く
(2)半紙になるべく細い線で丸を6つ書く
・理想の姿勢(背筋が伸び、肘の位置が高く、肩の関節がよく動き、筆を立てて持つ)が身につく

■第26、27話
【漢字の基礎練習】
(1)筆を寝かせて紙に置く
(2)筆を徐々に立てていく
(3)ギリギリまで線を細くして上へ抜く
・二等辺三角形のような形にできたら合格
・「はね」や「はらい」のとき、手首を返したり勢いで書くのではなく、筆を紙から持ち上げる意識で書けるようになる

■第28話
【漢字の古典】
米芾(べいふつ)『蜀素帖(しょくそじょう)』

■第30話
臨書のコツ(精神面)
・最初から100%正確に写しとろうなどと思わず気楽に書く
・“書くために見る”のではなく、“見るために書く”
(古典を見ることが大切。漫然と見るよりも真似て書くことで、より多くの発見がある)

臨書のコツ(技術面)
(1)見本を見て一画めを書く
(2)筆を止め、紙から筆を上げずに見本を見る
(3)筆を離して二画めに向かう
★次の画の起筆位置を確認してから筆を上げるクセをつける

■第34話
【漢字の古典】
王羲之(おうぎし)
・中国の書家は皆、若い時に王羲之を学んでいる

■第36話
篆刻(てんこく)
・きちんとした作品には落款印(らっかんいん)が必要
・自分で作ってもよい(篆刻)

■第37話
篆書(てんしょ)
・印に使われる書体は篆書が多い
・篆書には、
甲骨文字、金文、石鼓文、小篆
などが含まれるが、これらは筆で書かれたのではなく骨や石に刻まれた
・よって印にしやすい
・「左」と「右」の筆順の違いは、篆書を見ると納得する


4巻

■第38、39話
篆刻 続き
・準備は除いて、彫るだけなら1時間ほどでできる
・紙に印を押した時に、
バックが赤で字が白いのが「白文(はくぶん)」で、
バックが白で字が赤いのが「朱文(しゅぶん)」
・初心者は白文がおすすめ
・石を彫る時は、ガリガリっと音がするくらい力強く彫るのがコツ

■第43話
【日本の書】
手島右卿(てしまゆうけい)『崩壊』

大字書(だいじしょ)とは
・1字か2字の少ない字数にしぼって、字の構造や線のありかたを徹底的に追求して書く

■第46話
【日本の書】
良寛(りょうかん)『題蛾眉山下橋杭』

■第47話
大字書の進め方
(1)書く字を決める
(2)書体を決める(すべての書体で書いてみる)
(3)構想をねる
・潤渇(じゅんかつ)(墨の量が多いところとかすれたところ)を考える
・淡墨(たんぼく)(うすめた墨)で書いてみる
・字の姿を変えてみる
(4)本番前、墨をつけずに書く動作をしてリハーサル
(5)本番


5巻

■第51話
【日本の書】商品ロゴ
町春草(まちしゅんそう)『ひよ子』

■第52話
漢字かな交じりの書
・戦前の書道展では、「漢字の部」、「かなの部」、「篆刻の部」しかなく、内容も漢詩、漢文、万葉集などの和歌が中心で一部の知識人しか鑑賞できないものだった
・戦後、一般の人にも親しみがもてる書を書こうとする人が現れた
・賛同者が増え、書道展に「近代詩文書の部」ができる

【日本の書】
金子鷗亭(かねこおうてい)『宮澤賢治詩 雨ニモマケズ』、『井上靖詩 交脚弥勒』

字の形をデフォルメしつつ、読める字を書くには
・ひらがなを漢字に近づける、または漢字をひらがなに近づける
・無秩序にデフォルメするとただの下手な字になりやすい
・古典の臨書でいろいろなスタイルを身につけているからこそできる

■第61話
固形墨
・墨は植物性の油脂を燃やした時に出る煤(すす)を集め、膠(にかわ)で固めて作る
・松煙墨(しょうえんぼく)
松の木を燃やした煤を使う
薄墨にすると青みがかったグレーになる
・油煙墨(ゆえんぼく)
菜種油などを燃やした煤を使う
薄墨にすると赤紫がかったグレーになる
・石油から抽出したカーボンブラックで作る安い墨もある

北魏時代の楷書
・「初唐の三大家」の時代が唐、その前が隋(ずい)、その前が南北朝時代
・その頃、北を支配していた北魏(ほくぎ)では石に刻んだ仏像がたくさん作られ、その橫に刻まれた説明文(「造像記(ぞうぞうき)」)にすぐれた書がある

【漢字の古典】
『牛橛造像記(ぎゅうけつぞうぞうき)』

■第62話
墨の擦り方
・「墨を擦るは病夫の如くし、筆を把(と)るは壮士(そうし)の如くす」
<意味> 墨は力を入れずゆっくり擦り、書く時は力を込めて勢いよく書く


8巻

■第101話
「前衛書(ぜんえいしょ)」とは
・書道のルールに縛られない書
・前衛書をやる人は古典の臨書も学んでいる

【日本の書】
森田子龍(もりたしりゅう)『龍』
宇野雪村(うのせっそん)『MYO(命)』
上田桑鳩(うえだそうきゅう)『愛』


10巻

■第126話
漢字の学び方
・唐の楷書が成立する前の書にこそ、漢字本来の美しさがある
・初唐楷書からさかのぼって学ぶのはオーソドックスな勉強法

■第127話
木簡(もっかん)
・細長い木に書かれている
・長文の時は紐で結んでつなぐ(「冊」の漢字はこの姿から)
・紙がなかったから木に書かれたが、紙ができてからも書かれた
・紙は貴重品だったので、雑多な記録などは木に書かれた
・間違ったら削って消せるのも便利

ちなみに、
・パピルスは現在「紙」と呼ばれているものとは製造方法が異なる、紙のようなもの
・パピルスは植物のパピルスからしか造れないが、紙はいろいろな植物から造ることができるので広まった

・木簡の書き方は、上から突いて、横へ押し出す
・とめ、はね、がない
・素早く、勢いよく書く
・楷書と比べてキレイでも上品でもないが、バランスはとれている
・バランスさえとれていれば、味のある面白い字になる


11巻

■第128、131話
木簡 続き
・水平に書く
・太く力強い線で書く
・筆を引くように動かすと線は穂先の太さしか出ないが、
筆を押し出すように動かすと穂先が開いて線が太くなる
・キレイな字とは違った美しさがあることを知り、書を自由にとらえよう
・木簡は上手に書いても意味がない
・形にとらわれて生命感が消えては本末転倒

■第136話
【漢字の古典】
『礼器碑(れいきひ)』
『曹全碑(そうぜんひ)』

隷書のいろいろ
・古隷(これい)
・草隷(そうれい)
・八分(はっぷん)
・木簡も隷書の一部
・『天発神讖碑(てんぱつしんしんひ)』
・金農(きんのう)の書
など

肉筆と石碑
・木簡は2000年も前のものがはっきり残っている(墨のすごさ)
・逆に石碑の『九成宮醴泉銘』などは拓本のとりすぎで字が消えかかっている

隷書の横画
・楷書に慣れているから右上がりになるのではなく、体の構造上そうなる
・半紙を正面に置いて自然に横画を書こうとすると、穂先は右肩を軸にして右上がりの弧を描く
・半紙を少し右にズラし、右肩の軸に横画の中心を合わせてやると、弧の軌道が右上がりではなく水平に近くなる


12巻

■第146、147話
『九成宮醴泉銘』のコツ
・一筆、一筆丁寧に、緊張感を持って線を引く

■第148、149話
【日本の書】日本酒ラベルのロゴ
日下部鳴鶴(くさかべめいかく)『月桂冠』
中村不折(なかむらふせつ)『日本盛』
日比野五鳳(ひびのごほう)『松竹梅』
金子鷗亭(かねこおうてい)『賀茂鶴』、『笙鼓(しょうこ)』
手島右卿(てしまゆうけい)『大吉祥土佐鶴』
上田桑鳩(うえだそうきゅう)『壺中春』

書風
・上記の書家たちは自分の書風をしっかり持っていた
・だから企業も大事な商品のロゴを託した
・書家たちの書風には、必ず根底に古典の裏づけがある
・だから何十年経っても鑑賞に堪えうる
・二十年後に陳腐に見えるような文字を日本酒のラベルには使えない
・今すぐ書風を確立しようとしてもムリ
・学んできた古典の書が、己の中に血肉となっていることが大事
・古典を土台にして新たな創作作品をつくる

■第150話
北魏楷書のコツ
・起筆や転折をポテッとさせず、シャープに書く
・そのためには筆のバネを使う(穂先がS字になるように押さえてからスッと引く)
・線に勢いが出ない理由の一つは、潤渇の「渇」(「かすれ」)がないこと

■第153話
【日本の書】
青山杉雨(あおやまさんう)『萬方鮮(ばんぼうせん)』


13巻

■第155話
【日本の書】
青山杉雨(あおやまさんう) 続き
『殷文鳥獣戯画(いんぶんちょうじゅうぎが) 』
『詩書継世(ししょけいせい)』
『艱難玉汝(かんなんなんじをたまにす)』
・作品ごとに作風を変え、「一作一面貌(いっさくいちめんぼう)」と評された


14巻

■第169話
卒意(そつい)の書
・作品にするつもりで書いていない書
・「卒意」の反対は「作意」

■第170話
明末の書家、傅山(ふざん)の言葉
・「拙(せつ)なるも巧(こう)なるなかれ。」
<意味> 多少、下手な書よりも、技術だけで心の込もっていない書のほうがいけない。
・「醜(しゅう)なるも媚(び)なるなかれ。」
<意味> 多少カッコ悪いよりも、媚びた書になるほうがいけない。
・「支離(しり)なるも軽滑(けいかつ)なるなかれ。」
<意味> 多少、バランスが悪くても、軽はずみに滑らかな書よりマシだ。
・「直率(ちょくそつ)なるも安排(あんばい)なるなかれ。」
<意味> ありのまま真っ直ぐに書け、あれこれ巧妙に考えすぎるな。


以上です!

「かな編」はこちらです。