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一歩進んだ音楽理論 和声学編

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和声についてのあれこれをご紹介していきます。
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#和声学

和声の学び 一歩進んだ和声学

以前簡単な音楽理論を紹介していました。 今回から一歩進んで和声学を紹介していこうと思います。 ここでは古典的な和声を紹介していきましょう。 こちらも合わせてご覧いただくとより分かりやすくなると思います。 1 和声の学びにあたって音階(スケール)の起点となる音を主音(トニック)といいます。 ここでは主音をローマ数字のIで表します。 以降上に向かってII、III、・・・と表します。 最初は3和音(トライアド)を中心として扱います。 和音というのは基本的には3度の音の積み

V7の和音根音省略形体 一歩進んだ和声学 Part 11

今回取り扱うのがV7の和音の根音省略形体というものです。その名の通りV7の和音から根音を取り去ったものであり、実質VIIの和音と同じものになります。しかしここではV7の和音根音省略形体とVIIの和音は音は同じでも明確に違うものとして取り扱います。では、どのような機能を持っているのか見ていきましょう。 1 V7の和音根音省略形体V7の和音根音省略形体を表すときはV7に斜線を引きます。 V7の和音根音省略形体は3種類の低音位があります。 V7の和音根音省略形体第5音低音位(

V9の和音 一歩進んだ和声学 Part 12

今回はV9の和音について学んでいきます。 V9の和音はV7の和音に9度上の音が付加された和音です。ポピュラー音楽ではテンションコードと呼ばれるものの1つです。このV9の和音にも色々な制約があるみたいです。さっそく見ていきましょう。 1 V9の和音先程述べた通り、V9の和音はV7の和音に根音から9度上の音を付加したものです。これを9の和音といい、V9で表します。またV9の和音は「属9の和音」と呼ばれます。 和声学においては9の和音はV音の上だけに形成されるという見解をとって

D諸和音の総括 一歩進んだ和声学 Part 14

今回は今まで登場したD(ドミナント)諸和音のまとめです。加えて補足事項を少し紹介しようと思います。 1 D諸和音の総括ここで今まで出たVの和音をまとめます。 (i) Vの和音 Vの和音は基本形、第1転回形、第2転回形の三つの形を持ちます。 それぞれの後続和音は Vの和音→Iの和音、Iの和音第1転回形、VIの和音 Vの和音第1転回形→Iの和音 Vの和音第2転回形→Iの和音、Iの和音第1転回形 となります。 (ii) V7の和音 V7の和音は基本形、第1転回形、第2

準固有和音 一歩進んだ和声学 Part 18

今回は準固有和音についてを学びます。この準固有和音はある調において、他の調の和音を一時的に借りてくる借用和音というもののひとつです。今回では準固有和音とは何なのかに重点を置いて紹介していきます。早速見ていきましょう。 1 定位音度と変位音度各調における「音階各音度の固有の音高位置」を、それぞれの音度の定位といい、定位にある音度を定位音度といいます。 例えばハ長調(Cメジャー)の定位音度は以下のようになり、 ハ短調(Cマイナー)の定位音度は以下のようになります。 そして

準固有和音の配置と連結 一歩進んだ和声学 Part 19

今回は準固有和音を使った上3声の配置と連結についてを学びます。ここでは気を付けるべきこととして、対斜(たいしゃ)というものがでてきます。この対斜が準固有和音を使った連結において注意すべきものとなります。では どのようなものなのか、早速見ていきましょう。 1 準固有和音の配置準固有和音の配置については制限がありません。それぞれ密集、開離、Oct配分で配置します。 また〇V9の和音根音省略形は短調のV9の和音根音省略形と同じく、第9音の配置の制限はありません。 2 準固有和

V調のVの和音 一歩進んだ和声学 Part 20

今回はV調のVの和音というものを学んでいきます。これは借用和音の一種で、V調のVの和音を一時的に借りてくるものです。ポピュラー音楽ではセカンダリードミナントとして知られているものですが、和声学ではどのような機能を持っているのでしょうか。早速見ていきましょう。 1 各音度調ある調において、Iの和音以外の各音度3和音(定位音度からなる)をそれぞれIの和音としてもつ調を、その調の各音度調といいます。 ある調の各音度調に対して、その調自体をI調と呼びます。 それぞれを IIの3

vVの和音の第5音下方変位 一歩進んだ和声学 Part 23

今回はvVの和音第5音下方変位についてを学びます。文字通り、vVの和音の第5音を半音下げたものです。実はこれはポピュラー音楽で裏コードと呼ばれているものに該当するものです。裏コードはII♭7の和音のこと(キーがCメジャーならD♭7の和音)を指しますが、どうしてvVの和音第5音下方変位が裏コードになるのでしょうか。では早速見ていきましょう。 1 vVの和音第5音下方変位さて、vVの和音第5音下方変位は以下のように表します。 vVの和音第5音下方変位は使われる形が限られます。

IV7の和音 一歩進んだ和声学 Part 24

今回はIV7の和音についてを学んでいきます。では早速見ていきましょう。 1 IV7の和音IVの和音に第7音を付加するとIV7の和音が出来上がります。 この第7音も予備が必要です。 IV7の和音は4つの低音位(基本形、第1転回形、第2転回形、第3転回形)をもちます。 配置の制限はなく密集、または開離配分で配置します。 また基本形に限り第5音を省略し、根音を重複させることができます。 基本形の上3声はなるべくすべての構成音を含むのが良いです。 現段階で第3転回形を用いる

+IV7の和音、-IIの和音 一歩進んだ和声学 Part 25

今回は+IV7の和音と-IIの和音を学びます。 1 +IV7の和音短調において、上方変位されたVI音(↑VI)を第3音としたIVの和音を用いることがあります。これをドリアのIVといい、+IVと表記します。 +IVの和音は三和音、7の和音、7の和音根音省略形、9の和音、9の和音根音省略形がありますが、もっぱら使われるのは7の和音である+IV7の和音です。 +IV7の和音は4つの低音位をもちます。 基本形に限り、第5音を省略し根音を重複させることができます。 各低音位の

IV+6の和音 一歩進んだ和声学 Part 26

今回はIV+6の和音についてを学びます。これはポピュラー音楽では6thコードと呼ばれているものです。和声学においてはどのような機能を持っているのか、早速見ていきましょう。 1 付加6の和音3和音の基本形に、根音の6度上の音を付加させたものを付加6の和音といいます。+6をつけてI+6のように表記します。 ここでは特に使用されるIV+6の和音のみを取り扱います。 2 IV+6の和音IV+6の和音はIVの3和音に付加第6音を付加させたものです。 第6音は上行限定進行音で2度

近親転調 一歩進んだ和声学 Part 27

今回は転調を含んだ和声を学んでいきます。今までは調は転調せずに一つの調のみの和音の連結を行ってきました。ここでは和音の連結の際に転調が起こった際、どのようにすればよいのかを見ていきましょう。 1 和声学における近親転調最初に近親調に転調する連結を行います。 近親調はとある調において5度の上の調である属調、5度下の調である下属調、調号が同じで3度下の調である平行調、主音が同じである同主調の4つのことを指しますが、この和声学においてはある調の各音度調のことを近親調と呼びます。

近親転調を含むバス課題 一歩進んだ和声学 Part 28

今回は近親転調を含むバス課題を解いていこうと思います。今までのバス課題と変わりはありませんが、それに加えて転入和音、離脱和音を見極めることが必要です。では早速見ていきましょう。 1 例題1例題1はこちらです。 始まりはハ長調です。どの和音が離脱和音、転入和音になっているかを確かめましょう。 わかりましたか?3小節目からVI調であるイ短調に転調し、5小節目からII調であるニ短調に転調します。8小節目からは主調に戻り、そのままハ長調で終結します。 バス課題を行う際には終止

ソプラノ課題 一歩進んだ和声学 Part 29

今回はソプラノ課題を学習します。これはあらかじめメロディが与えられ、それを基にアルト、テノール、バスを配置します。これらは下3声と呼ばれます。基本的にバス課題と行うことはそれほど違いはありませんが、バス課題と違う注意点があるようです。それを確認しながらどのようにソプラノ課題を行うのかを見ていきましょう。 1 ソプラノ課題におけるバスの注意点ソプラノ課題において一番慎重になるべき部分がバスパートです。自然な旋律を生成できるように配慮する必要があります。それが以下の点です。