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Netflix-令嬢アンナの真実。英語で観る、もう一つの悲しいストーリー

帰国子女でもバイリンガルでもない私ですが、令嬢アンナの真実を観ていたら、気になる箇所があったので取り上げてみます。

ちなみに多少ネタバレの内容ですが、逆にこのドラマを観てないと、このnoteを読んでもよく意味が分からないかもしれません。

アンナの過去を知るために、ドイツの学校を通訳女性と訪れる。そこには、もう一つのストーリーが

David Giesbrecht/Netflix | TUDUM

ドイツにおけるロシア人。そして

Episode 8ではアンナが育ったドイツの学校(高校)を、ドイツの通訳の女性(大学生)と訪れます。歴史のある建物なのでアメリカ人のVivianは「こんな学校に通えたらよかった」と、カジュアルに悪気なく憧れを口にします。

その言葉に対して、ドイツの通訳の女性は非常に非常に微妙な間で息を吐き、なんとも言えない顔をします。Vivianが心配になり「何?(What?)」と聞きます。通訳の女性は答えます。

「私(の学校)もこうだった。でも嫌いだった。古いタイルや紋章、ラテン語の標語。これぞドイツよ。ドイツ人だけの」

「ドイツ人以外は歓迎されない。だから、ロシア出身で父親が貧しければどうなるか」

このように言います。アンナはロシア系なので、この言葉だけ読むと「アンナはロシア系だったので、ドイツの学校ではさぞかし苦労したことだろう」という話になります。

しかし、この「ロシア出身」という部分。英語では少し違う言い方をしています。

"If you're from Turkey or from Russia, especially if you dad is some low-life…"

「もしトルコやロシア出身」だったらと言っています。

通訳の女性は、突然トルコのことについて触れています。それもトルコが先で、次にアンナのロシア。

この通訳の女性は、なぜトルコについてあえて触れるのでしょうか?

そう、この通訳の女性はトルコ出身(もしくは二世)。そしてトルコ系としてドイツの学校に通っていたということを暗示しています。

思い返せば、このアンナの学校を訪れる前に、Vivianと通訳は、お肉屋さんで店主に、アンナのことを聞いていました。

すると、店主のオヤジからドイツ語で何やら嫌味を言われて、通訳の女性は苦笑して黙ってしまいます。苦笑しますが、通訳の彼女は翻訳はしません。

Vivianに「今 何て言ったの?」と聞かれて、初めて意味を伝えます。

「ロシア人とトルコ人は、ドイツと相いれないと」

英語では "Russians and Turks don't want to fit into real German society." なので「相いれない」ではなく「彼らは溶け込む気がない」という意思について論じてるので、店主は日本語訳よりも、より酷いことを言ってます。

いずれにしても、アンナはロシア系なので、ここでいきなりトルコ系の話が出てくるのは会話として不自然です。通訳のドイツ人女性が「実はトルコ系ではないのか」ということを示唆するやりとりになっています。

アンナの学校のシーンを日本語だけで観ていると「だから、ロシア出身で父親が貧しければどうなるか」というセリフなので、決定的なシーンで「トルコ」の言葉は出てこず、裏にあるストーリー(=通訳がトルコ系移民でアンナと同じような苦労をしていた)に気づきづらいかもしれません。

ドイツのスターサッカー選手、エジルの苦悩

W杯ロシア大会で韓国戦に敗れ、肩を落とすエジル=ロイター | Asahi Shimbun

ちなみに、ドイツには大勢のトルコ系ドイツ人が住んでいますが、その人数は250万から700万人まで様々な推計があり、実際に正確な数字は把握できていないようです。いずれにしても、ドイツの総人口が約8,300万人なので、人口比で考えると凄い数のトルコ系住民がいます。

当時ドイツ代表だった、トルコ系ドイツ人のサッカー選手のエジルが、トルコの大統領と写真を撮ったことで「ドイツに忠誠心があるのか?」と大問題になりました。結局、エジル選手はドイツ代表を引退してしまいます。

そのエジルが「試合に勝てば僕はドイツ人で、負ければ移民だ」という悲しい言葉を残しています。

令嬢アンナの真実のEpisode 8にも、そんな悲しいストーリーが、うっすらとですが背後に流れていた気がします。

(おまけ)英語タイトルで見る「令嬢アンナの真実」

Netflix

日本語では「令嬢アンナの真実」ですが、英語では‘Inventing Anna’です。inventingにはいわゆる発明するという意味以外に「でっち上げる」という意味もあります。

(実際には存在しない)Annaを創り上げる・でっち上げるというタイトルだと、日本語タイトルの「アンナの真実」とはだいぶ印象が変わります。

私はNativeではないので分かりませんが、ダブルミーニング的に「発明」みたいなポジティブな意味やポジティブな香りが、もしこの言葉から漂ってくるのだとすれば、日本語タイトルとは大きく異る印象になります(が、そこまでは分からない)。

写真はTudumより

#InventingAnna #令嬢アンナの真実 #英会話 #エジル #ロシア

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