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脳科学中心のScience記事メモ

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日々チェックしているScience記事メモのまとめ
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記事一覧

6/26 気になった記事(健康な人の能力を低下させるスタディドラック、「社会的孤立」は認知症リスクを高める)

スタディドラッグは健康な人々の問題解決能力を低下させる(The Economist)Study drugs make healthy people worse at problem-solving, not better というThe Economistの記事から。 アメリカではアデロール(デキストロアンフェタミン)やリタリン(メチルフェニデート)と言ったスタディドラックが日常的に用いられています。 今回Science Advances誌に発表された論文によると、アデロー

6/22 気になったScience記事

声の高さに影響を与える遺伝子Sequence variants affecting voice pitch in humans という論文から。 声の高さに影響を与える遺伝子ABCC9が存在し、これが心血管疾患リスクを増加させる可能性もあることが分かりました。 この遺伝子ABCC9が母音、すなわち言語の形成にも影響を及ぼしている可能性もあります。 死を目の当たりにしたハエは老化が進む?These Flies Age Faster After Witnessing Dea

ストレスがもたらすジャンクフード熱と、フラれたハエのやけ酒

Stressed Brains Amplify Comfort Food Cravings という論文ニュースから。 ストレスと高脂肪食によって脳が書き換えられ、甘いモノを過剰に欲するようになる通常、マウスが高脂肪食を摂取すると、脳の外側手綱核(lateral habenula)が活性化し、過食からマウスを守ります。 しかし、慢性的なストレスにさらされ、かつ高脂肪食を与えられ続けたマウスは、脳の外側手綱核が沈黙したままになってしまい、結果として報酬信号が活性化し快楽的な摂

6/2 気になったScienceニュース(鉄分不足と精神的健康、感情的共感と酒量)

鉄分不足は精神的健康に影響を与える鉄分不足になるとうつ病や不安障害など、精神的健康に影響を及ぼす可能性があります。その理由として、ヘモグロビンの一部である鉄は赤血球が酸素を運ぶのを助けるだけでなく、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった精神的健康に重要な役割を果たす神経伝達物質の生成に(補因子として)関与しているからです。ただし、過剰摂取も健康リスクを伴うので注意が必要です。 感情的共感でお酒が進む普段よりも高いレベルでの感情的な共感を経験した日は、お酒が進む可能

クレジットカードは脳の「報酬系」を活性化する

MITの Neural mechanisms of credit card spending という研究から。 この研究でクレジットカードを使用した購入において、報酬系を担う「線条体」が活性化することが分かりました。現金では報酬系は弱い反応しか示しませんでした。 また、今までクレジットカードは支出に伴う「痛み」を軽減するブレーキの解除の役割を果たすのか、それとも報酬系を通じてアクセルを踏むのかという議論がありました。 痛みに関係すると考えられる島皮質(insular c

睡眠をコントロールすることで、クリエイティビティを向上させる(MIT)

Dream to Create: Sleep Onset Boosts Creativityという論文ニュースからです。 創造性が高い状態になると昔から信じられていた「覚醒から睡眠」に移行する状態において、「木」に関する夢へと誘導するとクリエイティビティが向上するのかどうかを検証した、MITとハーバードの共同研究です。 5年以上前から睡眠×クリエイティビティに注目していたMITMITは睡眠を通じてクリエイティビティを向上させる研究に5年以上前から取り組んでいます。 Do

脳画像から心が読めるようになった

Semantic reconstruction of continuous language from non-invasive brain recordings というnature neuroscienceの掲載された論文の紹介です。 脳画像とタイトルで書きましたが、正確には脳機能画像(fMRI)です。 脳機能画像(fMRI)から文章を生成するモデルを構築3人の被験者に16時間に渡り物語の朗読を聞かせ、聞いている間の脳活動をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)により計測。

心臓のドキドキ自体が、脳に影響を与え心を不安にする

不安は心拍数を上昇させるが、その逆はあり得るのか?How an anxious heart talks to the brain というnatureの真面目な論文記事の簡単なご紹介。論文自体もnatureに掲載されています。 不安な感情が心拍数に影響を与えることはよく知られていますが、逆に心拍数の変化が脳に影響を与えるという話です。 光遺伝学で心拍数を上げてみた実験では「光遺伝学(オプトジェネティクス)」によって心拍数を制御。ChRmineと呼ばれる赤色に反応する光受容性

社会的地位の思いがけない喪失が脳に与える影響

How loss of social status affects the brain というnatureの論文ニュースから。 社会的地位の高いマウスが、突然その地位を失うとどうなるのか?人為的に、上位マウスが突然敗北する状況を作る 本研究を行ったチームは、チューブにいる2匹のマウスのどちが退くかがマウスの社会的地位を表すことを、2011年の研究で明らかにしました。 今回の研究では、上図のように上の地位にいるマウス(赤)と下位の地位にいるマウス(青)をチューブに入れ、下

脳への電気刺激で自律神経を調整しCOVID-19の症状を緩和

COVID-19患者に対して、非侵襲的な脳刺激法(tDCS)によって自律神経系を調整し、酸素飽和度を向上させる手法が開発されました。ブラジルのInstituto D'Or de Pesquisa e Ensinoの研究です。 刺激方法については、こちらのneumoの記事に詳細があります。 【龍成メモ】いつもnoteの表紙用にAIに絵を作ってもらっていますが、今回の記事用に作ってもらった絵がなかなかオシャレなんですが、ちょっと怖い感じの絵なので表紙に使うのはやめました。下に

聴覚障害は、認知機能低下、脳萎縮、タウ病態と関連する - The Lancet

Hearing impairment is associated with cognitive decline, brain atrophy and tau pathology というeBioMedicine(The Lancet系列)に掲載された論文から。 UK Biobankのデータ(165,550人)を始め、CABLE(Chinese Alzheimer's Biomarker and Lifestyle))やANDI(Alzheimer's Disease Neur

補聴器が難聴に伴う認知症リスクの上昇を抑制する可能性 - The Lancet

Hearing Aids May Protect Against a Higher Risk of Dementia Associated With Hearing Loss という論文ニュースから。元論文はThe Lancet Public Healthに掲載されています。 補聴器の使用が認知症リスクを低減する可能性UKバイオバンクの437,704人のデータを調査。研究参加者の募集時の平均年齢は56歳、平均追跡期間は12年です。 補聴器を使用していない難聴者は正常な聴力

見るだけで脳の老廃物を洗い流してアルツハイマー病予防になる可能性

脳の老廃物を洗い流すGlymphatic Systemリンパ液はカラダの老廃物を洗い流す重要な役割を担っていますが、このリンパ液に代わり、脳脊髄液が脳などの中枢神経の老廃物を洗い流しています。 この仕組をリンパ液の老廃物除去の仕組みであるlymphatic systemになぞらえて、Glymphatic Systemと呼びます(老廃物の排泄にGlia細胞の一種、アストロサイトが関わっていると考えられているため "Glymphatic"と名付けられました)。 視覚刺激により

大麻は高齢者にとって特別なリスクがある(WSJ)

Marijuana Has Special Risks for Older PeopleというWSJの記事から。 米国37州で大麻は合法現在米国では、37州で医療用大麻が合法化(Medical Marijuana Law = MML)されており、19州とワシントンDC(コロンビア特別区)でレクリエーション大麻も合法化されてます。 高齢者にとっての大麻使用のリスクとは?その大麻ですが、高齢者にとっては特別なリスクがあるようです。 医療的な理由で大麻を使用する高齢者 大麻