音楽能力が高まる遺伝子疾患(Nature)
How a missing gene leads to super-sensitivity to sound というNatureに掲載された論文記事です。元論文はCellにあります。
ウイリアムズ症候群と呼ばれる遺伝的疾患によって音楽の能力が向上するのはなぜか?という話です。
ウィリアムズ症候群と呼ばれるまれな遺伝的疾患
ウイリアムズ症候群とは?
ウィリアムズ症候群(もしくはWilliams-Beuren症候群)の代表的な症状は、成長障害、精神運動発達の遅れ、視覚性認知障害、心血管疾患、高カルシウム血症などがあります。
ゲノムの特定の部分が欠落することで起こる
ウィリアムズ症候群は25~27の遺伝子(染色体7q11.23内)がまとまって失われることによって起こる遺伝性疾患です。
患者は音楽性に優れている
ウィリアムズ症候群は疾患というマイナス面だけではなく、豊かな音楽性などのプラス面も報告されています。
ウィリアムズ症候群によって音楽性が向上するメカニズムを明らかにするのが、今回の研究の目的です。
ゲノムの欠損が聴覚皮質を変化させ、音の聞きわけ能力を向上させる
今回の研究ではウィリアムズ症候群をマウスモデルで再現し、このマウスが生まれながらにして、音を細かく聞き分ける能力(=周波数弁別の鋭敏さ)を持ってることが分かりました。
音の処理における主要な部位である聴覚皮質の介在ニューロン(=2つの脳領域を接続する)が過興奮することによって、音の聞きわけ能力が向上していることも分かりました。
VIPR1と呼ばれるタンパク質のレベル低下が関係している
ウィリアムズ症候群の数ある遺伝子欠損のうち、Gtf2ird1遺伝子の欠損がVIPR1と呼ばれるタンパク質のレベルの低下につながります。そして、このVIPR1の産出量が低下すると、聴覚皮質の一部の神経細胞の機能が変化し、(音の)周波数のわずかな変化に対して敏感に反応するようになります。
ウィリアムズ症候群の患者から作ったヒトオルガノイド(=人工のミニチュア臓器)でも、VIPR1の低下が観察されています。
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